相談室に寄せられる相談には、腰椎椎間板ヘルニア再発に対する治療法があります。腰椎ヘルニア再発の治療については、このブログで以前にも取り上げたことがありますが、最近、3度目の再発ヘルニアの40代男性のMD手術を経験したので紹介がてら説明します。
再発ヘルニアの手術は、初回手術よりも遙かに困難な手術になります。前回の手術によって露出された硬膜や神経根は瘢痕性組織と強く癒着しており、これを剥離してヘルニアを摘出しなければならないからです。リスクの高い手術になるため、再発ヘルニアには手を出さない、つまり手術は行わないという選択を行う医師が少なくありません。そのような医師は保存治療を行うわけですが、通常はなかなか痛みがコントロールできず、患者の生活に支障をきたします。
それでは、手術治療を選ぶ医師はどんな方法をとるのでしょうか。再発ヘルニアに多く行われる手術には腰椎固定術があります。これは腰椎の動きを止めて痛みを解消する手術です。腰椎の動きがなくなると、神経根の刺激が起こらなくなるため、痛みはやがて消失しますが、ヘルニアに神経根が圧迫されたまま固定されることが多いため、しびれや麻痺などの後遺症状が残る傾向があります。また、固定術自体が腰痛を残すこともあるので、手術に対する患者の満足度は必ずしも高くないという欠点があります。
そこで、私は再発ヘルニアの手術もすべてMD法により、ヘルニアの摘出と神経根の除圧を行っています。顕微鏡手術は熟練すると再発例でも安全にヘルニアの摘出ができます。今回、他院で初回手術、3年後の再発は当院でMD手術、そして4年後にあたる3度目のヘルニア再発手術を再びMD法で行いました。瘢痕組織の中から、ヘルニアを摘出し、神経根を除圧し、術後、激痛は消失し、しびれも解消しました。
私は、腰椎ヘルニア再発例では、再発ヘルニアの摘出術で対応することが患者のために理想と考えています。そのためには、再発ヘルニアに対する攻略法を熟知・習得することが必用です。
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腰椎椎間板ヘルニアの二度目の再発の患者さんのMD手術を行いました。他院では固定術が必要といわれていましたが、固定術を避けたいとの思いから私を受診されました。今回は2度目の再発ですが、今までには1度目の再発ヘルニアで固定術を勧められたと私を受診された患者さんも少なくない数おられます。
私はこのブログで繰り返してきましたが、腰椎椎間板ヘルニアの再発や再々発例でも、MD法による小切開手術でヘルニアを摘出できます。基本的に固定術は不要です。もし、腰椎不安定性や辷り症が椎間板ヘルニア再発の元にある場合には固定術が必要になる場合がありますが、通常はヘルニア摘出で症状は良くなるのです。
しかし、再発手術は技術的に困難な面がありますので、相当数を手がけている術者でなければ高い確率で治すことはできません。ヘルニアの初回手術と再発手術とでは、まったく異なった手術なのです。
再発ヘルニアに腰椎固定を行うにしても、神経根の除圧が的確になされていないと、しびれや麻痺などの神経根機能の改善が不良になります。神経根を骨の中で生き埋め状態のまま固定を行うと、痛みはやがて消失しますが、知覚や運動機能などの改善が不良のままに終わる事になり得ます。従って、固定術を行うにしても神経根除圧をきちっと行うことが重要と私は考えています。
NPO法人日本医師事務作業補助研究会主催の第3回全国大会「テーマは医師事務作業補助者の役割の追求」のご案内
日時: 2013年6月29日(土) 10:00~17:00
場所: 石川県音楽堂 NPO法人日本医師事務作業補助研究会HP
患者は40代女性。
初回ヘルニア摘出術後約3ヵ月でヘルニアが再発した。初回ヘルニアよりも大きく、神経根の圧迫も強い。保存治療で自然治癒を期待するか、再手術を行い早期治癒へ向けるか。
私は再発例では、早期手術を原則にしており、この患者でも日程を調整して出来るだけ早い再手術を行った。
初回術前MRI矢状断像:左L5/S1に矢印で示すヘルニアを認める。

初回術前MRI横断像: ヘルニアは小さいが神経根を直撃している。

初回術後MRI 矢状断像:ヘルニアは摘出され、

初回術後MRI 横断像 :S1神経根がきれいに描出されている。

退院後、再び左下肢痛が発現し、歩行にも困難ありと再受診される。
再発術前MRI 矢状断像:前回の部位に大きなヘルニアの再発を認める

再発術前MRI 横断像

手術は、前回の17mmの切開創を開き、MD法で再発ヘルニアの摘出と椎間板摘出を行った。ヘルニアはS1神経根と
硬膜管に割り込み後方へ大きく脱出し、ヘルニアと硬膜・神経根の間には強い癒着を認め、瘢痕性組織も形成されていた。一口で表現するなら、S1神経根はヘルニアと瘢痕組織の中に埋まっていた。このS1神経根への圧迫影響を除去することが手術の目的である。ヘルニアを摘出しても、S1神経根の圧迫・拘扼が完全に除去されなければ、患者の症状はすっきりと良くならないのである。
手術時間は1時間10分、出血量は10mlであった。
再発術後MRI 矢状断像:ヘルニア摘出部位に小血腫を認めるが、やがて吸収消失する

再発術後MRI 横断像

術後すぐに下肢痛は消失し、術後10日で退院した。初回術後から残っていた足の小指しびれは認めるが、再発による新たな障害は残らなかった。術後、鎮痛剤は不要になった。
手術所見は既に神経根の周囲に癒着は強く、ヘルニア摘出に困難を伴ったが、再発ヘルニアはほぼ全摘出できた。術後経過は順調であり、再手術は成功と判定できる。
私ども外科医の手術は結果がすべてである。術後患者の症状が改善し、患者の満足を伴う治療結果がなければ、手術は成功したとはいえない。外科医が頭で考えた通り、予定通りに手術ができたとしても、結果がそれに伴なわなければ、手術は成功したとはいえないというのが私の見解である。
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患者から見ると初回手術も再手術も違いがないと受け取られているようですが、医師から見ると天と地までとは言いませんが、相当に異なるものなのです。
何が異なるのかというと、初回手術には見られない瘢痕性組織による強い癒着が再手術例にはあります。椎間板ヘルニアの再手術は、瘢痕組織に埋まった状態になっている神経根の下からヘルニアを摘出しなければならないのです。この手術操作は相当に経験を積んだ脊椎外科医でなければ、再発ヘルニアを安全に摘出し、神経根の影響を確実に取り除くことはできません。再発ヘルニアの手術を熟知していなければ、ヘルニアの摘出が不完全に終わったり、手術操作中に神経根を傷めてしまったりが起こり得るのです。
そのような理由から、医師はヘルニアの再発手術を躊躇したり、逃げ腰になったりします。また、昔から危険を伴う再発ヘルニアの摘出を行わずに、腰椎固定術を行って根性痛の軽減を図ろうとすることが行われてきました。現在でも、再発ヘルニアに固定術が多く行われているのはそのためです。
まだまだ再発手術に対しておよび腰の脊椎外科医が多いのが実情です。特に、他の医師が手術した腰椎の再手術にはできるだけ関わりたくないというのが医師の本音です。
患者はそのことを知らないため、初回手術結果に満足できない場合、他の医師への鞍替えを希望するが、鞍替えは多くの場合はうまくいかないことになるのです。露骨であるか、口巧みであるかは別にして、拒否されることが普通なのです。
退行変性による腰椎疾患は再発があることを前提にして、そこまで責任を持って診てくれる医師を選ぶことが必要です。
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平成14年11月から平成21年12月までの7年1ヵ月間にMD法により、私が手術した818例の腰椎椎間板ヘルニアの内、再発手術例は23例(再発手術率:2.8%)であった。さらに、他の医師が初回手術を行い、私が再発例の手術を行ったのは28例であり、再発椎間板ヘルニアのMD手術は合計51例であった。その手術成績を紹介しましょう。
これは平成22年6月に名古屋国際会議場で開催された第25回日本脊髄外科学科で報告したものです。
患者の年齢:24-77歳(平均47歳)、男37例、女 14例
再発部位: L5/S1;27例、L4/5;23例、L2/3;1例
後外側型;47例、外側型;3例、超外側型;1例
私が初回手術を行った23例における初回手術から再発手術までの期間:
1ヵ月以内: 1例
1-3ヵ月: 2例
3-6ヵ月: 3例
6-12ヵ月: 5例
12ヵ月以上: 12例
初回手術後6ヵ月以内の再発:26%
初回手術後1年以内の再発:48%
初回手術後1年以後: 26%
ヘルニアの処理法
ヘルニア摘出+椎間板摘出:39例
ヘルニア摘出のみ: 5例
神経根除圧のみ 5例
腰椎不安定性を伴う再発では、ヘルニア摘出+腰椎固定術:2例
手術成績
Excellent 12例
Good 35例
Excellent+Good:92%
Fair 4例
Unchanged 0例
Worse 0例
合併症
軽い髄液の漏れ 2例(フィブリン糊で処理できた)
感染症 0例
神経損傷 0例
手術時間:35分-90分(平均:54分)
出血量:30ml以下(平均7ml)
私自身の腰椎椎間板ヘルニアの再発手術率は2.8%であった。
再発例も初回例同様にMD法によりヘルニア摘出あるいは神経根除圧によって症状の改善を図ることができた。
腰椎不安定性があり、ヘルニアの再発した患者では、腰椎固定術を行った。
再発した腰椎椎間板ヘルニアの手術は安全性には問題は見られなかった。
結論としまして、再発椎間板ヘルニアの手術は初回手術よりも技術的に困難を伴いますが、熟練した脊椎外科医が行うなら、初回手術と遜色ない手術結果を出すことが可能です。再発椎間板ヘルニアの手術リスクを強調し、効果のない保存療法を漫然と続けたり、固定手術に依存することは回避されるべきです。脊椎外科医は再発椎間板ヘルニアの摘出術の技術を習得することが今後、強く求められていきましょう。
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