しばらく記事の更新ができずにいました。
病後仕事に復帰し、外来・手術が増えるにつれて、それらをこなし、医療相談へ回答するのが精一杯でした。
歳はとりたくないとつくづく思った次第です。
私が復帰してからの手術の傾向は、再手術の患者さんがますます増えたことです。
腰椎の手術を受けたが、良くならない。一時は良かったが直ぐに再発した。手術で却って悪化した。
これらの患者さんに共通しているのは、執刀医が適切に対応してくれないという不満です。
相変わらず、悪いところは治した。良くならない方がおかしい。神経質すぎるのでは等々、これまでも
紹介してきたように、医師が自らの診断や手術の適否に目を向けるよりは、患者さんの側に良くならない原因を
押しつけることがまかり通っている現実があります。
もちろん、このような医師ばかりではありませんが、患者さんへの責任を果たさず、信頼を裏切るような言動をとる医師が患者さんを「医療難民化」させています。
痛みに耐え、歩くこともままならなくなった患者さんが藁にもすがる思いで、遠方から私の外来を受診され、手術を受けられる
姿をみるにつけ、医師としての責任を感じ、胸が痛みます。
患者さんがこのような不幸を被らないためには、患者さん自身に賢くなって欲しいと願います。
腰椎変性疾患による症状は正しい診断と適切な手術によって、必ず良くできると私は信じています。
しかし、神経障害が進むと再手術を行っても、神経機能障害が残りますので、「様子を見る」のも程ほどにしなければ
なりません。腰椎変性疾患による不自由な生活に半年以上も置かれている患者さんは、根本的な腰椎の問題を解消するため
それまでの治療の見直しを行うべきです。
あなたの住む近くで、信頼できる医師を見つけられれば一番よいことですが、それが叶わない場合には、諦めることなく
私の外来受診を検討してみてください。正しい診断と治療方針を検討します。
「生活の質を取り戻す」 これこそが腰椎手術の目的です。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症などは再発の頻度が少なくないことを知って、生活を考えることが
必要です。あれもしたい、これもしたいは誰もが望むことですが、腰椎の変性疾患を発症した人は
欲張らず、慎重になることも必要です。その理由を説明します。
最近、三度目、四度目、五度目の腰椎手術を受けに来られる方が増えてきました。年齢は当然ですが、70代の人にがぜん多いです。50代、60代で最初の手術を受け、再発を繰り返しながら70代に至るといった経過です。
ヘルニアや脊柱管狭窄症の初回手術部位での再発や、初回手術とは別の部位での再発、腰椎固定術を受けた方が新たに隣接椎間にヘルニアや狭窄症を起こしたり、再発の形は実に様々です。
初回手術後、調子の良い方々は「喉元過ぎれば・・・・」の生活になっていきます。無理はないと思います。痛みがなくなるともとの健康な腰に戻ったと錯覚してしまいますから、それが普通だと思います。私はそれでいいんだろうなと受け止めていますが、再発すると、当の患者本人はそんなはずではなかったと落胆されます。中には確信犯のような豪傑者の患者もおられますが。
手術で治したといっても、悪い腰の部分修理のようなものですから、また故障することは充分にあるのです。「腰椎変性疾患は加齢と生活と体質が絡み合って起こる病気」ですが、この中で患者さん自身が注意できるのは「生活のみ」と言ってよいでしょう。加齢は生きている限り避けられませんし、体質も本質的に変えることは困難です。生活を変えるとは、仕事やスポーツなどによる腰への負担を軽減して、腹筋や背筋を鍛錬する習慣を持つことですが、実は、これもなかなか困難です。仕事を変えるなどそう簡単にはできませんし、好きなスポーツ、特にゴルフなどは諦めるなどとんでもないという方々も多いようです。
このような理由から、腰椎変性疾患の再発防止は困難であり、一度罹患した人は二度目、三度目、もしかすると四度目、それ以上の再発に見まわれることがあるのです。
私は、長い期間、何度の再発にも対応できる手術法を探求してきました。そして、現在、再発患者をできるだけ多く受け入れ、症状の改善に努めています。今週、85歳の男性が以前に腰部脊柱管狭窄症の手術を受けられたが、数歩しか歩けない状態になって受診されました。その方は、前回手術のL4/5の狭窄症の再発ではなく、別の部位であるL5/S1の両側の椎間孔狭窄が原因でした。MD法で両側の椎間孔拡大術を行い、L5神経根を除圧して、症状の改善が得られ、杖を用いてですが、歩けるようになって退院されました。
この方が前回手術後、今回までの生活でどれだけ注意を払っていたかは判りませんが、痛みのない、不自由のない生活を生き抜くためには、それなりのご本人の注意も必要なことを退院時に説明させていただきました。
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腰椎変性疾患の治療法は医師によって大きく異なることは、この病気を経験したことのある方なら大いに頷けることと思います。例えば、腰椎ヘルニアや狭窄症と診断された時、治療法として薬物治療やその他の保存治療で良いのか、手術が必用なのか。手術なら、どんな方法が良いのか。これらの質問に対する回答は、医師によって大きく異なるのが普通です。
なぜ、このような状態が続くのか。それは、腰椎変性疾患に対する治療がまだまだ経験学の域にとどまっているからに外ならないためと私は考えます。
言い換えるなら、腰椎変性疾患の治療は病気の本質に基づいた治療にはまだ至っていないのだと思います。
例えば、ヘルニアがなぜ痛みを出すのかに関してすら、諸説があります。その説に基づいた治療法が種々に考案され、実践されていますが、患者全体の部分にしか効果を示しえないというのが実情です。
患者さん達は見聞きした効果の有無だけの情報を頼りに、治療を求めて彷徨うことになります。病院ショッピングは医療費の無駄遣いといわれても、痛みに苦しむ患者さんは背に腹は代えられず、やむなく病院を渡り歩くことになります。それでも痛みを解消してくれる医師や治療法に巡り会えた方は幸せです。そうならず、痛みの迷宮に沈み込んでいく方も少なくありません。誠に不幸なことです。
私の長年の経験から言えることは、保存治療で改善しない腰椎変性疾患による症状は手術で原因を取り除くことによって改善させられることです。しかし、容易ではなく、多くの困難を伴う事例も少なくありません。まさに、外科医の診断力と技術力が問われる領域が腰椎変性疾患なのだと実感しています。
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色々と重なり、ブログ更新ができないでいました。
腰椎変性疾患(ヘルニアや狭窄症、辷り症など)の治療方針で悩む方々が多いので、治療を考える上で重要な事項を列記します。
1) ヘルニアや狭窄症、辷り症などはあくまでも神経を圧迫・障害して症状を出すのであり、神経を障害しない限り持続する下肢の痛みやしびれ、歩行障害を起こすことはありません。ただし、腰痛は神経を障害しない段階でも発現し得る症状です。
2) 腰椎変性疾患による症状は悪化・改善を繰り返すことが普通ですが、繰り返すことによって症状は段々と悪化傾向を示し、難治性になります。
3) 手術以外の治療、すなわち保存治療は基本的に症状軽減療法であり、その治療自体が症状の原因を根本的に取り除くものではありません。病気が進行すると、保存治療は次第に効果を失っていきます。
4) 手術治療をどのような場合に考える必要があるかと言うと、痛みやしびれ、歩行障害などが3ヵ月を過ぎても改善せず、日常生活の質の低下を招く場合と薬物治療や理学療法、ブロックなどを行っても痛みが持続する場合があげられます。いづれにしても、生活の質の障害を遷延させないことが重要であり、手術治療は根本的に原因を除去できることから劇的な効果を示します。
5) 外科治療で出来ることは椎間板や骨の病的状態を修復することであり、障害を受けている神経それ自体を治せるわけではありません。障害を受けた神経の回復は神経の自力回復によるものであり、患者個々で定まった回復程度があります。つまり、ある患者では後遺症を残さず完治することがあれば、ある患者では後遺症を残すことになります。同じ病気、同じ手術治療で、手術が成功しても、治り方はそれぞれなのです
6) 再発を恐れ、手術を受けることを躊躇する患者がいますが、腰椎の老化が進む中で再発は充分に起こり得るものと覚悟する必要があります。しかし、手術はあくまでも現在ある症状の改善に向けるものであり、将来までを保証するものではありません。医療技術が進化したことで、再発を恐れる必要はなく、再発したらまた治せば良いのです。
7) 手術治療の安全性は飛躍的に向上し、かってから行われてきた手術によって最悪、車いす生活になるかもしれないと言った術前説明は殆ど意味を成さなくなっています。私は3000例以上の腰椎手術を行っていますが、手術で車椅子になった患者を経験していません。
8) とにかく、腰椎疾患に関しては、医師によって診断が違ったり、手術適応が異なったり、手術法が異なることが少なくありません。専門医だから、指導医だからと言って安心と言うことは必ずしもありません。最後は経験に裏付けされた医師次第です。
9) 腰椎変性疾患には数えられないほどの治療法が巷には流布しています。ということは病気の本質を見極めた原因治療は未だ行われていないことが多いということを暗示しています。無駄な治療にお金と時間を使わないで済むよう、啓蒙活動が必要です。
10) 腰椎変性疾患は最終的には手術で治せる病気です。これが私が最終的にたどり着いた結論です。
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