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腰椎分離すべり症の術後に神経根障害が発生した患者さんからの相談

.29 2015 腰椎分離すべり症 comment(18) trackback(0)
49歳女性からの質問
 実名と思われる名前が書かれていましたので、名を伏せ、ここで回答させていただきます。

腰椎分離すべり症ボルト固定術を第五と仙骨に受けました。
初めまして、平成27年3月3日に第五と仙骨に腰椎分離すべり症ボルト固定術を受けた49歳の女性です。分離すべり症と診断されたのが7、8年前くらいでその頃はマッサージや痛み止めの駐車などで大丈夫だったのですが今年に入ってからは痛みが悪化、買い物へ行っても10㍍も歩けずブロック注射も効かなくなり手術に踏み切りました。金属アレルギーもありニッケルとパラジウムに反応か出ていたので違う物を入れたとのことです。術後何でもなかった左足が完全に麻痺して動かず手術成功と言われましたが凄く不安でたまりませんでした。入院期間中に左足も動かせる様になりましたが痛みを伴う強い痺れに退院した現在も苦しまされております、更に左足は甲の方から足首まで爪先足裏まで範囲も広がり主治医につたえましたが左側も強く圧迫されていたので想定内だとしか言ってもらえず痛み止めのノイロレトロビン、ロキソプロフェン、レパミドを服用してますが効いてる感じはなく安定剤エチゾラム1mgを一日三回飲んでます。イライラや不安もあるので飲む事で少し気持ちが落ち着きます。硬性コルセットから5月19日から軟性コルセットに変わりましたが装着して歩く度にお尻とお尻の間の骨、お尻、太ももの裏側が強い筋肉痛のような痛みがきてベッドで過ごす時間が増えてきました。座っていても同じ症状がくるため凄く不安で怖くてたまりません。日によって本当にたまにですが時間帯によって軽減される時もあります。主治医の先生がおっしゃるようにゆっくりゆっくりしか良くならないと言われてますが本当によくなりますか?治したい、良くなりたい一心で無理のない程度のストレッチや家の中を歩いたりしてます。すぐにお尻や太もも裏側左足首から下に痺れと痛みがくるため横になって体を休めたりしてます。こんなにも苦痛な日々を送るなんて想像もしてなかったたけに辛いです。今年12月8日に先生への予約をお願いしています。今、現段階でこのまま様子見でいて大丈夫なのでしょうか?いろいろなアドバイス、ご意見を頂けたら幸いです。よろしくお願いいたします。

回答
 お気の毒な結果で残念に思います。術後左足の麻痺と痛みやしびれが発現したことには、当然のことながら原因があります。最も疑われることは、すべり症の矯正に伴って椎間孔内で神経根の絞扼が起こった可能性です。椎間孔内で絞扼状態の神経根の除圧が不十分であると、すべり症の矯正を行うことで神経根がさらに圧迫され、術後にl5神経根症状が悪化します。具体的には、足関節を反らすことができなくなり、坐骨神経痛とすねの外側から足の甲、母趾、足底に痛みやしびれが発現します。主治医に想定内と言われたそうですが、これを避ける配慮・注意が術者として必用であったと私は思います。想定外なら仕方ないともいえますが、想定内という言葉は、もしその通りに言われたのなら、残念な言葉と思います。勿論、想定内の問題であっても、すべてを回避できるとは限らないのが手術ですので、手術を行うには慎重な判断が必用になります。
問題は今後のことですが、術後3ヵ月に近づいていて、麻痺の改善はあるようですが、気になるのは痛み・しびれが続いていることです。骨の固定が完成すると痛みは消失していく可能性はあると思いますが、しびれが取り切れるかは楽観できません。通常の切開法による固定術の場合、創部の痛みが軽減するのに数ヶ月を要する患者さんもおりますので、腰痛は気長に見る必用があると思います。
腰椎固定術の問題は、すべり症の矯正に伴う神経根障害の発生であり、腰椎分離すべり症の患者さんでは、通常は椎間孔内で神経根の問題が起こります。この合併症を手術で避ける方法はあるのですが、回避しきれていない現状があります。手術は成功したと言いながら、誠に残念な合併症と思います。
神経根障害が発生したその他の可能性もありますが、必用があれば次回説明いたします。
私の外来受診を予定されているようですが、症状が改善の方向性を示していますので、もう少し、6月一杯くらいまでは様子をみてください。その間、不安な問題が続くようでしたら、、またご相談ください。対応を考えたいと思います。

それではお大事に。気を落とさず、無理なく動くことも大事です。

from SHUJI SATO

腰椎分離すべり症の80歳の女性に選んだ手術法

.14 2014 腰椎分離すべり症 comment(2) trackback(0)
 長い腰痛癧と両下肢の痛みとしびれを持ち、歩行が困難になってきた80歳の女性患者が受診されました。
検査の結果、L5の両側分離症でL5/S1にすべり症を伴っていました。
MRIでは、予想通りにL5/S1の両側で椎間孔狭窄が進行しており、右側で狭窄は強く、下肢の症状が左に強いことと
一致した所見でした。

 身体的には、高血圧や糖尿病などがあり、決して良好といえる状態にはありませんでした。
痛みをとり、歩けるようになりたいとのご本人の希望が強いために、手術することを決めました。
問題はどのような手術法をとるかです。
 理想的には、私の行っている最小侵襲の神経除圧術とTLIFという椎体間固定とペディクルスクリュー固定術ですが、
患者さんは、高齢であり、骨粗そう症も年齢相応に見られ、身体的条件は余りよくないことから、
固定術は行わず、MD法による両側の椎間孔でL5神経根の除圧術のみを行うことを決定しました。
術後にはコルセット装着など、後療法をきちっと守ってもらうことを指導いたしました。

手術は、両側の筋間アプローチ(多裂筋と最長筋の間からのアプローチ)をとることにし、腰の真ん中から左右40mmに
20mm弱の皮膚切開を加え、直径18mm、長さ60mmのチューブレトレクターと手術顕微鏡を用いた,MD法により
両側のL5神経根を椎間孔内から外にかけて除圧しました。内側では、脊柱管までとしました。
手術所見はMRI画像で予想されたとおり、右側でL5神経根の圧迫は強く、瘢痕性組織と強く癒着していました。
両側でL5神経根が充分に除圧されたことを確認し、閉創しました。私はMD法では創部にドレーンは留置しません。
手術時間は1時間35分、出血量は10mlでした。

患者さんは、翌日から離床開始し、簡単なリハビリを開始しました。足にまだしびれ感は残りますが、痛みはなくなり、
歩行も順調に改善に向かっています。

この患者さんの今後の問題は、すべり部の不安定な骨の状態は軽いですが、両側分離症があり、固定術を行っていませんので、手術部位での再発が起こらないかです。後療法をきちんと行ってもらい、良くなったことを過信せず、無理をかけ過ぎないよう生活してもらうことを指導するつもりです。

手術は、患者さんの年齢、持病、その他の身体条件を十分に踏まえて、どのような方法を採るかを決めることが必要です。医師は手術の安全と効果には充分に配慮できても、患者さんの退院後生活まではコントロールできませんので、患者となられた方は医師の指導を軽視することなく、その後は自己責任の部分が大きいと覚悟して、生活の質を維持して頂きたいと望みます。

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腰椎分離すべり症で神経症状が発生する場合は、椎間孔狭窄を疑うべし。

.04 2014 腰椎分離すべり症 comment(1) trackback(0)
腰椎分離すべり症による坐骨神経痛で、腰椎固定術を受けられた方から、術後も下肢の痛みやしびれの改善が得られず、悩んでいるとの相談を受けました。
この方は、術前のMRIなどの検査で、神経の圧迫はないと説明を受けたようです。

腰椎分離すべり症では、脊柱管内で神経根が圧迫・刺激を受けることは極めて少なく、大多数は椎間孔狭窄による神経根症です。分離すべり症がL5/S1にある場合にはL5/S1の椎間孔狭窄によりL5神経根が圧迫されます。L4/5の場合にはL4神経根の圧迫となります。相談の方の場合には、脊柱管内では神経根の圧迫は見られなかったということですが、実際には椎間孔狭窄が存在していたのであろうと推測されます。

分離すべり症に対する手術治療で固定術を行う際に注意すべきことは、椎間孔内で神経根の除圧をきちっと行うことです。これがうまくいっていないと、固定術後に神経根症状の悪化が起こったり、症状改善が不良になることがあります。

私も、分離すべり症の固定術後に神経根症状が悪化して、再手術を行い、神経根を除圧して症状の改善を得た患者を経験しており、このブログで紹介したことがあります。

このような場合には再手術を慎重に検討することが重要と私は考えています。

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20代から腰痛を繰り返した70代男性の腰椎分離すべり症に対する最小侵襲腰椎固定術

.26 2014 腰椎分離すべり症 comment(0) trackback(0)
今日、午前は外来診療、午後は腰椎分離すべり症の70代男性の腰椎固定術があった。
患者は、20代から腰痛を繰り返して、この数年は下肢の痛み、しびれが強くなり、立位保持や歩行が困難になってきた。座位では、下肢の症状は軽減するが、消失はしない。生活の支障が大きくなってきたため受診された。

症状は両側のL5神経根症で、足関節の背屈力低下もみられた。

腰椎XPとMRIでは、L5/S1に2度の分離すべり症を認め、椎間板腔は著しく狭小化していた。MRIでは、脊柱管狭窄は認めないが、L5/S1の分離すべり症のあるレベルで高度の椎間孔狭窄を認めた。

診断:L5/S1の分離すべり症に合併した高度椎間孔狭窄による両側のL5神経根症

L5神経根症が進行していること生活の支障が進んできたことから手術を行った。

手術は最小侵襲法によるL5/S1の両側のL5神経根・節を椎間孔内で除圧し、ペディクルスクリュー固定とmini-TLIFという椎体間固定を行った。両側のL5神経根は分離部の椎間孔内でつぶされ、周囲と強い癒着を認めた。これらL5神経根の除圧を脊柱管内から椎間孔出口まで行った。麻酔から覚めた時点で、両下肢の痛みはなく、足の動きも良好であった。

最小侵襲法のmini-TLIFでは、腰の真ん中ではなく、真ん中から4~5cm外方の両側で3~4cmの皮膚切開で椎間孔経由で椎体間固定とペディクルスクリュー固定を行う。出血量は100ml前後のため輸血が必要になることはない。
創部痛は翌日から離床開始が可能な程度が大部分である。

最小侵襲固定術は従来の固定術の問題点を種々に克服しているが、技術的には難度の高い手術になる。

明日は、午前1件と午後1件の計2件の手術がある。

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