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私が求める腰椎変性疾患の手術治療とは!

.03 2015 腰椎最小侵襲手術 comment(17) trackback(0)
「腰を手術したのだから、腰に痛みが残っても当然」という医師の割り切りが患者さんを苦しめてきました。
特に、従来の腰椎固定術は大きな切開と筋肉の剥離操作を伴うため、術後に腰痛を残すことが少なくありませんでした。

「手術で歩ける生活を取り戻すのだから、痛みが後に残ってもその代償としてしかたがない」
術前にそのような説明を行う医師は良心的です。なぜなら、患者さんは手術を受けるかどうか判断する機会を与えられるからです。
しかし、術前にそのような説明がないため、心の準備のないまま手術を受け、術後長く痛みとつきあわなければならなくなった患者さんは気の毒としかいいようがありませんし、そのような手術を行う医師は無責任と思います。

「切ったのだから、痛みが残るのは当然」という医師の常識は患者の常識ではないのです。
私は、手術が患者さんに痛みなどの肉体的苦痛を残すことはなんとしても避けたいと考えるようになりました。それがMD法の採用とその適応拡大につながりました。最初は椎間板ヘルニアで始め、次に脊柱管狭窄症と変形性腰椎症、その後、すべり症、分離症、側彎症の除圧・固定術へと適応を広げていきました。今では、すべての腰椎変性疾患にたいしてMD法の応用手術をおこなっています。

私と同様の手術を保険のきかない実費手術としている医療機関がありますが、私は保険適用手術としています。「経済力による医療の格差はあってはならない」との医療人としての私の信念からです。現在の診療報酬制度では計ることのできない最新の高度医療技術であっても、人道的な立場から、自由診療にして格差をつけるべきでないと私は考えます。

手術法の改良を続けてきた結果、今では手術自体が患者さんに痛みを残すことはなくなったといっても過言ではありません。
「症状を良くするが、手術による痛みは残さない」が私の脊椎外科医としてのポリシーです。
患者さんの痛みをとり、歩けるようにし、生活の質を取り戻すことが手術治療の目的です。ゆえに、手術によって患者さんの生活の質を落とすことがあってはならないのです。
そのような考えが全国に普及することを願ってやみません。

今日の診療日誌

.04 2012 腰椎最小侵襲手術 comment(0) trackback(0)
今日は午前1件、午後1件と2件の腰椎手術があった。
午前の手術は50代後半男性で、右L4/5の椎間板ヘルニアである。大きなヘルニアがL5神経根を強く圧迫しているため、右足の背屈がかろうじて出来る程度で、母趾の伸展は殆どできない状態であった。L5神経根の麻痺が進み、激痛は無くなり、しびれも軽いが、歩行が出来ず、車椅子移動であった。

17mmの皮膚切開によるMD法によりヘルニアを摘出した。L5神経根はヘルニアと骨の間で潰されていた。ヘルニアを摘出すると、神経根の太さが元の状態に戻った。神経根を先に除圧して、無理なく動く状態にしてから、ヘルニアを摘出しなければならなかったため、手術時間はいつもよりも長く1時間14分かかり、出血量は10mlであった。神経根が強く圧迫されている状態で、無理にヘルニア摘出を行うと手術操作で神経根を傷め、術後に症状が悪化する危険があるのでこのような除圧操作を私は先行させる。そうすることで、手術操作で症状の悪化する患者は殆ど皆無と言ってよい。

麻酔から覚醒すると、足関節の背屈は良くなっていたが、母趾の伸展不良は変わない。しかし、3ヵ月もすると足関節の麻痺はかなり改善し、歩行には差し支えない状態になると
期待できる。

午後の2件目の手術は、70代の女性で、L4/5の腰椎変性すべり症と脊柱管狭窄があり、腰痛、右下肢の痛みと足関節の背屈力の低下を認めた。まだ、歩行には大きな支障はなかったが、今後、症状が悪化する危険性が高いため、患者の希望もあり、固定手術をおこなった。
手術は最小侵襲固定術で、腰の真ん中に18mmの切開で両側L5神経根と馬尾の除圧を行い、左右に40mmの切開でL4/5の椎体間固定とペディクルスクリュー固定を行った。手術時間は4時間10分、出血量は130mlであった。麻酔から覚醒すると、術前の右下肢の痛みやしびれは良く改善していた。創部の痛みも苦になるほどではないとのことであった。
明日から、歩行開始できるであろう。


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腰椎手術の可能性は超高齢者へと向かう:80歳女性の腰椎固定術を可能にした最小侵襲手術

.27 2012 腰椎最小侵襲手術 comment(0) trackback(0)
80歳女性の腰椎固定術が無事成功した。
2年前から腰痛と左下肢の痛みとしびれがあり、次第に悪化を示した。立位保持や歩行が困難が進んできた。右足にもしびれが発現するようになった。

神経機能では、左側に強い足関節の背屈力低下があり、L5神経根領域に知覚障害を認めた。
腰椎レントゲン撮影では、高度の腰椎症性側彎症があり、L4腰椎の回旋も認めた。
腰椎MRIでは、L4/5の左の椎間孔狭窄と両側L5/S1の椎間孔狭窄を認めた。脊柱管内には狭窄病変は認めなかった。

このまま歩けなくなることへの患者・家族の不安と持続する痛みを軽減するため手術治療を決定した。

手術は圧迫を受けている神経根の除圧のため左L4/5と両側L5/S1で椎間孔解放を行い、L4~S1の両側でペディクルスクリュー固定を行った。手術顕微鏡とチューブレトレクター(直径18mm)、O-ARM、ナビゲーションシステムを用いた。皮膚切開は左右に5cm。手術時間は2時間50分、出血量は55mlであった。

患者は翌日からトイレ歩行を開始した。創部痛はあるが、術前の下肢の痛みは消失していた。神経の圧迫が取れたことで、下肢の痛みは速やかに消失した。創部痛も鎮痛剤でコントロール可能である。

側彎変形が進み、椎間孔がつぶれ、その中を通る神経根が圧迫されている患者は、強い腰痛や下肢の痛みを持ち続け、立つことにも困難が増し、歩行障害も進む。

従来では、このような患者への手術治療は殆ど行われる事はなかった。患者は効果のない薬物治療を続けながら、症状に耐え、悪くなっていくしかなかった。

私が進めるこのような高齢者の腰椎疾患を直すための手術治療は着実にその成果を上げている。
その最大の要因は、最小侵襲手術の導入と改良によって小切開、小出血、手術時間の短縮、少ない痛み、早期離床などが可能になったことである。

私は今までの手術法では限界のあった高齢者・超高齢者の腰椎疾患に対する手術治療を確立することが私に与えられたミッションと考えている。

来週には91歳の腰部脊柱管狭窄症と椎間孔狭窄症を合併した患者の手術を控えている。91歳と言っても頭脳は若々しく、肉体年齢は70代後半と言っても良いくらいの方である。効果を示さない保存治療はその患者を生殺しにしてしまうであろう。なぜなら、痛みで動けなくなり、気力が落ち、肉体と頭脳の衰えが加速するからである。

生きている限り、痛みのない、自分の足で動ける状態を維持することは、誰もが望むことである。従来の腰椎治療学では、それを叶えることは不可能である。
新しい腰椎疾患の治療学の確立こそが超高齢化社会を迎える本邦において必要である。

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腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症の手術成績の良否は術前の神経障害の程度と強く関係する!

.16 2012 腰椎最小侵襲手術 comment(0) trackback(0)
腰椎ヘルニアも狭窄症もすべり症も腰椎の骨の中を通る神経を圧迫して腰痛や下肢痛、しびれ、歩行障害などを出す。神経の快復力がよければ、術後、下肢に痛みやしびれを残さずに治る。しかし、神経の障害が進んだ患者では、手術で神経の圧迫が除去され、症状が改善しても痛み・しびれが後遺症として下肢に残ることになる。従来は、保存療法が効果を失い、神経障害が進んでから手術を受ける患者が多かったため、術後症状の回復の不良な患者が多かった。むろん、診断・手術が適切であるという前提での話であるが。
 私は、神経の除圧と骨の固定をいかに組み合わせるかが、ヘルニアや狭窄症、すべり症の手術で重要であることを強調してきた。ヘルニアや狭窄症では、原則、神経除圧のみ。すべり症では除圧と固定。これらが基本である。側彎変形など複雑な腰椎になった患者でも基本は同じである。この基本手技をできるだけ最小の侵襲で行うようにした手術が最小侵襲手術である。今、殆どの腰椎手術を私は最小侵襲で行っている。
 繰り返し強調するが、術前に神経障害の軽い患者では術後に後遺症は残らない。一方、神経障害の進行した患者では、歩行障害は改善し、下肢の痛みやしびれも軽減するが、後遺症として残存することが少なくない。
 私の経験が示すことは、保存治療で症状の改善が遅れるなら、神経機能障害が進む恐れが高いため、手術治療の適応を脊椎外科医に相談することである。手術治療を多数手がけている脊椎外科医は保存治療の限界を知り、手術タイミングの重要性を熟知しているはずであるからだ。

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脊椎の最小侵襲手術は「愛よりいでた手術」

.30 2011 腰椎最小侵襲手術 comment(0) trackback(0)
私は脊椎の最小侵襲手術(可能な限り正常組織を傷めずに、病気を治す手術)に長く取り組んできた。脊髄腫瘍も含め、椎間板ヘルニア、狭窄症、すべり症などの手術は全て最小侵襲手術を行っている。腰椎のみならず、頸椎、胸椎でもそうだ。そんな私に対して同業者はhigh riskを侵す脳神経外科医と見ているようだ。しかし、私は自分のことを患者のためにhigh riskを厭わない脊椎外科医と内心ではそう思っている。病気を治すという目的が同じなら、患者はより痛みの少ない、身体に負担の少ない、不自由な期間の短い、手術を受けたいと願うことはごく自然のことだ。私は脊椎手術の分野で、患者が求める最小侵襲手術を改良実践してきた。麻酔から覚めて、創部の痛みを感じない患者と普通の会話ができる喜びは従来の手術では味わえなかった事だ。切った痛みがないと、患者は手術前の症状が手術によってどうなっているか、すぐに実感できる。患者は術後直ぐに、手術の成功を感じ取ることができるのだ。このことは患者・家族の執刀医への信頼感を強め、その後の治療が安心感と満足を伴うものになる。もし、切った痛みが強く、患者の全神経が痛みに集中するなら、術前症状の評価は難しく、痛み自体が患者・家族を不安にさせる。ベッドに寝たきり状態は患者に耐え難い精神的苦痛も与えることになる。脊椎手術では脊椎の部分的な完治はあっても、脊椎全体としての完治などありはしないのだ。つまり、腰ヘルニアを摘出して、そこが治っても、後日、別の場所にヘルニアが起こるかも知れない。狭窄症も同様である。すべり症を固定して、そこが完治しても他の部位に又すべり症が発生することもある。このような脊椎の変性疾患には、もう二度と手術が必要な状態が生じることがないといった意味での完治は存在しないのである。完治はあくまでも部分的な完治にすぎない。このことは脊椎変性疾患では再手術、再々手術が必要になる可能性が高いことを意味する。従って、初めに受けた手術の苦痛が大きいと患者は二度目の手術には二の足を踏む。しかし、最小侵襲手術を経験した患者は次の手術が必要な事態に遭遇しても、積極的に手術治療に立ち向かうことが出来る。私は、最小侵襲手術の大きな意義がここにこそあると考えている。脊椎変性疾患という加齢と共に進行し、完治することのない病に対しては、繰り返し行うことのできる手術、繰り返し受けることのしやすい手術が必要である。脊椎の最小侵襲手術は人々の生活の質を守り続けたいという「愛からいでた手術」なのである。


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