腰椎退行性疾患とは椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、変性すべり症、分離症、分離滑り症、変性側彎症などを言います。
これら疾患によって起こる症状は腰痛であり、臀部から下肢の痛みやしびれ、麻痺、冷感、排尿障害などと全ての疾患に共通しています。疾患が異なるのに症状が同じ理由は、これらの疾患によって脊柱管や椎間孔を通る馬尾や神経根などの神経組織が障害されることによって痛みやしびれ、麻痺などが発現するからです。つまり、症状を出しているのは神経組織であり、その直接的原因が腰椎疾患ということなのです。
従って、原因疾患が異なっていても、「痛みやしびれが発生する機序」は共通しているのです。すなわち、「脊柱管や椎間孔の中を通過する馬尾や神経根がどこかで骨や椎間板、靱帯、瘢痕性組織によって圧迫・絞扼された状態があること」が症状発現の必須条件です。この条件にさらに「腰椎への重量負荷や伸展・屈曲などの運動負荷が加わること」で症状の誘発や増悪が起こるのです。
「症状の強さを決めるのは神経の圧迫程度と腰椎の動きの程度」です。すなわち、神経の圧迫が強く、腰椎の動きが大きい程、痛みやしびれなどの神経症状は強くなります(これはすべての腰椎変性疾患について共通しています)。一方、神経の圧迫が軽く、動きも少ない場合には症状は無いか、あっても軽く済みます(これも全てに共通です)。神経の圧迫が強くても動きが殆どない場合には症状は軽いか認めないこともあります(脊柱管狭窄が高度でも変性固定した腰椎の場合です。通常、高齢者で認めることがあります)。また、神経の圧迫が軽くても動きが大きい場合には症状は強くなります(狭窄症は軽いが腰椎の病的な動きが強い場合)。
圧迫・絞扼を受ける神経組織の違いによっても症状の辛さが異なります。例えば、馬尾神経よりも神経根が患者にとって、より辛い症状になります。なぜならば、神経根は強い痛みを伴うからです。馬尾は脊柱管の中心部を走行し、神経根は脊柱管の外側部と椎間孔を通り腰椎の外に出て行きます。従って、脊柱管の外側部から椎間孔にかけての領域が辛い痛みやしびれに関係するのです。
痛みを強くする原因に炎症があります。これはヘルニアやすべり症などで神経根に炎症が起こり、神経根が痛みに過敏な状態になった時に辛い痛み、激痛になります。これは動くことも出来ない程の患者にとっては地獄のような痛みになります。
以上、腰椎退行変性疾患による症状の強さは(1)圧迫・絞扼受ける神経組織の違い、(2)神経の圧迫・絞扼程度の違い、(3)腰椎の動きの程度、そして(4)炎症の有無によって決まると言えます。さらに付け加えるなら(5)患者個々の痛みに対する感受性と耐性の違いも関係するのです。
次回から、これら症状の強さを決める4つの因子から見た椎間板ヘルニア、狭窄症、腰椎症、変性すべり症、分離すべり症、変性側彎症など各疾患の特徴と治療法について患者視点で説明しましょう。
NPO法人日本医師事務作業補助研究会主催の第3回全国大会「テーマは医師事務作業補助者の役割の追求」のご案内
日時: 2013年6月29日(土) 10:00~17:00
場所: 石川県音楽堂 NPO法人日本医師事務作業補助研究会HP