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腰椎椎間板ヘルニアの真理 (I)症状編:(7)椎間板ヘルニアによる痛みの経時的変化

.11 2018 脊椎疾患 comment(0) trackback(0)

(7)椎間板ヘルニアによる痛みの経時的変化

椎間板ヘルニアは急に腰痛などの痛みを起こす疾患として知られています。しかし、急にといっても突然と言うほど速やかではありません。腰にぎくっとした違和感を自覚してから、数時間以上経て腰痛や臀部痛などが発現し増強します。これは椎間板が靱帯を破り、そこに炎症が進むことで発現する痛みだからです。すなわちタイムラグがあります。

もし、靱帯のみの炎症であるなら、腰痛のみで、いわゆるぎっくり腰となります。一方、靱帯を破り脱出したヘルニアが神経根にまで影響を及ぼすと神経根嚢炎となり、臀部や鼠径部、下肢へと痛みが広がります。

炎症は、それを持続させる原因となる腰に負荷を加える仕事や運動を行わない限り、発症後1週間を過ぎる頃から軽減するので、これと連動して痛みは軽減します。さらに、ヘルニアの多くはマクロファージと呼ばれる白血球によって吸収され縮小・消失するので、通常、痛みは発症後1ヵ月頃には消失します。しかし、ヘルニアが消失しない場合には、痛みは慢性化します。慢性化とは3ヵ月以上痛みが続く状態です。

激痛でないにせよ、痛みが慢性化する患者では、私は手術を勧めます。なぜなら、痛みをもった生活は腰をかばう姿勢をとるため、腰の側彎変形や別のヘルニアを起こすことがあり、さらに腰椎症性変化を増強し脊柱管や椎間孔の狭窄病変を進めるからです。しかし、なによりも慢性痛を避けたいのは、慢性痛は患者を鬱(うつ)にし、生活の質の低下を招くからです。

次は(8)椎間板ヘルニアによる神経症状の進み方、について説明します。


腰椎椎間板ヘルニアの真理  (I)症状編 : (5) ヘルニアの重症度とは?

.08 2018 脊椎疾患 comment(0) trackback(0)
5)ヘルニアの重症度とは?
  ヘルニア重症度の評価は何をもって行うべきか。あくまでも私見ですが、私はヘルニアの大きさではなく、「痛みの程度」と「神経障害の程度」から総合的に行うべきと考えています。

腰痛や坐骨神経痛、鼠径部付近の痛みなどは、主観的なものですので、それらの程度を他と比較することに余り意味はありません。なぜなら、痛みに弱い患者の方がじっと痛みに耐える患者と較べて、より重症との印象を与えるからです。しかし、患者がどの程度の痛みとして自覚しているのか、さらに術前後で痛みの程度はどう変化したのかを知る手段として、広くVASが用いられており、私も重宝しています。

ヘルニアによる激痛は拷問のように容赦なく患者を苦しめます。従って、強い痛みは患者側に立てば最も重症感の強い症状になります。なぜなら、激痛は患者の意識の中で足のしびれや麻痺、排尿障害などを凌駕する肉体的苦痛だからです。

一方、神経障害は下肢の痛みやしびれ、知覚障害、筋力低下(麻痺)や排尿・排便障害などを起こします。ヘルニアによる神経障害の症状は、障害された神経根や馬尾の支配領域に発現します。例えばL5神経根であれば、下腿外側から足背・足底(母趾側)に知覚障害としての痛み・しびれが発現し、さらに母趾や足関節の背屈力低下が起こります。さらに自律神経障害として足の冷感や浮腫、色調変化なども起こることがあります。これら神経障害の程度は患者個々に様々であり、厳密に言うなら、誰一人として同じではないと言って良いでしょう。

私がへルニアの重症度を問題にする最大の理由は、後遺障害と関係するからに外なりません。神経障害は一旦進行すると後戻りがきかなくなります。これを「神経障害の非可逆性」と呼びます。重症度の高い患者ほど、短期間で神経障害は非可逆的になります。その結果、神経障害性疼痛や下垂足などの運動機能障害、排尿排便障害などが後遺することになります。ヘルニアによる神経後遺症は神経障害が可逆的な時期(神経機能障害が完全に回復するgolden stage)に手術を行うことで防止できるはずです。私はこの考えに基づいて治療することが重要と考えてきました。これはヘルニアの重症度の評価抜きにはなしえないのです。重症度評価やgolden stageについては、手術治療編でも取り上げる予定です。
次回は、(6)激痛を起こす椎間板ヘルニアの特徴、を予定しています。

17/12/06の東京KE男(60歳)さんへの回答  Re: 固定術の後遺症軽減について

.12 2017 脊椎疾患 comment(0) trackback(0)

コメントへの回答送信ができませんので、ここで回答致します。


17/12/06の東京KE男(60歳) さんへ  Re: 固定術の後遺症軽減について

 

術後経過がよくて、よかったですね。

ご質問の件ですが、今回の固定術を含めて計3回の手術を受けたことになりますので、

腰部の筋肉は萎縮し、硬直していると思います。

そのための腰痛である可能性が高いです。

お風呂で温めたり、筋の緊張を緩めることで痛みが軽減されることからも、そう考えて良いでしょう。

ロキソニンは消炎鎮痛剤ですので、この種の痛みには余り効果は期待できません。

痛みに対する対策ですが、決定的なものはなく、徐々に筋力をつけ、硬直した筋肉を和らげていくことです。

焦りは禁物です。頑張って下さい。

 

FROM SHUJI SATO

名古屋でヘルニア手術を受けられた52歳男性への回答

.27 2017 脊椎疾患 comment(0) trackback(0)


病院名が書かれていたので、これを削除しようとしていて、質問を削除してしまいましたので、

ここで回答致します。

質問:はじめまして。52歳の男性です。
11/13
に椎間板ヘルニアL3/L4の顕微鏡での手術を名古屋で有名な・・・・にて手術を受けました。
術後は全く痛みもなく喜んで退院したのが16日。しかし20日から以前のような足に激痛が。
そして今日の21日はヘルニアの時よりもひどい痛みが足にあります。
先生のブログに術後3日くらいすると炎症により痛みが出ると書いてありますが
これもその様な痛みなのでしょうか?術後に全く痛くなかっただけに再発なのか不安で仕方がありません。

回答:術後の時間経過からみて、炎症による痛みの可能性は低いように思います。ヘルニアの再発は時期を問わず起こり得ますので、もし痛みが持続するなら再発を疑う必要があるでしょうね。MRIで診断できますので長引くなら検査を受けることをお勧めします。それではお大事に。

FROM SHUJI SATO

 

腰椎手術は成功したが、良くならないのは精神的な問題とされ、真の原因を求めて 遠く県外から受診された高齢女性の一人旅

.19 2017 脊椎疾患 comment(64) trackback(0)

 「坐骨神経痛の原因は椎間孔狭窄症」の診断で、右L5/S1の椎間孔内でL5神経根除圧術とL5/S1のペディクルスクリュー固定術を受けたが、術後症状の改善が得られず、次第に悪化していると訴え、81歳の女性が遠く県外から受診されました。


執刀医から手術は成功しており、痛みが良くならないのは精神的な問題とされ、色々と強い薬を投与され、その副作用にも苦しんでこられた。セカンドオピニオンも必要ないと言われ、無効な治療が続けられてきたと言う。


私の本「腰椎手術はこわくない」を読まれ、何としても真の原因が知りたいと、1年がかりで受診が実現したと言う。精神的なものではない、必ず解き明かされない原因があるはずと、その強い思いが施設住まいの高齢女性を動かしたのである。


私は話を聞きながら、やるせない気持ちになりました。患者さんの症状についての説明を聞きながら、脊柱管狭窄症の症状、それもL4/5の狭窄症と診断できたからです。MRI画像では、診断されなかったL4/5の脊柱管狭窄症の所見が認められました。確かに、脊柱管は全体としては狭くないが椎間関節の変形肥大によって脊柱管外側部が狭くなっており、そこでL5神経根が絞扼されていました。狭窄は最初に症状が発現した右側で強く、左側はそれよりも軽い状態でした。


L5/S1でのL5神経根の除圧と固定術が無効であったのは、真の原因部位が違っていたためです。さらにL5/S1で固定されたために、隣接椎間であるL4/5に負荷が増し、脊柱管絞窄が進行し、症状が悪化したと診断致しました。


患者さんは原因が解明され、執刀医から精神的なものとあしらわれてきた惨めで不安な気持ちから、やっと抜け出せることに安堵された様子でした。そして、当院での手術を予約されていきました。辛い痛みから解放されたくて、高齢にも関わらず大手術を受けることに同意したのに、最後には心の問題とされてしまい、どれほど納得いかなかったことか、胸の痛む事例でした。それにしても私の本を買われ、独学して受診につなげられた知力と行動力に感服しました。なんとしても良くして差し上げなければ、私ども脊椎外科医の存在意義はないでしょう。

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