腰椎症によって椎間関節の外側(椎間孔外)の狭窄症により坐骨神経痛の進んでいた患者

.14 2012 腰椎椎間孔狭窄 comment(9) trackback(0)
患者は60歳代の男性。
症状は、数年前から腰痛があり、2年前から右臀部から大腿部の痛みが発現するようになった。いわゆる、坐骨神経痛です。病院を受診し、腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬物治療が開始されたが、効果ないため中止し、接骨院で治療を受けていた。しかし、痛みの改善がなく、右足の背屈力が低下してきたため、当院を受診された。

神経機能検査では、右足関節の背屈力低下と母趾の伸展力の低下、下腿筋の萎縮の外、右L5神経根領域に知覚障害を認めた。

腰椎MRIでは、L4/5に軽い脊柱管狭窄所見と右側のL5/S1の椎間孔外に狭窄所見を認めた。

診断:先の病院ではL4/5の脊柱管狭窄症が原因と診断されていたが、この所見では症状を説明することは困難と判断した。その点、L5/S1の椎間孔外狭窄は患者の症状を説明するのに十分な狭窄程度と判断された。

手術は、MD法により、右外側から椎間孔の拡大術と椎間孔外でL5神経根の除圧を行った。手術所見は椎間孔出口から外にかけて神経根の絞扼は高度であり、瘢痕組織による強い癒着も認めた。この神経根を剥離し、神経根の可動性を回復した。
手術時間:70分、出血量:10ml

術後経過:術後2日で痛みは完全に消失し、しびれも感じなくなった。歩行障害も解消した。手術創部の痛みもなし。

教訓:この患者は腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬物治療、接骨院の治療を受けたが、症状は進行し続けた。MRIでは、L4/5に脊柱管狭窄症の所見を認めたが、患者の進んだL5神経根障害を説明できるほどの狭窄症ではなかった。その真の原因はL5/S1の椎間孔外に存在していた。このような誤診、治療無効例が少なくありません。



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脊柱管狭窄症患者
いつもながら先生の見事な診断と技術に感服致します。残念ながら他の医師ではなかなか難しい疾患なので患者としては常に念頭において受診するべきと考えます。特にMRIで異常がないと診断された時に疑ってみるべきと感じます。ここで質問①L5/S1間に多いのは何故か?②MRIで異常が見つからない時は他の検査(神経根造影、神経根ブロック)をするべきや?③坐骨神経痛はL4,L5,S1,2,3,4の神経だがL5神経症(L5/S1間)が多いのは位置が関係している為?以上宜しくお願いします。
2012.09.16 10:44
drshujisato
回答致します:
1)椎間孔狭窄がL5/S1に多い理由は、椎間孔の解剖学的特徴によるものです。L4/5とL5/S1は椎間板ヘルニアの好発部位であり、すべり症においても同様です。L4/5とL5/Sは腰椎の中でも椎間板や椎間関節の退行変性が最も早く起こり易い部位なのですが、椎間孔狭窄は圧倒的にL5/Sに多く見られます。これは最初に書きましたように椎間孔の形態的特徴によるのです。椎間孔を出てからの部位でもL5神経根は障害を受けることがありますが、これは生まれつき椎間孔外の神経根が通過するスペースが狭いことに起因します。このような椎間孔外での狭窄はL5/S1に特異的な病態です。

2)椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、椎間孔狭窄、椎間孔外狭窄などによって神経根や神経節が圧迫・絞扼を受けている状態はMRIで必ず証明できます。MRIで証明できないことは腰椎退行変性疾患では、存在しないと言ってよいと思います。MRIの撮像条件が不完全であったり、読影力の不足でMRI所見をネガティブとする事例が多いと思います。要はMRI所見と症状との一致性を証明できなければ、手術治療の適応ありとは言えません。私は、これを証明するための神経根造影やブロックは不要と考えています。実際、やっておりません、これらの証明法は必ずしも正確でありませんし、神経根がどの部位で圧迫。絞扼されているかまでは示さないからです。私は椎間孔狭窄や椎間孔外狭窄症例を300例以上、手術してきました。勿論、その経験が見極めに役立っています。

3)L5神経根症に関しては、その原因の80~90%はL4/5の脊柱管にありますが、残る10~20%は椎間孔や椎間孔外にあるというのが私のデーターです。ケースによって、L4/5の脊柱管とL5/Sの椎間孔や椎間孔外の病変が合併していることがあります。実に、複雑なのがL5神経根症なのです。

腰椎は患者によって、4個であったり、6個であったり、神経根にも亜型という生まれつきの特殊な形があり、ますます、診断はむづかしくなるのです。
2012.09.16 22:26
脊柱管狭窄症患者
いつも詳細な回答有難うございます。お陰でかなりの部分で脊椎疾患が理解出来たと思います。この疾患の診断は戦争で敵の暗号を解読するのに似ていると思います。味方を勝利に導くため、何としてでも解読すると云う気持ち、研ぎ澄まれた神経、鋭い観察力が必要です。解読力すなわち診断力が勝敗を決するのですね。
2012.09.17 09:14
drshujisato
回答します。
 その通りです。私は、ヘルニアや狭窄症、すべり症などはすべてが脊椎の構造上の問題を伴い発病する疾患と考えてきましたので、現在の高性能のMRIをもってすれば、必ず原因を可視化できるはずと検討を重ねてきました。その結果、MRIでも撮像条件によっては原因を見逃すこと、通常の二次元的な評価は不完全で、三次元的な評価が不可欠であること、骨の構造や椎間板、関節、靱帯の状態のみならず、神経一本一本の評価(現在の高い性能のMRIでは可能です)などが患者の病態解明に必要なことが解りました。数え切れない数のMRIを詳細に検討し、神経の症状を出す病変と出さない病変の違いがどこにあるのかを見極めることが可能になりました。そのMRIの読みと神経学的は評価法が組み合わさって始めて、今まで、見えていなかった真の原因が見えるようになりました。さらに、多数の手術経験を通じて、病変そのものを顕微鏡下に直接みてきました。私の場合は、症状と神経学的所見から、病変はここに在るはずというMRIの診断の仕方をしていますが、そういう診断をおこなう際にまだ悩むことがあるのはL4/5とL5/S1の合併病変によるL5神経根症の場合です。前者が原因なのか、後者が原因なのか、それとも両者が原因なのか、どちらとも結論がだせない場合があります。そのような時には、私は、L4/5とL5/Sの両方にMD法による同時手術を行います。L4/5とL5/S1を別々に手術するわけですが、私の最小侵襲法は、同時に行っても約1時間30分くらいの手術時間で、出血量も10~20ml位で、患者は翌日から歩行開始できます。患者としては、1カ所の手術も2カ所の手術も実感として変わりないのが最小侵襲MD法の最大の利点です。骨の削除も僅かですので、その点も安心です。このように、原因として疑いの捨てきれない部位には同時に手術を行い、不完全な手術に終わらないよう配慮しています。このような診断法、手術法は私独自のやり方ですが、この10年間余り、私ども脳神経外科医にとって主要な学会で毎年発表してきました。時間がかかっても、進むべき方向へ必ず進むと確信しています。
2012.09.17 12:28
脊柱管狭窄症
先生は脊柱疾患の職人だと思います。職人技です、だから他の医師はなかなかなか真似が出来ないのだと思います。その技は一長一短に身につけたものではありません。戦場で緊迫な状況の中から得た貴重なものばかりです。弛まない挑戦はわこれからも続くと思いますが身体が資本です是非ご自愛下さい。それと師匠の下に沢山の弟子が集まり切磋琢磨する未来の姿を夢見て失礼いたします。
2012.09.17 14:24
drshujisato
一人の職人で終わらぬよう私が得たものを広く伝えていく所存です。
一人でも多くの患者が救われるように。
ありがとうございます。
2012.09.17 22:50
-
とても貴重な意見が書かれており、とてもためになりました。
ひとつ疑問がありましたので、質問させて頂きます。
L4/L5高位での脊柱管狭窄症により、L5神経根障害が起きる頻度が高いということをインターネットでみたのですが、なぜL5神経根なのでしょうか?
L4/L5であれば、L4の神経が障害されると思うのですが、硬膜管内外で障害された場合はL5、椎間孔で狭窄された場合は、L4ということで宜しいのでしょうか?
硬膜管内外で障害された場合は1椎上に問題があるということでしょうか?
宜しくお願いします。
2015.04.03 01:31
drshujisato
15/04/03の・・・・ さんへ 
       Re: 脊柱管狭窄症について

腰椎高位と障害を受ける神経根との関係についての質問ですね。
この問題は脊柱管と椎間孔にわけて考えることが必用です。
L4/5の脊柱管の外側部を硬膜管からわかれたL5神経根が通り、そのL5神経根は一つ下のレベルのL5/S1の椎間孔から腰椎の外に出て行きます。L4/5の椎間孔は、一つ上のL3/4で硬膜管からわかれたL4神経根が通り、腰椎の外に出ていくことになります。他の椎間でも同様の関係です。
参考になれば幸いです。

FROM SHUJI SATO
2015.04.06 21:48
-
15/04/03に質問させて頂いた者です。
とても参考になりました。
ありがとうございました。
2015.04.09 15:36

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