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腰椎変性疾患のfailed back surgery(手術失敗)患者の受診が増加中

.21 2015 failed back surgery syndrome comment(22) trackback(0)
腰椎変性疾患の手術失敗患者さんの受診が増えています。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症などの手術を受けたが、症状の改善が得られない、むしろ術後に症状が悪化したという患者さんです。

手術失敗の原因は、神経除圧が不十分か手術によって新たな神経根圧迫(絞扼)が発生したが多いのが実態です。
勿論、いつも書くように診断に誤りがあり、症状とは関係のない部位が手術されてしまった患者さんも少なくありません。

今回は、腰椎分離すべり症で腰椎固定術を受けられたが、術後症状は改善せず、むしろ悪化した患者さんについて紹介します。
この2ヵ月余りの間に二人の患者さんが当院で再手術を受けられました。

一人は70代男性で、約2年前に地元でL5/S1の腰椎分離すべり症に対して腰椎固定術(PLIF+ペディクルスクリュー固定)を受けられましたが、術後は両側L5神経根症状の改善がなく、その後歩行障害が進行しました。検査の結果、スクリュウーの緩みはないが、椎体間固定の骨癒合に失敗しており、狭小化した椎間孔内の外側部でL5神経根の除圧が不十分であることがfailed back の原因と診断いたしました。この患者さんでは、固定具はそのまま残して、MD法により両側の外側からL5神経根の再除圧を行いました。手術所見では、予想通り、L5神経根は椎間孔内で強く絞扼されており、周囲との強い癒着を認めました。この患者さんでは、術後の経過は順調であり、L5神経根症は両側ともほぼ解消して、歩行障害の改善も良好です。足の筋力低下も正常化し、知覚障害はみとめません。術後2年余り経過していましたが、幸い、神経根障害が回復性を残していたため良好な結果を生みました。

もう一人は40代女性ですが、同じくL5/S1の腰椎分離すべり症で、約8ヵ月前に腰椎固定術を受けられました。術後に左足の麻痺と痛みが発生し、歩行障害も高度になった患者さんです。PLIFとペディクルスクリューの状態には問題はなく、椎体間の骨性癒合は完成していました。しかし、神経障害性の坐骨神経痛と下肢痛を呈していました。この患者さんも、椎間孔の外側部の除圧が不十分と判断して、MD法により外側アプローチでL5神経根の除圧術を行いました。手術所見は、椎間孔の外側部でL5神経根の強い絞扼と癒着を認めました。術後、足の麻痺は回復し、術前は50mの歩行が限界でしたが、術後は痛みの少ない時には500m歩行できるようになりました。神経障害性の痛みは術前よりも改善しており、今後も改善が進むと予想しています。

二人の患者さんの違いは、神経根障害の程度の違いにあります。前者では障害は軽かったことで、術後の回復が良好でした。しかし、後者では神経障害が強かったために再手術後も神経障害性の痛みは改善傾向にありますが、持続しています。

この二人の患者さんの経験からも、術後に神経症状の改善しない、あるいは悪化した場合には、その原因を正確に診断し、
再手術でよくなる可能性がないかを検討することが重要です。そのことができる医師を求めてください。