脊椎外科医の立場から見て困った患者とは

.22 2012 腰椎椎間板ヘルニア comment(6) trackback(0)
 脊椎外科医から見て困った患者に遭遇することがあります。それは手術によって良くなった症状を喜ぶよりも残っている症状に不満を言い続ける患者です。これは手術によって得られる症状の改善度と患者の手術治療に対する期待度の大きさとの間にギャップが存在する場合に起こります。このような患者の不満が起こる原因の多くは医師による説明不足と思われます。しかし、手術による症状の改善度を術前に正確に予測する方法はないのです。従って、医師が個々の患者の手術結果を完全に見通して、術前に具体的に説明することは不可能に近いのです。

 そこで、患者の理解を助け、誤解を避けるため、手術後も下肢の痛みやしびれ、麻痺などが残る患者と残らない患者の違いがどこにあるのかについて私見を述べます。

 症状が残存しない患者は一言で言うと、術前に神経障害がなかったか在っても軽かった患者です。これらの患者では、ヘルニアや狭窄症などの術後に時期が来れば、多くは術後3ヵ月以内に症状の全てが解消します。

 一方、腰痛や下肢の症状が残存する患者は、術前に神経障害が進んでしまった患者です。具体的には、下肢の皮膚感覚が強く障害されていたり、びりびりとした異常感覚や冷感などがあったり、筋力の低下が強く、筋肉の萎縮が進んでいたり、膀胱や肛門機能の障害が現れている患者です。さらに、これらの症状が半年以上に渡って続いている患者では術後の神経機能回復は大きな制約を受けます。

 その理由は、ヘルニアであれ、狭窄症であれ、手術で外科医が出来ることは神経の圧迫状態を取り除くことであり、障害を受けた神経そのものを直接に治すわけではないからです。すなわち、術後の神経機能の回復は神経に残されていた回復力の良し悪しで決まるのです。繰り返しますが、どんな名人が手術を行おうと、神経機能の回復は神経自体の力によるのです。ここが重要なポイントです。手術治療のタイミングが症状の最終的回復と強く関係するのです。

 だからこそ、同じ病名で同じ手術を受けても治り方はその人、その人で異なるのです。私は、術前に患者に常に説明することの一つは、手術を受けた他の患者と自分の術後経過を比較するなということです。同じヘルニアという病名でも、術前に神経障害が進んでいた患者とそうでない患者では術後経過と最終ゴールは異なるのです。

 患者が以上の事柄を知らされ理解していたなら、手術に対する過度の期待を持たないで済むかもしれません。人は勝手に一方的に持った期待であれ、それが裏切られたと知った時に不満が大きくなります。従って、医師は期待できることと出来ないことを明確に分けて患者に説明する努力をすべきです。予測不明は不明として、そのまま患者に伝えることが良心的と思います。
 
 結局、私達外科医にとって困った患者とは、受け入れるしかない結果であることを説明しても、それが受け入れられず、不満を持ち続け、精神さえ病んでしまう患者のことであり、もともとの性格が強く関係しているように思います。



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二月に椎間板ヘルニアをPELDで手術をしましたが
一月半を経過しても時折、下肢はピリピリとした痛みが出ています。
特に足首の痺れとピリピリした痛みは常時でており、時々ズキットした痛みが出る、
寝ているときに、きつい痛みが断続的に出て一番つらい
神経的なものと言われ、長期的な緩和を待つしかないのでしょうか。
2015.04.06 21:42
drshujisato
15/04/06の PELD手術を受けられた方へ

術前の具体的な症状がわかりませんので、現在の症状が術前からあるのか、術後に発現したのかが不明です。
どちらかによって原因と対策に違いがあります。
もう一度、経過を詳しく書いてください。
年齢と性もお願いします。

FROM SHUJI SATO
2015.04.06 22:49
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このコメントは管理者の承認待ちです
2015.12.28 01:14
drshujisato
15/12/28の柴田美智子さんへ  Re: 先生の本に励まされました >>

病院名を伏せて、柴田さんのコメントを紹介致します。

私は今年の三月に・・・・脳神経外科で首と腰の狭窄症の手術を受けて大変よくなった患者です。手術は絶対にしないといろいろと頑張っていましたが、脳神経外科の医師との出会いで
> 決心して手術をうけました。その後佐藤先生の本に出会い、いろいろなことが参考になり、安心してリハビリを続けました。今も筋トレ等頑張っています。
> そして私の手術体験記を書きました。手術を嫌っていた、恐れていた自分を振り返ったとき、あれだけ辛い思いをしなくてもよかったと手術の事をお知らせしたいと思ったのです。手術をした情報が少なく不安に思う事がたくさんありましたので、先生の本は本当に助かりました。そしてその本の内容を私の体験記に紹介させていただきました。体験記は近辺の方に差し上げている段階ですが、いつか広く読んで頂ければ狭窄症で困っている人の助けになるかと思います。とりあえずお礼のメールを送らせていただきます。困った患者と言う先生の記事がとてもよく分かります。私もなかなか症状が取り切らないことに苛立ち、悩みながら、でも主治医と手術を信頼してリハビリに頑張り、まだ完全ではありませんが、かなりよくなりました。低侵襲手術を受けて、人生を取り戻した感じです。喜びでいっぱいです。

私のコメント
 柴田さん、よかったですね。私の本が役に立ったのであれば、大変嬉しく思います。
よろしければ、柴田さんの手術体験記を私にも読ませてください。
患者さんがどのような思いで手術に臨み、どのような不安に悩むのか、医師として知っておきたいと思います。
手術を受けられた患者さんの体験記が最も説得力があると思います。
それではお大事にしてください。

FROM SHUJI SATO
2015.12.28 22:38
ケンタッキー州
米国に住んでおります。二か月ほど前に、重いものを持ち上げた後数日動けず、その後、MRIでbulging diskと診断されました。 事故の一か月後は、本当に調子も良かったのですが、それからちょっと無理をしすぎたのか当初経験しなかった程の痛みが今はあります。 リハビリは痛くで二度でやめました。 鍼は、三度行きました。今、夫にせかされてカイロプラクターに行き始めました。 アメリカには、整体がありませんので。 当初より、耐えられないほどの太もも全体などへの痛みが凄く。この二日は杖から、WALKERに頼らなければならなくなりました。 先生のこのブログには、検索をしていてたどり着きました。 ふむふむと納得できる内容ばかりです。 やはり休息が必要なんだと思います。 医者からは、SOMAという筋肉をほぐす薬をもらい飲んでいます。 SOMAが一番効果があるように思えます。 とにかくこの痛みから、解放されたいです。 横になるのもつらく、夜中によく休めません。 先生のブログを読み、カイロに続けていくのもどうなのかと思ってしまします。 この痛みから解放されるには、休養が一番だと先生がいわれているので、会社には行かず安静を試みたいと思います。   ありがとうございます。
2016.12.23 19:22
drshujisato
16/12/23のケンタッキー州さんへ  Re: 叫ぶような痛み

症状からは椎間板性の痛みと思います。
腰のみで、お尻や太もも、脛などに痛み・しびれがないのでしたら、しばらく安静を保てば収まるはずです。
消炎鎮痛剤が効果あるでしょう。
この場合、炎症性の痛みが中心なので、安静が必要です。炎症が収まれば痛みは引いていくのが普通です。
もし、お尻や下肢(太ももやすね)まで痛みが広がっているのでしたら、慢性化する危険性がありますので
その際には治療方針の再検討が必要になります。
それではお大事に。

from SHUJI SATO
2016.12.30 00:32

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