読者から"診断力"とは具体的にどのようなことかとの問いがありました。
脊椎を専門にする医師ならば、腰椎変性疾患の診断の難しさをよく理解していますが、一般の方々には、なかなか解りにくいことと思います。なぜ、医師によって診断が異なるのか。これは多くの方々が持ち続けてきた疑問であろうと思います。腰椎変性疾患の診断においては、行う検査も医師によって異なります。脊髄造影検査のように、入院が必要な検査を行う医師が多いですが、私は外来検査のみで診断をつけます。
私は、ブログでも既に説明してきましたが、腰椎変性疾患の診断は、症状の聞き取り(問診)と神経機能の検査(神経学的検査)とレントゲン撮影(6方向撮影)、MRI(矢状断、横断、冠状断),CT(横断、矢状断、冠状断)で行います。
その他の検査は、一切、行っていません。
腰椎変性疾患の診断で重要なことは、神経根や馬尾の圧迫による症状であるかの判断ですが、これは腰の姿勢や動きの影響を受けて下肢の症状が増強・軽減されるかで知ることができます。
さらに、しびれなどの感覚障害や筋力低下がどこにあるかを知ることも重要であり、これは神経学的検査で把握できます。
腰椎のすべりや不安定性は、レントゲン撮影の伸展位と屈曲位における椎体間の病的動きで知ることができます。脊柱管狭窄や椎間孔狭窄、椎間孔外狭窄(far-outと呼ばれる部位)はMRIで知ることができ、CTでは、骨の状態や石灰化や骨化などを知ることができまず。椎間板ヘルニアの検出はMRIですべて可能です。
こ れらの情報をもとにして、症状と神経学的所見、画像所見の整合性、一致性を検証します。私の頭の中には、各腰椎変性疾患の基本的なパターンから複雑なパターンに至るまで、様々な病気の形がパターン化して記憶されていますので、
頭の中でそれらを照合する作業を行って、最終診断に至ります。
私は、このようにして診断しますので、1回の受診で診断と治療方針を決めることができます。そのため、遠方からの患者さんも一度の受診で済むので、受け入れることができます。
このブログ相談室でも、相談者の年齢、性、症状などの情報から、原因をかなり絞り込めることができますので、皆さんの相談を受けることができます。
また、術後起こりえる問題の様々なパターンも理解しているつもりですので、術後発生した問題に関する質問にも対応することができます。
しかし、私に見える答えが他の医師にも同様に見えるかというと、必ずしもそうではありません。これは決して自慢するわけではなく、過去3000例を越える腰椎変性疾患の手術治療を通して身についたものがあるからです。一般的には、検査を行い、原因としての疑いを持っても、なかなか確信には至らないという医師が多いのではないかと思います。診断力の差とはこのあたりにあるのではないかと思います。専門家である限り、病気の知識は充分に持ち合わせているからです。
腰椎変性疾患の診断は私ども専門家にとってもなかなか困難を伴うものですので、素人の方々が画像を見て判断することは到底無理なことです。しかし、病気に関する一定の知識を持つことで、自らの病気と治療に向き合うことができると思います。さらに、良くなる可能性をみすみす捨てないで済むと思います。
私は、このブログを通じて、腰椎変性疾患とはどのような病気なのか、その根本にある真理を解明し、伝えていきたいと思います。
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今日は80代の女性の人生3回目の手術を行いました。60代に他院でL4/5の腰椎固定術を受けています。
70代半ばに固定隣接椎間の左L5/S1の椎間孔外の狭窄に対して、
私がMD法で2回目の手術、左L5神経根除圧術を行いました。
症状の原因が他院では不明とされ、私を受診されたのです
。
手術後は、症状が改善して、生活を楽しんでおられました。
その方が、再び、L5神経根領域の痛みが再発し、腰を伸ばして歩けなくなったと、前回手術の5年後に再受診されました
L4/5は固定が完成しており、L5/S1の椎間孔外では前回の手術で左L5神経根が除圧されています。
MRIとCTからは、今回の症状の原因を診断することは極めて困難でした。
それでも、今回の症状の原因はL5/Sの左で前回手術とは異なる部位での椎間孔狭窄が原因と診断し、MD法による再除圧術を行いました。
術後、しびれは改善しており、これで症状の改善が期待できます。
腰椎変性疾患は、その方の人生において、二度でも三度でも、あるいは、それ以上に再発する可能性があります。従って脊椎外科医として大事なことは、再発するたびに、必要があれば、手術を繰り返して、症状を改善させ、患者の生活の質の改善を図ることです。
再手術を嫌う脊椎外科医は少なくありません。
再手術を積極的に受け入れる脊椎外科医がこれからの世の中で、ますます必要になるでしょう。
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私の外来を受診される患者さんがよく質問されることとそれに対する私の回答を紹介します。
Q1:腰椎と腰椎の間の椎間板が狭くなり、骨同士が接近しているために腰痛が出ると言われたのですが、本当ですか?
A1:椎間板腔(椎間板の高さ)が狭くなった状態があるからと言って、腰痛は起こりません。それは加齢変化に過ぎま
せん。もちろん、椎間板腔が狭くなる過程で一時的に腰痛が起こり、それを繰り返すことはあり得ますが、慢性痛になることはありません。
Q2:お尻から太ももに痛みがあり、坐骨神経痛といわれ、ブロックや薬物治療で治ると言われ、治療を続けてきたのです が、一向に痛みが引いていかないのですが、このままの治療を続けていていいのでしょうか?
A2:坐骨神経痛は正確には病名ではなく、必ずその原因があります。原因には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎 症、すべり症、分離症、腫瘍や感染症など種々あります。坐骨神経痛の原因を診断して、その原因に対する治療を行う必要があります。椎間板ヘルニアや腰椎症などでは、身体の治癒力で自然に良くなることが多いので、ブロックや薬りなどの対症治療で治ったと思われる患者さんが多いのですが、対症治療は自然治癒するまでの間の痛み軽減策に過ぎないと理解しておくことが必要です。従って、対症治療を続けていても、改善が進まない患者さんでは、その原因を診断して原因に対する治療が必要です。
Q3:椎間板ヘルニアと診断され、医師から運動が必要といわれ、歩いたり、ストレッチングなどを行っているのですが、痛みは却って悪くなるように思われます。このまま運動を続けなければならないのでしょうか?
A3:椎間板ヘルニアは重症度が患者によって大きく異なります。ヘルニアによって神経根が強く圧迫されるほど、腰痛や下肢の痛みは腰の動きや腰への荷重の影響を強く受けます。痛みが強くなるのは、神経根が機械的な刺激を受け、炎症を強めるためです。従って、痛みの強い時期の運動療法は間違いです。この時期は安静を保ち、消炎鎮痛剤などによる治療が必要です。
Q4:坐骨神経痛が強く、医師から薬を処方してもらっているのですが、一向に効果を感じません。もっと、痛みに効く薬はないのでしょうか?
A4:最近では、トラムセットやリリカなどの鎮痛作用の強い薬や神経障害性の痛みに効果の高い薬が、通常の消炎鎮痛剤
の外に使えるようなり、炎症性の痛みに対する薬物治療の有効性はたいへん高くなりました。しかし、これらの薬剤で痛みがコントロールできるか否かは生活の仕方と大きく関係します。つまり、これらの薬を服用しながら、普通に仕事を続けたり、運動を行っていると、薬の鎮痛作用よりも痛みを誘発する側が優位になりますので、薬で痛みをコントロールできない状態になります。従って、痛みの強い時期には、服薬とともに安静を保つことが必要です。安静を保てないと薬による痛みのコントロールは困難になります。また、薬で痛みが軽減されると、つい動き過ぎてしまうので痛みが再燃するのです。痛みを起こす根本的な原因が良くなるまでは、痛みを起こす局所の安静を保つことが必要なことは腰に限らず大事なことです。運動療法は痛みの急性期の治療法ではなく、痛みの再発予防のために必要なのです。
今回はQ1~Q4までとしますが、このようなQ&Aをこれから連載していきます。もし、一般の方々からみて、これはどうなのかという疑問・質問があればコメントとして寄せていただければ回答していきます。ただし、腰椎変性疾患の治療に対する疑問への答えを発見したいと私のブログを訪れる方々に役立つ内容のものに限定し、選択させていたただきますことを予めお願いしておきます。
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脊椎外科医なら、ヘルニアや狭窄症、すべり症などの腰椎変性疾患は手術で治せる病気であることは理解している。これは当然のことであり、だからこそ脊椎外科を専門にしているのである。一方、治せる病気であるという認識とともに治すことの困難な症例が多いことも経験上知っている。私の所にこられる患者には、他の医療機関で原因不明、治療困難、高齢過ぎる、手術を受けたが好くならないなどの訴えが多い。
原因不明の腰痛、下肢痛の原因は脊柱管内には問題なく、椎間孔内や椎間孔外のヘルニアや狭窄症の方が多い。これらの病変の診断は脊椎専門医においても困難であり、診断の盲点になり続けている。これらの診断にはMRIの横断像と冠状断像が必須である。そして、読影力がなければ診断できないのである。
治療困難と言われる患者には、狭窄症と椎間板ヘルニアが合併していたり、側彎症、すべり症が合併していたりする複雑な病態を示す者が多い。これらも、神経除圧単独やこれに固定術を組み合わせることで治療は可能になる。しかし、これらの複雑な病態を示す患者では、症状の原因が腰椎のどこにあるのかの診断自体がついていないことが多いように思われる。そのため、手術戦略がたてられないのでる。
高齢過ぎるは、大変多い手術拒否理由になっている。手術はまだ早いと言われた患者が、長い保存療法の末に、今度は手術をするには歳を取りすぎたと言われるのである。これでは患者は救われない。低侵襲手術は高齢者の腰椎手術を可能にし、その内容は今までは不可能といわれていた領域にも及ぶようになっている。私の腰椎手術の30数%は70~90歳の年齢世代であり、安全な手術手技が確立されている。
手術を受けたが好くならない理由は、以前にこのブログで紹介済みである。要は、診断の誤りか手術の不完全さが原因である。これらの患者では、適切な再手術で症状の改善をはかれることを私は多くの症例で証明してきた。
腰椎変性疾患の治療法は、実に枚挙にいとまがない程、世間にあふれている。初期の頃は悪さを加えない治療であれば、それなりに効果が現れたように感じられるため、その治療法の信者が増えるようだ。しかし、腰椎変性疾患は悪化、改善を繰り返しながら、加齢と共に悪化するのが特徴である。すなわち、初期には効果を示した治療が次第に効果を失っていくのである。腰痛や坐骨神経痛の初期では、保存治療が効果を示すことがあっても、腰椎変性疾患によって神経障害が進み、下肢の痛みやしびれ、歩行障害が増強した患者では、原因治療、すなわち神経を圧迫・絞扼している腰椎の原因を手術的に取り除き、必要があれば固定術を加えることが必要になる。
腰椎変性疾患は、本質的には外科的疾患である。初期には手術は必要でないが、進行し、生活に支障を来す段階では、早めに根治させることが必要と私は考えている。長く、慢性化させることで、治療はより困難になり、症状の改善率も低下していくからである。
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