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腰ヘルニアの再発を3度繰り返した40代女性が4度目に起こした問題とは?

.10 2014 腰椎椎間孔狭窄 comment(5) trackback(0)
複数の病院で、過去に3回のヘルニア手術を受け、4回目の再発があり、受診された40代女性を紹介します。
この方はL5/S1に毎年ヘルニアを再発し、4度目になる今回は担当医から、癒着の起こり易い体質なのでもう手術はしない方が良いと話されたために私を受診されまいた。トラムセットなどを服用していましたが、痛みのコントロールはできていなかったようです。

症状は、腰痛と左臀部、大腿外側、下腿外側の痛みとしびれであり、足背にも痺れがありました。左足は下垂傾向のため、歩行困難な状態でした。

神経学的には、 左足関節と母趾の強い背屈力低下あり
           左の下腿外側・足背に知覚障害あり

腰椎MRI所見:
矢状断像(左椎間孔レベル):椎間孔狭窄を認める
術後椎間孔狭窄  術前MRI 矢状断

横断像(L5/S1レベル:過去に手術を受けた部位):左S1神経根が描出されている(矢印先)
術後椎間孔狭窄  術前MRI 横断

冠状断像:L5/S1の左椎間孔内の神経根の絞扼が疑われる
術後椎間孔狭窄  術前MRI 冠状断_bak

今回の症状は、S1神経根症ではなく、L5神経根症です。MRIではL5/S1にヘルニアの再発を認めません。従って、症状と神経学的所見、さらにMRI、CT(後で提示します)所見から、左L5/S1の椎間孔狭窄症が疑われました。
痛みが持続し、知覚障害、筋力低下が進んでいることから、手術を行うことを決定しました。

手術は、MD法によりL5/S1の外側アプローチで椎間孔を拡大し、L5神経根の除圧を行いました。手術所見は、過去のヘルニア再発や手術などの影響によると思われる瘢痕組織が椎間孔内を埋めており、L5神経根は瘢痕組織内に埋没していました。瘢痕組織を神経根から剥離・摘出することは神経根障害を起こすため、椎間孔を拡大して、瘢痕組織ごと
L5神経根を除圧しました。L5神経根が瘢痕組織ごと動かせる状態まで除圧しました。
手術時間は丁度1時間、出血量は10mlでした。

手術所見
 術後椎間孔狭窄 手術所見
 disc:椎間板、scar tissue:瘢痕組織、sacral ala:仙骨翼、pedicle:椎弓根

術後MRI:L5/S1の左の椎間孔外からアプローチして、椎間孔の拡大と仙骨翼の部分削除を行い、L5神経根の除圧がなされています。
術後椎間孔狭窄  術後MRI 矢状断
術後椎間孔狭窄  術後MRI 横断
術後椎間孔狭窄  術後MRI 冠状断

術前後のCTを提示します
 術前CT横断:過去の手術で椎間関節の内側部が部分削除されています
術後椎間孔狭窄  術前CT 横断

 術前CT矢状断:L5/S1の左の椎間孔内に上関節突起が入り込んでいます(矢印)
術後椎間孔狭窄  術前CT 矢状断

 術後CT横断:L5/S1の外側から椎間関節の外側部と仙骨翼が削除されています。
術後椎間孔狭窄  術後CT 横断

 術後CT冠状断:椎間孔内に入り込んでいた上関節突起が削除され、椎間孔が拡大されています
術後椎間孔狭窄  術後CT 矢状断

コメント:この患者さんは、L5/S1に3回のヘルニアを繰り返し、4回目はヘルニアの再発ではなく、瘢痕組織による椎間孔狭窄が原因でした。そのため、L5神経根の障害が発生しました。
この場合、瘢痕組織と神経根が一塊になっていますので、瘢痕組織ごと神経根を除圧することが必用になります。瘢痕組織を取ることにこだわると、神経根を傷めることになり、術後神経根障害が悪化するでしょう。神経根を除圧するための
苦肉の策と言えます。

この患者さんは、麻痺の改善が得られ、腰痛や下肢の痛みは軽減しております。歩行状態も術前よりは著しく改善しています。しかし、神経根障害が進んでいたために、神経障害性の疼痛が下肢にあり、トラムセットを服用してもらっています。
術前にもトラムセットを服用されていましたが、効果は余り無かったようです。神経根除圧により、神経性障害性疼痛はコントロールがし易くなりました。

私は、再発ヘルニアを含め、このような瘢痕性椎間孔狭窄の患者さんでも、神経根の除圧手術を優先します。固定術を行うことは例外的なものです。私自身が経験した4度目のヘルニア再発の患者さんもMD法で手術したことを以前にも触れました。できるだけ、固定術は避けるべきが私の方針です。

この患者さんが残した教訓は、ヘルニアの再発を繰り返す中で、瘢痕組織により椎間孔狭窄が発生することがあるということです。このようなケースもあることを念頭に、決して諦めてはだめだということを強調したいと思います。

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MRIでは、異常所見なく、原因不明の坐骨神経痛として紹介された腰椎椎間孔狭窄症の60代男性の場合

.06 2014 腰椎椎間孔狭窄 comment(8) trackback(0)
MRIなどの検査で、異常なく、神経ブロックなどの治療を受けていたが、症状が改善しないため、担当医からの紹介状を持参して、県外から私の外来を受診された60代の男性の診断と手術治療について紹介し、腰椎変性疾患には、いかに診断の難しいケースがあるかを知っていただきたいと思います。

患者さんは平成25年の春から、左臀部~大腿にかけての痛みが起こりました。徐々に左下腿外側にも痛みしびれが出現するようになりました。痛みは歩く時に出現し、坐位では軽減する。間欠性跛行も認めました。

神経機能検査では、左足関節の筋力低下は認めませんでしたが、左下腿外側部と足背に触覚低下を認めました。痛覚は正常でした。

症状と神経学的所見からは、左L5神経根症と診断しました。

MRI,CT検査から、患者さんの左L5神経根症の原因はL5/S1の左側の椎間孔狭窄症と診断しました。
MD法による椎間孔拡大術を行いましたが、左L5神経根は椎間孔内で上関節突起と膨隆した椎間板、
肥厚した黄色靭帯、椎弓根間で強く絞扼されていました。
手術では、上関節突起を削除し、黄色靭帯を切除し、硬化膨隆した椎間板を摘出し、L5神経根を除圧しました。
手術時間は1時間、出血量は10mlでした。

退院時には、術前の左臀部~大腿部痛、左下腿外側のしびれは消失しており、間欠性跛行も認めなくなっていました。
次に、この患者さんの術前術後画像を供覧します。この画像から、椎間孔狭窄症を診断できる医師は極めて少ないと思います。私は、この患者さんを紹介していただいた医師に敬意を表したい気持ちです。このように患者さんのことを考え、他の医師の意見を聞かれることは大変勇気のある行動であり、そのような医師が増えて欲しいと願います。

術前MRI所見:矢状断像では異常所見を認めません。
 FS PREOP MRI SAG

L4/5の椎間板レベルでは異常所見を認めません。
FS PREOP MRI AXI L4-5

L5/S1の両側の椎間孔を示しますが、この画像から椎間孔狭窄を診断することは困難です。
FS PREOP MRI AXI L4-5 VF

L5/S1の椎間板レベルには異常所見は認めません。
FS PREOP MRI AXI L5-S

術前MRI冠状断像では、左L5/S1の椎間孔内で神経根が腫れている所見が疑われます。
FS PREOP MRI CORONAL

術前CT所見:椎間孔狭窄の診断は困難です。
FS PREOP CT

術後CT所見:左で椎間孔拡大術が行われています。赤矢印
FS POSTOP CT

術後MRI所見:赤矢印は椎間孔拡大を示し、青矢印の先には除圧されたL5神経根が認められます。
FS POSTOP AXI

術前CT:L5/Sの椎間孔内に上関節突起が入り込んでいる。
FS PREOP CT

術後CT:椎間孔内の上関節突起が削除されている
FS POSTOP SAG CT

コメント:この患者さんの椎間孔狭窄症の診断は300例以上の椎間孔周辺部病変の手術経験を持つ私にも困難でした。
診断のポイントは症状は明らかにL5神経根症であること、MRIでは、L5神経根症の原因になりやすいL4/5には有意な狭窄病変がないこと、椎間孔外にも狭窄病変はないこと、そして椎間孔内に上関節突起が入りこみ、L5神経根が腫大(はれている)している所見がみられたことです。下肢の痛みが腰椎の姿勢や動きに関係していることは、L5神経根に圧迫性病変があることを強く疑わせました。
これら症状、MRI所見、CT所見などを総合して椎間孔狭窄症と診断しました。そして、手術によって診断が正しかったことが証明されました。
このようなケースは、通常は原因が見逃され、あるいは診断が困難であり、適切な治療を受けられないでいる患者さんが多いと思われます。医師の診断力は腰椎変性疾患においては、何よりも重要と言って過言ではありません。

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腰椎には異常なく、坐骨神経痛として治療されていた60代男性

.24 2014 腰椎椎間孔狭窄 comment(5) trackback(0)
60代の男性が県外の病院からの紹介状を持参されて私の外来を受診されました。
紹介状では、左腰部痛と下肢痛を認めるが、MRIでは明らかな脊柱管狭窄や神経根圧迫は認めず、坐骨神経痛として治療しているとのことでした。
問診では、約1年前から、歩行中に左臀部から大腿外側部にかけて痛みが発現するようになる。次第に左下腿外側部にも痛みとしびれが発現するようになる。痛みは歩行で増強し、座ると軽減する。左下肢に間欠性跛行ありとのことでした。
神経学的所見では、筋力低下はありませんが、左L5神経根領域に知覚障害を認めました。
腰椎レントゲン撮影では、加齢変化を認めるのみでした。
腰椎MRIでは、脊柱管内には病的所見は認めませんでしたが、L5/S1の左側の椎間孔狭窄と超外側型椎間板ヘルニアを認めました。
症状は明らかにL5神経根症状であることと、MRI所見からL5/S1の椎間孔狭窄と超外側型ヘルニアを認めたことから、後者が症状の原因と診断しました。
手術は、L5/S1の正中に18mmの切開を加えて、MD法により左側で椎間孔拡大術とヘルニア摘出を行いました。
手術所見では、左L5神経根が椎間孔内で強く絞扼され、癒着も強く認めました。
手術時間は丁度1時間、出血量は10mlでした。

術後、10日目に術前の症状は完全に消失していました。歩行も正常化しました。術後、鎮痛剤は不要でした。

この患者さんでは、L5/S1の椎間孔狭窄と超外側型ヘルニアがL5神経根症の原因でしたが、MRIによる画像診断は困難と思われました。画像に見られる狭窄が強くなくても、腰椎に動きの影響が加わることで、根性痛が発現する場合があります。
この患者さんのように、坐骨神経痛と診断されても、原因不明とされる患者が多いだろうと推測しています。
姿勢の影響や動作・歩行の影響を受ける臀部や下肢の痛みやしびれは、必ず、腰椎に原因があるという目で慎重に検討することが必用です。

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再手術で坐骨神経痛の改善した腰椎症性椎間孔外狭窄の後期高齢者の男性

.15 2014 腰椎椎間孔狭窄 comment(6) trackback(0)
平成23年頃から、患者さんは腰痛と左下肢痛があり、歩行で痛みが増し、座ると軽減するという狭窄症様の症状を持っていました。寝るときには、左を下にすると痛みが増し、右下すると痛みが軽減するという状態でした。
症状は左L5神経根が原因の坐骨神経痛と診断しました。
画像検査では、腰椎症性変化が進んでいますが、今回の症状の原因はL4/5の右側の腰椎症性脊柱管狭窄症と診断し、同じレベルの右側の椎間孔狭窄も疑われたため、
手術は、MD法により、脊柱管内で右L5神経根を除圧し、併せて右の椎間孔拡大術を行い、右L4神経根も除圧しました。後者は症状との関連性が否定できないと判断されたからです。
手術はチューブレトレクタ-直径18mm、長さ60mmと手術顕微鏡を用いて、予定通りに終わりました。
手術時間は1時間15分、出血量は10mlでした。

術後経過は、術前の左下肢の痛みとしびれの改善が見られず、今回の手術はfailed back surgeryの可能性が高いと
判断し、画像の再検討を行ったところ、左L5/S1の椎間孔外に狭窄性病変があり、これが真の原因かと
考えてみましたが、狭窄程度からは、確信には至りませんでした。この所見は前回の手術の時の所見と変化ありませんでした。

患者さんと相談したところ、再手術で良くなる可能性があるのなら、もう一度手術を受けたいとの希望があったので
前回の手術の2週後に、MD法によるL5/S1の外側アプローチでMD法により、椎間孔外側部から椎間孔外に
かけての部位でL5神経根の除圧を行いました。手術所見は、画像所見からの推測を上回るL5神経根の拘扼所見を
認めました。瘢痕組織がL5神経根と強く癒着もしていました。
手術時間は1時間15分、出血量25mlでした。

今度は、下肢の痛みとしびれの軽減が術後直ぐに確認できました。
この患者では、初回手術時には、L5/S1の椎間孔外狭窄が症状に関係しているとは判断しませんでした。
しかし、結果的には、これが症状の真の原因であったことが、再手術によって判明しました。

腰椎変性疾患の手術では、このようなことが起こることがあるので、私は術後1~2週間までには
診断や手術に間違いが無かったかを判断することにしています。、

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先週5月9日に三度目の腰椎手術をおこなった80代女性の経過を報告します。

.13 2014 腰椎椎間孔狭窄 comment(0) trackback(0)
先週、5月9日に三度目の手術をおこなった80代女性の記事を前回書きました。
その患者さんの、経過を紹介します。
今日、病室を訪れると、ベッドに座り、リハビリ・スタッフから、これからのリハビリについての
説明を受けておられました。
調子はどうですかと尋ねると、痛みとしびれが軽くなり、歩きやすくなったと
喜んでくれました。
この言葉を聞きたくで手術をやっているようなものです(笑)。
今回の手術は、画像では確信がもてず、、
今までの手術と現在の症状からは、ここに異常があるはずだ、なければならないとの経験的判断で手術をおこなったので
喜びもひとしおです。
私を信頼して、手術をうけてくれた患者さんに感謝です。
このような貴重な経験が積み重なって、私の大きな財産になっています。
この財産を生きているうちに、皆さんにお返ししたいとの思いです。
医師は信頼してくれる患者さんによって、育てられているのですから、当然だと思います。

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