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20代女性の腰椎椎間板ヘルニアの手術前後の経過

.30 2013 腰椎椎間板ヘルニア comment(5) trackback(0)
病歴:中学生の頃に腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛を経験したことがある。
約1年前から左の坐骨神経痛があり、長く座っていると痛みが強くなるが、歩行には
支障なし。左下腿の外側とふくらはぎ、足外側から足底にしびれあり。
当院受診の1ヵ月前から臀部から足首までの痛みが強くなり、一日中、びりびりとする
ようになる。姿勢でびりびりが軽くなることはない。寝ているのが最も楽である。
診断:MRIでは、L5/S1の左でS1神経根を強く圧迫する椎間板ヘルニアを認めた。

手術:15mmの皮膚切開でMD法でヘルニア摘出を行った。S1神経根の直下で椎間板が火山のごとく突出しており、火山の頂上で噴火したごとく椎間板組織が脱出してS1神経根を圧迫していた。火山の裾野にあたる部分の椎間板は硬いが頂上あたりは柔らかい状態であった。S1神経根と椎間板間の癒着を剥がしながらヘルニアを摘出し、再発予防のため残る椎間板組織をできるだけ摘出した。手術時間は1時間15分、出血量は15mlといずれも平均よりも上回った。

術後: 術後を患者の言葉で紹介する。
 手術当日の夜:腰が重だるい。足先が冷えるような感じあり。
 翌日:大丈夫です。痛みもしびれもないです。
      歩行状態も安定している
 2日目:大丈夫。創のところがちょっとぴりぴりするくらい。
 3日目:歩くと、左足が少ししびれと痛みがあるが、手術前に比べると楽です。
 4日目:なんともないです。創も大丈夫。足も大丈夫。歩行に問題なし。
 5日目:痛みはないです。左第5足趾にしびれ感はある。

コメント:ヘルニア摘出による炎症期の疼痛が軽く済んだ患者の典型的な術後コースです。ヘルニア摘出により坐骨神経痛は速やかに消失していきます。左第5足趾に残るしびれはS1神経根の障害によるもので、これも直に消失するでしょう。

この患者は比較的長い経過であったにも関わらず、S1神経根の障害が軽かったために、術後順調に回復を示している。しかし、神経根障害が進んだ状態で手術を受けた場合には回復に時間を要したり、しびれや麻痺が残ったりすることがある。

手術でできることは神経根の圧迫を除去することであり、神経根を修復することではない。つまり、術後の回復は神経根の快復力次第なのです。もちろん、神経根の除圧が不十分ですと症状回復は不良になる。

腰椎椎間板ヘルニアは適切な時期に手術を行うことで、根治させ得るのです。