難病の妻を抱えた中年の男性が腰椎すべり症と狭窄症で最小侵襲の固定術と神経除圧術を受けられた。妻の介護が腰痛や下肢痛のため次第に困難を伴うようになり、手術を受ける決断をされたようだ。術後経過はすこぶる順調で、2週間の入院で症状が消失して退院された。妻の介護を続ける自信が回復し、明るい表情であった。腰の病気はそれを煩う人の生活を否応なく蝕む。健康体でも生活することが大変な世の中なのである。
従来の腰椎疾患に対する治療のあり方は根底から変えなければならない時期に来ている。いつも強調することだが、先ず、薬物やブロック、牽引などの保存治療の考え方はもう古い。先ず、MRIなどを用いて、症状原因の的確な診断を行うこと。次に、診断に基づいて治療計画を立てること。どんな治療法であれ、定期的に治療効果を判定し、漫然と長引かせることはしないこと。ヘルニアや狭窄症、すべり症、腰椎症などは手術で治せる病気である。手遅れの対応はそれ自体が神経後遺症を残すことになる。
手術で神経を障害するのはあってはならないことである。同じく、あってはならないことは、漫然とした保存治療を行い、神経機能の障害を進め、回復不能に追い込むことである。これらは両方とも大きな問題である。これら両方の問題を無くしていくことが、脊椎治療を担う医師に求められている。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。応援クリックお願いいたします。 ↓ ↓

雑誌の立ち読みをしていると、腰痛や腰ヘルニア、狭窄症などの記事がよく目につく。たまに手にとってみる。一般の方々にどんな情報が流されているかに興味があるからです。
ぱらぱらとページをめくっていると、病気の本質論はなく、ただこうしたら良くなる、ああしたら良くなるという表層的な記事が殆どで、思わず苦笑いしてしまう。また、雑誌社の良い収入源になる記事領域であろうと皮肉さえ口をつく。
腰椎の病気の原因、病態、進行度、個々の患者の個体性や特殊性が把握されずに行われる治療は宝クジを引くように不確実なものだ。勿論、宝クジよりも当たる確立は高いわけではある。
どんな腰痛や下肢痛が良くなりにくいか、私はこの課題の解明に長い期間を費やしてきた。患者の症状の推移と神経学的評価、レントゲン撮影やMRI,CTなどの検査所見と手術所見、術後の症状経過などを比較・吟味することで、治りにくい腰痛や下肢痛の正体がわかってきた。
他の医療機関で長期に保存治療を受けても良くならず、悪化さえしている患者が術後良くなるのを見て、どんな患者の腰が良くなりにくいのか、どういう手術をすれば良くなるのかについて多くのヒントが与えられた。
一般的に発症後3ヵ月以上過ぎると保存治療による治癒率は低下していく。たとえ痛みがとれてもしびれが残ることが多くなる。腰ヘルニアも狭窄症もすべり症もどんな症状がなぜ起こり、自然に良くなる場合と良くならない場合とでその違いはどこにあるのか、この病気の本質を踏まえた治療が極めて重要なのである。私はこのことは繰り返しブログで述べてきた。
慢性化する腰痛や下肢痛は腰椎の変形を引き起こす。それは腰椎の後彎変形であったり、側弯変形であったりする。この腰椎の変形が次の腰椎の新たな問題を引き起こすことになる。すなわち、悪循環が起こり、腰椎の病気は進行・悪化するわけです。こうして、次第に病気が複雑になり、一筋縄では治せなくなっていくのです。
私は70~80歳代の腰椎手術を多数手掛けてきたが、これらの方々では通常は慢性化し複雑になった腰椎病変と加齢変化とによって、どこを治せば症状の改善につながるのか、その判断さえ困難、あるいは不可能になっているのです。殆どの脊椎外科医はこのような高齢者の腰椎の手術治療には消極的か、あるいは手術適応なしと判断しています。
しかし、私はそうは思いません。患者の症状の発症機転が解明できるなら、手術によって症状の改善を図ることが可能なのです。これら高齢者の腰椎と若い人の腰椎を比較すると、若い人の腰椎の病気は通常は単純なもので、手術治療でよくなるのが当然と言えるのです。だから、慢性化する腰椎病変は若い時期に手術により根治させるべきが私の持論です。
腰の病気の本質への理解が深まれば治って当たり前の時代が到来すると私は確信しています。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。応援クリックお願いいたします。 ↓ ↓

腰ヘルニアや狭窄症などから起こる腰や下肢の痛みにはよく湿布が処方される。患者はそれを痛みの強い部位に貼る。不思議なことに湿布をはると痛みが和らいで感じられる。腰が悪いのに下肢に湿布を貼ってどうして痛みが緩和されるのであろうか。打ち身ならその部位に湿布を貼るのは道理である。腰が原因で下肢に痛みが起こる時、痛みの発信源から遠く離れた下肢の部位に湿布を貼ることによって、どうして痛みが緩和されるのか? 痛みを軽くする痛みの抑制機序について簡単に説明しましょう。腰で神経根がヘルニアなどによって圧迫刺激されると、その神経根に沿って痛みが伝搬し、その神経根の最終的な目的地である皮膚領域に痛みやしびれが発現する。例えば、腰椎4番と5番の間の椎間板ヘルニアが5番の神経根を圧迫刺激すると、臀部から大腿外側部に痛みが伝搬し(所謂、坐骨神経痛と呼ばれるもの)、下腿外側やくるぶし付近に強い痛みが発現する。この痛みの強い下腿外側やくるぶし付近の皮膚に湿布を貼ると、その痛みが軽減される。これは痛みが存在する部位の皮膚の湿布による触覚刺激が脊髄に伝わり、そこで痛みを抑制する神経回路が活性化され、痛みが抑制されるのである。この痛み抑制に関係する脊髄の部位は脊髄の背側面にある後索と呼ばれる部位にある。この部位を電気的に刺激することで頑痛を緩和する治療法が既に行われている。このように腰の疾患では、湿布は痛みの強い部位の皮膚に貼ることによって痛みが緩和されるのである。一方、打撲痛に対する湿布の鎮痛効果は湿布の薬剤が打撲部位の皮膚を浸透して痛みを出している組織に直接に抗炎症作用を働かすことで痛みを軽減する。このように湿布は腰椎疾患では、痛みを根本的に取り除くことには効果は余り期待できないが、痛みの緩和効果を得るための有効な対症治療法である。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。応援クリックお願いいたします。 ↓ ↓
