90歳の腰部脊柱管狭窄症男性の最小侵襲手術成功の報道に触発されて、狭窄症に悩む多数の高齢患者の診察予約の申し込みが続いている。そんな中に92歳の男性患者がいた。診察室には車椅子で来られた。見るからにしっかりした風貌で90代とは思えなかった。
訴えはこうである。長年、狭窄症の症状に悩まされてきたが、歳なのだから治療の仕様がないといわれ続けてきた。どこの医療機関に行っても同じ説明であった。諦めるしかないと思い生活しているところに先の90歳男性の狭窄症手術成功の新聞記事を見つけ、いてもたってもいられなくなり受診することになったという。
診察すると、両下肢は筋萎縮で細くなり、神経障害と歩けないことによる廃用性の筋萎縮が重なったものである。座っていると痛みは軽いとのことであった。膝から足先にしびれがあった。腰椎MRIを見ると、L4/5とL3/4に高度の脊柱管狭窄症を認めた。どんな保存治療も効果のない進行した狭窄症である。
私は手術で狭窄症を治せても、神経障害の回復は期待が薄いことと萎縮した筋肉はもとには戻らないことを説明せざるを得なかった。それでも、痛みに苦しむ生活をしているのなら、手術でそれを取ってやりたいと思い、質問を続けた。坐位や横になっていると痛みは軽いという。立つこと歩くことが駄目という。
相談の結果、患者さんはこのまま生活していくという結論をだされた。落胆されるかと思ったが、表情は晴れ晴れとしていた。今まで医師からきちっと診察や検査をしてもらったことがなく、納得できる病気の説明を受けたことがなかったそうだ。そのため、今まで諦めきれない気持ちがくすぶっていたようだ。今回、私の診察を受け、病状と治療の説明に納得がいき、現状の生活を受け入れていく決心がついたとしっかりした口調で話された。
私は手術で患者を助けることが自分の使命と思ってきたが、このような形で患者さんに満足してもらえることもあるのかと、こちらが逆に教えられた。しかし、これは人生を達観した超高齢者ならではの話である。余生10~20年間残す70~80代の患者には生活の質と喜びを取り戻してもらうための手術治療を積極的に推し進めていく決意を改めて固めた。
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