過去に当院で腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症のMD手術を二度受けられた患者さんが三度目の再発で受診されました。
今回は前回の腰部脊柱管狭窄症と同じレベルのL4/5でしたが、部位は異なり、椎間孔狭窄症でした。
椎間孔狭窄症はL4/5では、L4神経根が圧迫・刺激され、腰痛や殿部、下肢の痛みの強いのが特徴です。
患者さんに手術を勧めたところ、「これが最後の手術です」と意味深の言葉が返ってきました。
私は、それ以上突っ込みませんでした。恐らく、家族に負担をかけるのはこれを最後にしたいと言っているように聞こえたからです。
高齢者は手術を受けるにも、周囲に遠慮があるのを多く見てきました。
痛みは年齢に関係なく辛いはずです。高齢になると、それさえ我慢して死を迎えなければならないとすると、腰を悪くした高齢者にとって、長生きは辛い苦しいものにしかならないでしょう。そして、気兼ねしながら生きる晩年は気の毒としか言いようがありません。
この患者さんは、三度目のMD手術(神経根の除圧術のみ)を受けられ、痛みのない生活を取り戻しました。そして、歩くこともできるようになりました。笑顔も勿論戻りました。
この患者さんに、もし四度目があったなら、私は迷うことなく手術を勧めるでしょう。なぜなら、腰椎手術は生活の質を取り戻す手術ー生き甲斐を取り戻す手術と私は考えるからです。
私は腰椎変性疾患に悩む方々には年齢を問わず、治すことに前向きになりましょうと背を押します。諦めるのは最後の最後にしましょうと。
手術前日に患者さんと話をすると、多くの患者さんから手術はこわいという声よりも、手術日が待ち度しかった
という声が聞かれます。手術が待ち遠しかったと聞いて、私は多少の違和感を覚えたことがあります。
しかし、現在は患者さんの良くなることへの期待感と安心感の現れと理解しています。こわいはずの手術がこわさよりも良くなることへの期待感と安心感に満ちた手術に変わったのです。私が「脊椎外科医の戦場」で求めてきた理想の手術の姿がここにあります。MD手術を受けられた大勢の患者さんの口から口へと広がった良くなる手術、安全な手術、痛みの少ない手術として
MD法 (⇒ MD法とは) が広く受け止められるようになりました。この理想の手術を広めることが私の強い思いです。そのためにも一般の方々に腰椎変性疾患の特徴と
MD法を知っていただきたいと思い、この度
「腰椎手術はこわくない」 を執筆しました。
こわい手術といわれてきた腰椎手術のイメージチェンジの必要な時代が来ました。こわさのために良くなる可能性を捨てる時代はもう終わりにしなくてはなりません。そのために拙書が役立つことを強く願っています。
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今日は2件の腰椎手術がありました。1人は70代男性で5~10mの歩行で間欠性跛行が出現する患者さんで、L4/5とL3/4に腰部脊柱管狭窄症を認めました。L2/3とL1/2にも狭窄性変化を認めましたが、症状の原因はL4/5とL3/4と判断し、
MD法による神経除圧を行いました。L4/5とL3/4にそれぞれ18mmの皮膚切開で行う方法です。術後、下肢の症状の改善が得られています。
もう1人は、10年前に他院で腰部脊柱管狭窄症の手術を受けられた70代後半の女性ですが、両側の下肢に痛みとしびれ、間欠性跛行が出現するようになったと受診されました。MRIでは、L4/5とL3/4で過去に除圧術が行われていますが、症状に関係しそうな病的所見は認めませんでした。しかし、L4/5に軽いすべり症と不安定性があり、同じレベルの両側の椎間孔狭窄を認めました。不安定性を伴うすべり症があるため、最小侵襲法で、L4/5の両側の椎間孔を解放し、L4神経根を除圧しました。椎間孔内は瘢痕性組織で埋め尽くされていました。これらの瘢痕組織を除去し、神経根を脊柱管内から椎間孔外へと除圧しました。さらに、両側でペディクルスクリュー固定と椎体間固定TLIFを行いました。これで、症状が改善してくれると期待されます。
明日は、50代男性のL4/5とL3/4の腰部脊柱管狭窄症のMD手術があります。一日の終わりは、くたくた状態ですが、翌日の朝、患者さんを見ると元気と勇気が湧きます。
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本院の広報誌「ふれあい」秋季号VOL.52の患者さんコーナーに掲載された患者さんの声を紹介します。患者さんは私と同じ脳神経外科医です。熟慮した末に私のMD手術を選択していただき、大変光栄に思うとともに医師が患者になった時にどのように治療法を選択するのか、一つの参考として紹介させていただきます。
拝復 金沢脳神経外科病院の皆様に改めてお礼申し上げます。
そして、主治医であり術者であらせられる佐藤秀次院長先生には、御礼とともに、今まったくdeficitなく日常生活・スポーツ・仕事において、発病前に変わらないパフォーマンスを発揮できていると、すなわち術後4年のoutcomeはexcellentであることを、ご報告申し上げておきたいと思います。
わたくしも4年前の夏、この「患者さんコーナー」に書かれている皆様と同様に、腰痛と間欠性跛行(ある期間歩いていると徐々に歩行が苦しく痛くなって歩けなくなる。休むと再び可能となるという腰椎脊柱管狭窄症の症状)に苦しみ、この金沢脳神経外科病院を訪れたのでした。そして佐藤院長先生による手術を受け、今こうして元気に以前にもまして活躍?していられるという現実をみるとき、あの『金沢への手術の旅』は夢ではなかったのだと思うこのごろです。と言いますのは、わたくしは当時(そして幸運にも現在も)脳神経外科の医師(つまりはばかりながら佐藤院長先生と同じです)で神奈川県の病院に勤務している身でありました。よって症状・画像を自ら解析し、診断は腰部脊柱管狭窄症と自身及び同僚によってつけたのでした。
あとは治療です。手術か否か?手術ならどの術式?で誰にやってもらうか?
もっともdecisiveかつ微妙な問題です。しかしこの微妙かつ決定的な問題は、特段の時間を要することなくいわば瞬間的に決まりました。すなわちその少し前に、偶然に新たに買った脊椎の手術書『脳神経外科医のための脊椎手術(必須手技と合併症回避のコツ)』(メジカルビュー社)その教科書の佐藤秀次院長の記述された『腰椎椎間板ヘルニア摘出術』(p149~p157)の数葉が、これだ、この先生にこの術式でと僕を一気に取り込んだのでした。あまたの碩学がさまざまに記載されている手術式の森の中からこの1本の樹木を選んだのは、それは今思えば天啓であり、雷撃でありました。
いかに唐突であったか。金沢脳神経外科とわたくしが言うと、みんな金沢八景(横浜近くの観光スポット)にそういう病院ありましたかという反応をすることからお分かりと思います。
あとは一潟千里『金沢への手術の旅』。写真と教科書から想像したとおりの佐藤院長の口跡と外科医らしいその表情、そして麻酔科の先生がまず僕に大安心を与えてくれました(わたくしは、はじめて麻酔をかけられる側に回った)
そして術後佐藤院長先生には『患者でありつつ研修医である』という特別の接遇をいただきました。楽しかったです。
入院生活はあっという間に過ぎ、このごろでは、ほんとうにあれは夢ではなかったのかとふと思うことがあります。(もちろん麻酔はきれいに醒めています)。
今日、こうして元気に働きながら、もう腰のことを気にすることがないので忘れてしまっていることもある(なんという幸せ)、あらためてあの教科書との、すなわち佐藤秀次院長先生との、そして金沢脳神経外科病院の皆様との出会いに、深謝申し上げるとともに貴院のさらなる発展を祈念する次第でございます。(横浜市)
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私が考える最小侵襲手術の条件は
1)組織破壊が少ないこと:すなわち、皮膚切開は小さく、筋肉などの軟部組織傷害も少ない。その結果、術後の痛みが軽く済むため、鎮痛剤の必要性は著しく減少します。痛みが軽いことから、翌日の離床と早期退院が可能になります。
2)手術時間が短いこと:その結果、麻酔時間が短縮されるとともに呼吸器合併症や深部静脈血栓症などの合併症が防止できます。勿論、それなりの防止策を併せて講じる必要はあります。
3)出血量が少ないこと:それによって、術中の補液量は少なく済み、輸血は不要のため、心血管系への負担が少なく、心臓合併症が防止できます。
以上の三つの条件がそろうことによって、手術は3000例を超えますが感染症や心臓・呼吸器合併症などは殆ど皆無です。このような最小侵襲手術だからこそ、80代、90代の超高齢者の腰椎手術が安全になるのです。
高齢者の腰椎手術は合併症が起こりやすく、入院中の認知症の悪化も問題になるところです。その点、最小侵襲手術は早期離床と退院ができますので、認知症の悪化を防止することもできます。
MD法は全てのタイプの椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対応できる手術です。しかし、技術習得には長い時間が必要であり、国内ではまだまだ普及していないのが現状です。私はMD法を習得することを望む脊椎外科医に対する支援を色々な形で行っていきたいと考えています。