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認知症についてもブログで取り上げていきます。一般の方々の疑問や不安に答えます。

.04 2012 アルツハイマー型認知症 comment(0) trackback(1)
私はもっぱら脊椎外科医としてツイート、ブログを書いていますが、実は長い間、「ものわすれ」専門外来もやってきました。外科医が「もの忘れ」外来と驚かれ、違和感を覚える方が多いと思いますが、脳神経外科医は脳神経外科疾患との鑑別に認知症の知識が必要になります。認知症の専門は勿論、精神科医ですが、現在は神経内科にも認知症を専門にする医師がいます。地域では、脳神経外科医が必要に迫られて「もの忘れ」外来を行っている施設が多く見られます。

 なぜ、「もの忘れ」外来が必要になったのでしょうか?
  それは1999年11月にアリセプトというアルツハイマー型認知症の治療薬が薬価収載され使用できるようになったことにあります。
  それまでは、アルツハイマー型認知症とわかっても治療薬がありませんでした。そのため、周辺症状といわれる徘徊などの異常行動が始まってからやっと診断されるというのが普通であり、早期診断という考えは一部の医師を除いてなかったのです。

  ところが、アリセプトの登場は認知症の診療を一変させました。なぜなら、アリセプトは認知症早期に使うことで、その薬効を最大限に発揮できるからです。残念ですが、この薬は認知症を治す薬ではありません。認知症の進行を遅らせる薬としての位置づけです。ですから、早期であればあるほど長い効果が期待できるということになるのです。

 では、アルツハイマー型認知症を早期に診断するにはどうしたらよいのでしょう。
昔から、「自分で呆けたと言っている間は大丈夫」と言われてきました。自立的生活を維持している状態という意味ではその通りです。しかし、アルツハイマー型認知症の初期には患者にその自覚があります。それは、「忘れっぽくなった。頭がすっきりしない。意欲がなくなった。集中できなくなった。仕事でミスが多くなった。」などが本人の自覚の中にあります。この段階では、家族にも周囲にも気づかれていないことが多いのが普通です。70歳を過ぎた人では、歳のせいと片づけられてしまいます。病院や診療所通いの患者が主治医にそのことを相談しても、「歳のせいですよ。自分で気づいているのなら心配ない」と言われていたのです。

私にも苦い経験があります。通院中の70歳代の女性患者が忘れっぽくなったことを訴えられたことがありました。毎回外来で見ているその人とは何ら変わりがなく思われ、お決まりの対応をしてしまいました。不安を取り除いてあげたいという思いもあったのですが。ところが、ある日、家族と一緒に受診され、他の医療機関でアルツハイマー型認知症の診断を受けたと知らされました。今でも忘れられない私には衝撃的な出来事でした。家族の説明を聞くと、家庭での生活には外来では想像のできない程の問題が起こっていたのです。家族は脳神経外科医である私が診ているのだからと安心していたようです。しかし、不安になり他の医療機関を受診されたのです。これはアリセプトが使えるようになった2年後くらいのことでした。私はひどく自分を恥じました。上面しかみない診療をしていたのです。家族に来ていただき、生活の状態を聞き出していれば、診断できたはずだからです。それがきっかけとなり、私の認知症に対する真剣な取り組みが始まりました。その後、アルツハイマー型認知症治療薬が幾つか新たに使えるようになりました。この分野は徐々にではありますが、着実に進歩を遂げています。

アルツハイマー型認知症を治す薬が未だない現状において、その進行を遅らせ、症状の改善を図る治療薬をできるだけ早期に患者に投与し、生活の質をより長く維持してもらう。これが現在のアルツハイマー型認知症に対する私ども医師の基本的なスタンスです。

認知症は高齢化社会ではありふれた病気として、いつか自分を含め家族の身にふりかかってくる恐れの多い病気として、さらに早期診断には家族や身の回りの人々の気づきが不可欠な病気として認識することが極めて重要です。

私のブログでは、これからは認知症の問題も取り上げていきます。認知症は患者本人には勿論ですが、それ以上に家族にとって大きな悩み、問題になります。家族の方々に少しでもお役に立てる内容になるよう頑張りたいと思います。

次回は、認知症の早期発見のために家族や周辺の方々はどんなことに注意が必要かを説明いたします。



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