腰椎変性疾患の手術失敗患者さんの受診が増えています。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症などの手術を受けたが、症状の改善が得られない、むしろ術後に症状が悪化したという患者さんです。
手術失敗の原因は、神経除圧が不十分か手術によって新たな神経根圧迫(絞扼)が発生したが多いのが実態です。
勿論、いつも書くように診断に誤りがあり、症状とは関係のない部位が手術されてしまった患者さんも少なくありません。
今回は、腰椎分離すべり症で腰椎固定術を受けられたが、術後症状は改善せず、むしろ悪化した患者さんについて紹介します。
この2ヵ月余りの間に二人の患者さんが当院で再手術を受けられました。
一人は70代男性で、約2年前に地元でL5/S1の腰椎分離すべり症に対して腰椎固定術(PLIF+ペディクルスクリュー固定)を受けられましたが、術後は両側L5神経根症状の改善がなく、その後歩行障害が進行しました。検査の結果、スクリュウーの緩みはないが、椎体間固定の骨癒合に失敗しており、狭小化した椎間孔内の外側部でL5神経根の除圧が不十分であることがfailed back の原因と診断いたしました。この患者さんでは、固定具はそのまま残して、MD法により両側の外側からL5神経根の再除圧を行いました。手術所見では、予想通り、L5神経根は椎間孔内で強く絞扼されており、周囲との強い癒着を認めました。この患者さんでは、術後の経過は順調であり、L5神経根症は両側ともほぼ解消して、歩行障害の改善も良好です。足の筋力低下も正常化し、知覚障害はみとめません。術後2年余り経過していましたが、幸い、神経根障害が回復性を残していたため良好な結果を生みました。
もう一人は40代女性ですが、同じくL5/S1の腰椎分離すべり症で、約8ヵ月前に腰椎固定術を受けられました。術後に左足の麻痺と痛みが発生し、歩行障害も高度になった患者さんです。PLIFとペディクルスクリューの状態には問題はなく、椎体間の骨性癒合は完成していました。しかし、神経障害性の坐骨神経痛と下肢痛を呈していました。この患者さんも、椎間孔の外側部の除圧が不十分と判断して、MD法により外側アプローチでL5神経根の除圧術を行いました。手術所見は、椎間孔の外側部でL5神経根の強い絞扼と癒着を認めました。術後、足の麻痺は回復し、術前は50mの歩行が限界でしたが、術後は痛みの少ない時には500m歩行できるようになりました。神経障害性の痛みは術前よりも改善しており、今後も改善が進むと予想しています。
二人の患者さんの違いは、神経根障害の程度の違いにあります。前者では障害は軽かったことで、術後の回復が良好でした。しかし、後者では神経障害が強かったために再手術後も神経障害性の痛みは改善傾向にありますが、持続しています。
この二人の患者さんの経験からも、術後に神経症状の改善しない、あるいは悪化した場合には、その原因を正確に診断し、
再手術でよくなる可能性がないかを検討することが重要です。そのことができる医師を求めてください。
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腰椎手術の失敗のいいわけに多用される言葉として、「脳が痛みを記憶してしまったため」があります。
私が病気から復帰して間もないというのに、この言葉の犠牲にされた患者さんが数名、受診されており、中には既に再手術で
痛みが改善した患者さんもおられます。その他の方々も手術予定になっています。
これらの患者さんには、腰椎にれっきとした病気があり、これが診断されていなかったり、見当違いな手術が行われたりしているのが殆どでした。
「脳が痛みを覚えたために」が適用される患者さんはあっても希でしょう。このように言われる患者さんが多発するのは医療の質の問題と言わざるを得ません。診断力と技術力の不足です。
手術後にこのような説明が行われても、まずは信じることなく、真の原因を求めることです。
必用があれば、私が力になりましょう。ご相談ください。
腰椎疾患の治療の難しさは、先ず、その原因診断の難しさにあることは、このブログでも繰り返し述べてきたことです。診断が正しくないと、いかに優れた技術を持った医師による手術を受けても、患者さんの症状の改善は得られません。
最近、右腰椎5番の神経根症状の患者さんが他県で、腰椎3番から5番までの固定術を含め2度までの手術を受けられたが、症状の改善がないと受診されました。腰椎固定は完成しており、固定術としては成功しているかに見えます。では、なぜ患者さんの下肢の症状は改善しなかったのか。
その原因を調べて解ったことは、腰椎5番の神経根の症状は腰椎5番と仙椎1番(L5/S1)の椎間孔狭窄により発生していたのです。
この患者さんでは、固定金属はそのままにして、右のL5/S1の椎間孔拡大術を小切開によるMD法で行いました。術中所見として、L5神経根は椎間孔内で強く拘扼されていました。周囲との癒着も強く認めました。神経根の動きが得られるまで充分に剥離・除圧しました。
術後、患者さんの下肢の症状は改善に向かい、歩行はしやすくなっています。しびれの解消には時間が必要と思います。
この患者さんでは、症状の原因がL3~L5の脊柱管内にあると疑われ、最初の除圧術で症状の改善が得られなかったため、固定術が追加されたようです。しかし、それにも関わらず症状の改善は得られなかったのです。
その原因はL5/S1の椎間孔にあったからです。すなわち、二度にわたる手術は患者の症状とは直接関係ない部位で行われていたのです。
このような手術技術自体はよくても、結果の悪い手術になることは少なくありません。特に、腰椎において多く見られます。
このような不幸な結果が起こるのは、腰椎疾患の原因診断がいかに困難であるかに基づいているのです。
手術の成功=症状の改善では必ずしもないことが腰椎変性疾患の特徴にさえなっているのが現状です。
正確な原因診断、これが手術成功への第1歩であることも繰り返し述べてきました。
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最近、私が行う腰椎手術の多くは再手術です。自分が執刀した手術の再手術も僅かにありますが、大部分は他院で行われた手術の再手術です。すなわち、failed back surgery(失敗腰椎手術)に対する再手術が増えています。
日頃、私がブログで腰ヘルニアや狭窄症、すべり症は治せる病気と強調しているせいもあってのことと思われますが、受けた手術に泣く患者さんは全国にどれほどいるのかと複雑な思いになります。
私はfailed back surgeryに悩み、苦しむ患者さんを一人でも救いたいとの思いで、再手術を受け入れています。多くの患者さんは症状の改善を得て、生活復帰を果たしています。しかし、神経障害が進んだ患者さんでは、全体的には改善しても神経障害性の痛みやしびれが残ることがあり残念に思います。
これからもfailed back surgeryの患者さんの原因診断や再手術を受け入れていきますので、まずはブログ相談室をお気軽にお訪ねください。
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NPO法人日本医師事務作業補助研究会は実務者と配置管理者のために質の高いセミナーを企画しています。今回は「多職種協働における医師事務作業補助者の役割」がテーマです。参加者の皆さんに満足していただける企画・内容になっています。多くの配置管理者や実務者の参加をお待ちしています。 NPO法人日本医師事務作業補助研究会主催の「配置管理者セミナー in 札幌」のご案内
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9月5日のブログでfailed back surgery(失敗した腰椎手術)について、最近、私が経験した椎間孔内外狭窄の患者を紹介しました。その患者は再手術後5日目で、まだ下肢に痛み・しびれは残るものの、再手術前よりも軽減しており、何よりも歩行状態が改善している。再手術前は歩行器につかまり、腰を前に曲げてやっと歩いている状態であった。さらに、当然のことながら、歩行中の表情は暗かった。しかし、今回、再手術後はまだ下肢に痛みやしびれは残るものの、改善が進んでいることを実感しているため、患者の表情は明るい。さらに、傍目にはまだ歩きにくさを感じさせるが、歩行器も不要になり、笑顔で病棟を歩いている。こうなると、後は時間が薬で、時間と共に改善していく。
手術によって、神経の圧迫が取れ、姿勢や動きの影響を神経が受けなくなると、姿勢・動作や歩行で増強していた腰や下肢の痛みやしびれは速やかに消失していく。勿論、神経に加わってしまった障害による持続的な痛みやしびれが改善するのにはそれなりの時間が必要になる。
椎間板ヘルニアであれ、脊柱管狭窄症であれ、すべり症であれ、病気の種類にかかわらず、患者は術後すぐに手術の効果を実感できるものだ。私は、術後、患者の言葉から手術が成功か否かを判定している。通常、この判定は術後2、3日で可能と考えている。もし、術後すぐに症状の改善徴候が見られない場合には、私は術後2週間までには再手術が必要かの検討を行い、再手術が必要な患者では、できるだけ早く再手術を行う事にしている。それが、failed back surgeryを出さないための私の方針だ。
今回の患者は初回手術から約50日過ぎて、再手術を行った。初回に椎間孔外から神経の除圧は十分にできたと判断していたことが誤りであった。患者は術後、一貫して症状の改善はないこと、姿勢によって痛みが増強することを実感していたのだ。手術治療の困難な患者ではあったが、もっと早くに不完全手術であったことに気づき、再手術を行うべきであったと反省させられる。
手術を行ったが、手術が結果を出せずに失敗に終わったなら、手術を失敗のまま終わらせるのでなく、見落としがなかったか、手術が不完全でなかったか、再手術でよくできないか、慎重にしつこく検討すべきことを強調したい。
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