前回は、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症により、頚部神経根が圧迫された時の症状について解説しました。
今回は、頸髄(頚椎の中の脊髄ということで頸髄と呼びます)が圧迫された時の症状の特徴について説明します。
椎間孔では、神経根が圧迫されて強い痛みの神経根症が発現することは前回説明した通りです。一方、頸髄が圧迫されると頸髄症が発現します。頸髄の圧迫症状は、神経根と異なり、痛みが前面にでることは少なく、指先端のしびれで始まり、次第にしびれが腕の方に上行していきます。かつ、手指の使いがぎこちなくなり、巧緻運動障害が起こります。巧緻運動障害とは、字が書きにくい、箸がうまく使えない、シャツの小さなボタンのつけ外しがしにくくなるなどの手指の運動障害を言います。
頸髄の圧迫が進むと、症状は足にも出現するようになり、次第に足のしびれととともに歩行がしにくくなります。頸髄症による歩行障害の特徴は不安定な歩行や早足で歩けない、駆け足ができない、階段の昇降に手すりが必要などの段階から、痙性跛行と言って、両下肢の筋肉が強ばり、なめらかな足の運びができなくなり、足をまっすぐ前に出せず、足を外回りにして前に進めるようになります。
頸髄症が進行すると、胸のあたりや背中・腰にも痛みやしびれが発現することがあります。また、頸髄でも排尿障害が発現します。尿意を感じにくくなり、膀胱に尿が貯まると反射的に排尿反射が起こり、尿を失禁します。
このように、手指のしびれで始まり、次第にしびれが前腕へと上行し、手指の使いにくさが進行し、そのうち両足のしびれが発現し、歩行障害が進行するというのが典型的な頸髄症の進み方です。
神経根症と異なり、頸髄症では、先にも述べたように痛みが軽いため、四肢の運動障害や感覚障害がかなり進むまで、なんとか生活できるため、受診時にはかなり頸髄症が進んでいることが多いのが特徴です。頸髄症も進行すると脊髄障害性の不快な痛みを手指に残すことがあり、こうなると回復が悪くなります。
頚椎椎間板ヘルニアでも頚椎症でも、頸髄症状がある程度に進行してきた時には手術を考えるべき時と受けとめてください。
手術のタイミングは、頚椎の変性疾患でも重要であることを知っておいて頂きたいと思います。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。1日1クリックずつ応援お願いいたします。
