腰椎椎間板ヘルニアによって起こる腰と下肢の激痛について

.11 2013 腰椎椎間板ヘルニア comment(16) trackback(0)
腰椎椎間板ヘルニアの症状の内、患者にとって最もつらいのは臀部から下肢の激痛です。この痛みは坐骨神経痛と大腿神経痛に分けられます。それぞれの特徴については、以前にブログで説明しましたのでご覧下さい。ここでは簡単な説明にとどめます。坐骨神経痛には腰椎5番から仙椎1番の神経根が関係し、大腿神経痛には腰椎2番から4番の神経根が関係します。腰椎椎間板ヘルニアは下位腰椎、すなわちL4/5やL5/S1に好発します。これらのレベルでは腰椎5番の神経根やS1神経根がそれぞれ障害されるため、大腿神経痛よりも坐骨神経痛の方が数の上では圧倒的に多く発生することになります。そのため、一般に腰椎椎間板ヘルニア=坐骨神経痛と理解されています。

それでは、椎間板ヘルニアではどのようにして激痛が生じるのかを説明します。 

椎間板ヘルニアの最初の症状はぎっくり腰と呼ばれる急性腰痛です。これは髄核が線維輪という靱帯を特定の部位で破った時に生じる痛みです。腰に異変を感じても直ぐに痛みが生じるわけではなく、痛みは半日以上過ぎてから本格化します。この腰痛は靱帯由来の痛みで、靱帯周辺の炎症が痛みの発生に関係しています。そのため、炎症が治まると腰痛は消失していきます。通常、腰痛は1~2週間で消失します。

 椎間板が原因で起こるぎっくり腰は靱帯性の痛みですから、臀部や大腿部に痛みが起こることはありません。ところが、靭帯の破れが大きく、髄核が靱帯外にはみ出し、近くを走行する神経根を圧迫・刺激すると、半日過ぎた頃から臀部や大腿部に激痛が起こります。このように半日過ぎた頃から激痛になるのも神経根周囲に炎症が発現するためです。このような臀部や下肢の痛みに先駆けて、ぎっくり腰を経験する場合が多いですが、これを経験することなく、最初から臀部・下肢の激痛になる方もおられます。

次に神経根が関係する根性痛について説明します。

 神経根は脊柱管の外側や椎間孔周辺を走行するので、ヘルニアがこれらの部位で神経根を圧迫・刺激すると臀部や大腿部に激痛が発生します。このような激痛を起こすヘルニアのタイプは、後外側型ヘルニアと外側型ヘルニア、さらに超外側型ヘルニアです。これらのヘルニアで激痛になるのは、脊柱管外側部や椎間孔周囲はもともと神経根周囲のスペースが狭いため、ヘルニアが小さくても神経根への圧迫影響が強くなるために激痛になるのです。

 一方、中心型ヘルニアと呼ばれる脊柱管中心部のヘルニアは通常は神経根を圧迫せず、馬尾を内部に収めている硬膜管を圧迫します。馬尾は硬膜管の中では、脳脊髄液という液体の中に浮いていますので、余程ヘルニアが大きくなければ、脊柱管中心部のヘルニアが馬尾を圧迫して症状を出すことはありません。もし、ヘルニアが大きくて馬尾を強く圧迫するなら、両側のお尻や大腿・下腿後部のしびれもそうですが、会陰部のしびれと共に排尿障害が発現することがあります。排尿障害はヘルニア症状の中で最も重篤な症状であり、早急に手術を行うことが必要です。なぜならば、馬尾障害による排尿障害やしびれなどの症状が生涯、後遺症として残るからです。

ここまでをまとめると、ヘルニアによる痛みは靱帯性の腰痛と神経根圧迫・刺激による根性痛に分けられます。いずれの痛みの発生にも炎症が強く関与します。

次にヘルニアによる痛みなどの症状を起こしやすくしたり増強したりする要因について説明します。ヘルニアの発生部位と併せて痛みに関係する重要な要因は脊柱管や椎間孔の構造です。生まれつきや加齢による腰椎症性変化によって脊柱管や椎間孔が狭い患者では、ヘルニアによる神経根の圧迫はより強くなるため、痛みの外、しびれや筋力低下などの神経根症状が強くなります。

 さらに、ヘルニアの発生した腰椎間にすべり症があったり、病的に動く状態、すなわち腰椎不安定性があったりすると、身体の動きや動作によって神経根の刺激が強くなるため、痛みが増強し、長引く傾向があります。このような腰椎の状態を持ったヘルニア患者では、痛みの強い時期には、腰部の安静が特に必要です。

 腰椎椎間板ヘルニアによる根性痛の発生や程度に関係する要因をまとめると、(

(1)ヘルニアの発生部位(後外側型、外側型、超外側型)と(2)脊柱管や椎間孔の構造(狭窄の有無)、さらに(3)腰椎間の不安定性の有無などが関係します。(4)痛みの強さには炎症が強く関与します。従って、これらの要因を適切に分析・評価し、時間的経過における症状の推移を見極めて、治療方針を決めることが重要です。

 薬物治療やブロック治療をしていても痛みが軽減していかないヘルニアでは、手術治療も検討することが必要です。ただし、外側型ヘルニアや超外側型ヘルニア、さらに腰椎症を伴うヘルニアでは診断と手術は難しくなることを知っておくことが必要です。



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yasu3
スミマセン、教えて下さい・・・
ここでいう、ヘルニアの靭帯性の痛みというのは、具体的にいうと靭帯がどのようになっている状態に発生しているものを言うのでしょうか??
なぜこのようなことを聞くかというと、私は昨年13mmの巨大ヘルニアが2回出たのですが、運良く2回ともきれいにほぼ消失しました・・・が腰痛と背骨の痛みと硬さが強烈に残っており、これがなぜか分からず、困っておりました
わき腹から背骨の中心に向かっての痛みは相当なもので、この項のブログを読ませてもらって、靭帯が相当に痛んでいるのでは・・・と考えたからです
教えていただければ、幸いです

よろしくお願い致します…m(_ _)m
2013.07.14 04:48
drshujisato
わき腹から背骨中心に向かう痛みが腰椎椎間板ヘルニアによる痛みであるのかに
先ず、疑問を持つべきでしょう。
それが、まず必要です。

佐藤秀次
2013.07.15 20:39
yasu3
ご回答、ありがとうございます!!

さて・・・
回答いただいたように、わき腹の痛みと背骨の硬さがヘルニア由来のものでないとすれば、具体的には他にどのようなものが原因として考えられますか??
また病院のどのような診療科で、(何をうたがって・・・)検査をしたらよいでしょうか??
背骨周辺の硬さというのは、ヘルニアの手術や消失があったあとによく発症する症状ではないと考えた方がよいのでしょうか??
2013.07.15 23:59
drshujisato
腰のヘルニアではわき腹には痛みは起こらないと思います。
わき腹から背骨ですと、胸椎レベルの病変がないかの検討が必要でしょう。
胸椎にも希ですがヘルニアがありますし、年齢によっては黄色靭帯骨化症、圧迫骨折などに伴う肋間神経痛などもあります。腫瘍性病変もありますね。炎症性疾患もあるかも知れません。胸椎MRIによる検討が必要と思いますが。
2013.07.16 22:45
yasu3
どうもありがとうございました!!
病院で調べてみます

1年前にヘルニアになってから、佐藤先生のブログやコメントは、大変参考になり、励まされ、私が闘病・治療していく中での助けとなりました

お会いしたことはありませんが、心から感謝いたします…m(_ _)m
2013.07.18 08:41
伊藤
過去10年程の間に2度ギックリ腰を経験しています。7月末に腰を痛めました。8月頭の朝に整骨院にて電気治療、強めのマッサージ等を受け、同じ日に冷たい河に浸かった後の夕方から右脚鼠蹊部〜大腿前側面に激痛が走り入院しました。MRIを撮ろうにも姿勢を維持出来ずにうまく行かず、9月頭まで原因を特定出来ずにいました。別の病院にL3L4のヘルニアと診断されました。現在徐々に鼠蹊部の痛み、膝〜脛の痺れが収まりつつあります。こちらのブログはとても参考になり、精神的に不安定な時期の支えとなっております。ありがとう御座います。今は足腰の痛みと相談しつつ趣味の自転車の再開を楽しみにしている時期です。
2013.09.16 17:18
drshujisato
本格的な大腿の痛みが8月始めとのことですので、まだ1ヵ月少々ですので、自然治癒を期待しましょう。
もし、発症後3ヵ月を過ぎても症状の改善が進まず、膝の力が入りにくくなるようでしたら、治療法の再検討
が必要です。頑張って下さい。


佐藤 秀次
2013.09.17 20:29
藤本
教えてください
2月19日にPELD椎間板ヘルニア手術をしました。
翌日には退院して、家にて療養しておりますが、
退院時から少し下肢の痛みが続いており、
時には強い痛みが出ることもあり、三日前には激痛が伴い
今は歩行はもちろん、立っているのもつらい状態です。
痛みは徐々にとれるものでしょうか。
これから、どのように対処すればいいのでしょうか。
再発ですか、再手術となるのですか。
2015.03.09 08:42
drshujisato
15/03/09の藤本さんへ 

術後18日くらいが経過しているわけですから、術後炎症性の痛みとしても長過ぎると思います。
術前と比べて、どんな症状が改善し、悪化しているのか。立位や歩行による症状の増強はどうであるのか。
不完全除圧の可能性や早期再発などを疑う必要があります。
除圧が適切であれば、術後必ず症状の改善があり、1週間くらいをピークに炎症性の痛みなどの症状が発現します。これも2週間までには改善しますので、術後一般的な経過という意味では、あなたの場合は問題があると思われます。再検討が必要でしょう。

FROM SHUJI SATO、
2015.03.09 22:53
柴崎栄司
東京都在住、46才男です。25年前に左足の痛みとしびれで座位困難、自然治癒しましたが、1昨年より腰痛再発し、昨年暮れには、足の痛みとしびれで朝方など歩行困難のため、A整形外科受診、MRIで4番~5番の軽度のヘルニアと診断、1月から2月にかけて、ロキソニンとリリカ、4回の仙骨硬膜外ブロック注射で、ほぼ回復。ところが5月2日、車の掃除を少ししたところ、その夜から腰が重くなり、6日からは寝たきりになりました。A病院が改装中で長期休みのため、翌日最寄りの総合病院へ救急搬送してもらいましたが、座薬のみの処方で返されてしまい、4日後に別の総合病院を受診、MRIでA病院と同様の診断を受け、仙骨硬膜外ブロックとトラムセットを処方されました。寝たきり10日目ですが、左足付け根やくるぶしの痛みと足先のしびれがあり、寝返りは打てるようになりましたが、まだトイレまでも歩けません。20日の再受診で今後の治療方針を立てるとのことですが、それまで、なにか出来ることはないでしょうか。また、忙しい職場なので、早く復帰できる方法がないでしょうか。何かアドバイス頂ければ幸いです。
2015.05.16 21:35
drshujisato
15/05/16の柴崎栄司さんへ  Re: ヘルニアで自宅療養中

段階的にヘルニアが悪化していると思われます。
5月2日に悪化し、現在も歩けない状態にあるということは、手術治療が必要なヘルニアの可能性が高いのかもしれません。
現段階では、無理をしないことです。仕事のことが心配になる気持ちはわかりますが、無理をして動くと余計に悪いことになる危険性があります。
20日の再受診で今後の治療法を検討していただくことです。

それではお大事に。

FROM SHUJI SATO
2015.05.18 15:21
ママさん
今年1月に椎間板ヘルニアによる座骨神経痛と診断され、ブロック注射(麻酔が効きにくい体質なのか、全く効かなかったので、一回限りの注射でした。)セレコックス100mgを朝・夕と1ヶ月内服・並行して、電気治療・腰の牽引でのリハビリを2ヶ月。左腰痛と左臀部・左下肢の痺れと痛みがなくなり、安心していました。
が、5日前に腰を捻ってしまい、ギックリ腰の症状(3日間で痛み消失)は、なくなったのですが、左臀部・左下肢の激痛で
レントゲンをとり、前回よりも、L5の間が狭くなっているとの診断でした。
薬は、前回と同じように、セレコックス100mgを朝・夕、ボルタレン坐薬で
炎症を抑えて、牽引と電気治療を始めましょうと言うことでした。
未だ一度もMRIを撮ったことがないのですが、やはり撮った方がよいのでしょうか?
撮ったからといって、治療法が変わる事は、ありますか?
もう、激痛で立ち上がる事、寝返り、座る事も、ままならない状態です。
今は、とにかく布団で横になり昼間安静にしています。
2015.06.01 20:11
drshujisato
15/06/01のママさんへ  e: 椎間板ヘルニアによる激痛

 腰痛のみならず、下肢にも症状がでているのですから、MRIを行うべきです。
レントゲン撮影では、正確なヘルニア診断はできません。MRIでヘルニアによる症状であるのか
、ヘルニアであるなら、その程度と今後の見込みなどを検討すべきと思います。
症状経過とMRI所見によっては、手術を考えるべきヘルニアもありますのでね。
それではお大事に。

FROM SHUJI SATO
2015.06.02 15:25
ママさん
今日は、昨日に続いて
腰の電気治療・左下肢の電気治療
牽引とリハビリをしてきました。
やはり、レントゲンだけでは、ダメなのですね。
幸い、通っている整形外科にMRIがありますので、先生に話をし、一度MRI撮影を受けようと思います。
身動きし取れず、気分は滅入っているなか
とても、詳しいブログに出会えた事に感謝しています。
2015.06.02 17:40
60歳の男性です。整形外科に通院していますが、レントゲン診断で軽い脊柱管狭窄症と診断されたのが1ヶ月半前。半月前からは臀部下及び右ふくらはぎ右と右足しびれが出て、時々激痛がありましたが、なんとか昼間は杖をついて通勤できていました。。とうとう、一週間前から、激痛により非常に困難な状況になり、別の病院で来週MRI検査する予定です。が、本日、立ち上がるのも腰を曲げるにも激痛で如何ともしがたい状況です。通勤もできず、自宅で安静にしていますが、横向きに寝ている以外痛みがあり、歩行や前屈みをすると、激痛が持続する状況です。
どのように、したらいいでしょうか?

2016.03.10 17:10
drshujisato
16/03/10の南さんへ  Re: ヘルニアによる激痛

レントゲン診断で脊柱管狭窄症と診断されているということは、発育性、すなわち先天的な要因に
よる狭窄症という意味でしょうかね。通常は、MRIで診断します。
あなたの場合、症状からは椎間板ヘルニアが疑われます。
まずは、激痛をブロックや薬物治療で緩和し、最終的には、手術が必用かどうかの判断を
適切に行うことが重要です。
ヘルニアは自然治癒するものが多いので、まずは保存治療が一般的ですが、麻痺が進んでくる
場合や3ヵ月以上痛みが持続する場合には手術を考慮すべきでしょう。
それではお大事に。

FROM SHUJI SATO
2016.03.10 23:02

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