腰椎椎間板ヘルニアの真理  (1)症状編:(8)椎間板ヘルニアによる神経症状の進み方

.15 2018 腰椎椎間板ヘルニア comment(11) trackback(0)
(8)椎間板ヘルニアによる神経症状の進み方

椎間板ヘルニアのみならず、腰椎変性疾患が神経障害を起こす際には、神経根単独、馬尾単独、さらに「神経根+馬尾」混合の基本的に三つの型があります。各型によって神経症状の現れ方と、進み方は異なります。ヘルニアが好発するL4/5を例に説明します。

(a)神経根単独の症状の現れ方と進み方
 L4/5の脊柱管内で障害される神経根はL5神経根であり、ヘルニアのタイプとしては後外側型が該当します。ヘルニアによるL5神経根症状は痛みが強いのが特徴であり、始めは臀部、次いで大腿(外側・後部)、下腿(外側・後部)、そして足(背・底)の順に進むのが一般的です。

ヘルニア初期の炎症期には、腰痛や坐骨神経痛が目立ち、炎症消退期になると痛みは下腿外側部や足背・足底に強くなります。このように神経根障害による症状は、慢性期に至ると神経根の支配領域に強く表れます。言い換えるなら、神経根の支配領域に強い痛みやしびれ、さらに支配筋に筋力低下が起こっているなら、ある程度の神経根障害が起こっていると理解すべきです。だからといって直ぐに手術が必要というわけではありません。なぜなら、先にも説明したようにヘルニアは自然消失することが多いからです。神経根障害が軽い場合には、ヘルニアの消失によって最終的に神経症状は回復します。問題なのは、神経根障害の進み方が早い場合です。このような場合はヘルニアの消失を待つ余裕はないので、早期の手術が必要になります。ところが実際の臨床では、手術のタイミングを計る客観的な基準がないので混乱が生じています。ここでは外科医の経験的な判断が生きると言って良いでしょう

(b)馬尾症状の現れ方と進み方
脊柱管狭窄症では純粋な馬尾症候を呈する患者が多いですが、椎間板ヘルニアでは稀と言ってよいでしょう。なぜなら、馬尾症候を出すほどのヘルニアは通常かなり大きな、巨大ヘルニアと呼ばれるヘルニアであることが多く、馬尾のみならず神経根も同時に障害されるからです。つまり、椎間板ヘルニアでは「神経根+馬尾」症候を呈する患者が多いのです。馬尾症候は文字通り、脊柱管の硬膜内で馬尾がヘルニアによって圧迫・絞扼されて発現します。通常はヘルニア高位レベル以下の両側性の神経症候となり、中心部まで障害されると排尿・排便障害が発現します。例えばL4/5では、L5神経根と馬尾が両側で障害され、(a)のL5神経根症状と併せて、両側の臀部から大腿・下腿後部、足背足底に至るびりびりしたしびれ感が発現します。この場合のしびれは足底から上行し、会陰部に至りますが、巨大ヘルニアでは急速に殆ど同時に馬尾全体が障害されます。このタイプのヘルニアでは、自然治癒を待つ余裕がないので通常は早期手術、特に膀胱直腸障害が発現した場合には緊急手術としての対応が必要になります。

次回は、(9)椎間板へルニアによる自律神経症状とは?について説明します。

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腰椎椎間板ヘルニアの真理  (1)症状編: (6)激痛を起こす椎間板ヘルニアの特徴

.09 2018 腰椎椎間板ヘルニア comment(0) trackback(0)
(6)激痛を起こす椎間板ヘルニアの特徴
 
 ヘルニアによる痛みは腰であれ下肢であれ、本来痛みのない部位に起こる痛みですので、患者にとっては、それぞれの程度において辛いものになることは言うまでもありません。ここで言う激痛とは、VASで表すところの10か、それに近い痛みを指します。この場合、患者は通常、ベッド上で身動きできない痛みに顔を歪め苦しみます。排泄もベッド上で介助を受けて済まさざるを得なく、患者にとっては、まさに生き地獄です。この筆舌に尽くしがたい辛い、絶望的な痛みが毎日、終日続くわけですから、患者は精も根も尽き果てて、闘病への気力さえ失せてしまいます。「この痛みが治らないなら、死んだほうがましだ。」
患者の口をつく、この絶望的な呻き声を私は何度も耳にしてきました。椎間板ヘルニアが患者にもたらす激痛とは、このように悲惨なものであることを先ず知ってもらったうえで、次にこのような激痛を引き起こす椎間板ヘルニアの特徴について説明します。

 私の経験から、激痛を起こす代表格は外側型と超外側型(最外側型と言うこともあります)ヘルニアです。外側型とは椎間孔内に発生するヘルニアであり、超外側型とは椎間孔外に生じるヘルニアです。これらの部位のヘルニアがなぜ激痛を来すのか?
その理由は、外側型では椎間孔という狭い骨性構造の中で神経根がヘルニアによって強く圧迫されるためであり、また超外側型では椎間孔外に存在する後根神経節と呼ばれる痛みに非常に敏感な部位がヘルニアによって直接圧迫刺激されるためです。勿論、これらの部位のへルニアがすべて激痛というわけではありませんが、激痛になる可能性が高いと理解しておくことが重要です。さらに痛みが強い他、下肢のしびれや感覚障害、運動麻痺も進みやすいので注意が必要です。しかし、ここで一つ深刻な問題があります。それはこれら重症化しやすいヘルニアの診断が必ずしも適切に行われていない現状があることです。原因不明とされてしまう場合も少なくありません。これら外側型と超外側型を含むヘルニアの診断法については、後日、診断編で説明する予定です。

 一方、脊柱管内で中心型ヘルニアによって馬尾が障害される場合には、通常、神経根で見られるような激痛になることはなく、びりびり、ぴりぴりなどの不快な感覚障害になります。また、脊柱管内の後外側型ヘルニアで神経根が直接圧迫刺激される場合には、外側型で見られるような神経根性の激痛になります。特に神経根を直撃するヘルニアでは痛みが強いうえに下肢の感覚障害や麻痺も起こりやすいことを理解しておくことが必要です。

次回は(7)ヘルニアによる痛みの経時的な変化、について説明します。


腰椎椎間板ヘルニアの真理(1)症状編

.21 2017 腰椎椎間板ヘルニア comment(8) trackback(0)
「人生における腰椎変性疾患の始まりから終わりまで」の連載をいよいよ始めます。
シリーズ第1弾は「腰椎椎間板ヘルニアの真理」です。
ここでは「椎間板ヘルニアに関する事実」に基づいた説明に徹したいと思います。学術的に走らず、一般の方々が理解しやすい内容にしたいと考えています。

腰椎椎間板ヘルニアの真理  (1)症状編
1)椎間板ヘルニアの初期症状は?
  腰痛、特に急に発現する腰痛が特徴です。腰を前に屈めた時や、重い物を持ち上がるといった動作が
  きっかけになることが多く、「ぎっくり腰」と呼ばれる腰痛がこれにあたります。
2)腰痛の次に起こる症状は?
  椎間板ヘルニアはL4/5とL5/S1が好発部位であることから、それぞれL5神経根とS1神経根が圧迫刺激されて、坐骨神経痛と   呼ばれる臀部から太もも後面の痛みが起こります。このぎっくり腰を繰り返しながら、坐骨神経痛へと進むのが一般的です。
3)坐骨神経痛の次に起こる症状は?
  下腿や足の痛み・しびれです。さらに進むと足の筋力の低下が始まります。また、さらに足の冷感が強くなります。浮腫(むくみ)  が起こることもあります。
4)ヘルニアによる神経症状の程度には、主としてヘルニアの部位と大きさが関係します。更に脊柱管が生まれつき広いか、狭いかの先天的要因も関係します。例えば、内腔の狭い椎間孔内に入り込んだヘルニアは小さくても神経症状を強くするが、広い脊柱管内のヘルニアは大きくても神経症状は軽い傾向があります。
ー続くー

  

腰椎椎間板ヘルニアに固定術は不要です!

.16 2016 腰椎椎間板ヘルニア comment(26) trackback(0)
 最近、腰椎椎間板ヘルニアと診断され、腰椎固定術を医師から勧められていると相談に訪れる患者さんが散見されます。
これに対する私の答えは、「固定術は不要」です。医師から固定術を勧められるヘルニア患者の特徴は、中心型のヘルニア、ヘルニアの再発、狭窄症を伴っているヘルニアなどです。

 私は、ヘルニアにすべり症が関係していない限り固定術は不要と考え、MD法による神経除圧術を行ってきました。
この場合、神経除圧のためにヘルニアの摘出が可能であればそうしますし、ヘルニアの摘出が困難な場合には、ヘルニアの摘出は行わず、脊柱管拡大術を行い、神経を除圧します。

 ヘルニアを摘出せずとも、脊柱管を拡大し神経の除圧を行うと、症状はよく改善されるのです。
ヘルニアだから、それを摘出しなければならないという考え方には落とし穴があります。例えば、内視鏡でヘルニア摘出を試みたが、十分に摘出できないため、症状の改善が得られなかったという患者さんが少なくありません。このような手術失敗には、手術技術はもとより、手術の考え方に問題があるのです。

 このような場合には、脊柱管を拡大して、神経の除圧を図ることで、症状を改善するという手術の目的を達成できます。
侵襲の大きな固定術には合併症が起こることがあり、術後の腰痛に悩む患者さんも稀ではありません。さらに、固定隣接椎間に
ヘルニアや狭窄症、すべり症などが発生するリスクも無視できません。

 腰椎椎間板ヘルニアでは、固定術は避けるべきです。ただし、ヘルニアや狭窄症の再発例に対する神経除圧には高度の手術テクニックが必要です。医師選びを慎重になさることです。

腰部脊柱管狭窄症の手術後、間もなく椎間板ヘルニアを合併した70代女性

.11 2014 腰椎椎間板ヘルニア comment(7) trackback(0)
 県外から来られた70代の女性がMD手術を受けられました。
その方は、地元の大学病院で腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡手術を受けられました。
術後、間もなく右臀部から下肢に激痛が発現して、痛みのため歩行の困難な状態になりました。
保存治療による効果は得られず、再手術が検討されたようです。
その結果、腰椎固定術の適応となったようです。

 私のブログを読まれた家族の方が、痛みの真の原因を知りたいと思われたことと、固定術はできるだけ
避けたいとの思いから、私の外来受診を決められました。
症状からは、右L4とL5の神経根症状でした。
MRI画像検査では、L4/5で除圧術が行われていましたが、脊柱管の外側部から椎間孔内に椎間板ヘルニアの
所見を認めました。このヘルニアによるL4とL5神経根症と診断しました。
手術以外には症状の改善を期待することは不可能と判断されたため、再手術を行うことを決定しました。
私は、固定術ではなく、MD法によるヘルニア摘出術を行うことにしました。

 前回の手術部には瘢痕組織ができており、硬膜やL5神経根と強く癒着していました。その瘢痕組織を
下から押し上げるように椎間板ヘルニアが出ていました。このヘルニアは脊柱管の外側部では、L5神経根を圧迫し、
椎間孔内ではL4神経根を強く圧迫していました。ヘルニアのタイプは後外側型と外側型の混合型でした。
脱出したヘルニアを摘出して、L5とL4神経根を除圧し、さらに椎間板内の変性して脆くなった椎間板をできるだけ
摘出しました。手術時間は1時間15分、出血量は10mlでした。

術後は翌日から離床開始しましたが、術前の痛みはよく軽減し、歩行はしやすくなっていました。

 この患者さんは、先の病院では腰椎固定術が検討されていましたが、これは再手術例に対して一般的な手術方針であろうと思います。しかし、私はヘルニア摘出術を優先しました。もし、それで改善が得られない場合には、最終手段として腰椎固定術を考える場合もありますが、殆どの場合は再除圧術で改善され、固定術が必要になることは希といってよいでしょう。再発例でも、神経根除圧術で症状の改善を図れますので、脊椎外科医は的確な神経根除圧の技術を習得することが不可欠です。


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