「もの忘れ」専門外来は予約制を取っており、医療秘書(本院では医師事務作業補助者とは呼ばず、医療秘書と呼んでいます)が予約受付をしています。多くは、家族からの申し込みであり、たまには本人自身からのことがあります。家族からは、もの忘れ外来というと本人が拒否するので、本人には脳の検診ということで話を合わせて欲しいという希望が少なくありません。
受診の際には必ず一番良く本人の生活状況を知る家族に同伴してもらっています。家族からの情報が診断の鍵を握るからです。
先ず、最初に行うのが問診表へのチェックです。患者本人と家族にそれぞれチェックしてもらいます。次に問診表の内容を紹介します。
1) 同じ事を何度も言ったり聞いたりする。
2) 置き忘れ、しまい忘れが目立つ。
3) 蛇口やガス栓の締め忘れが目立つ。
4) なべ・やかんを焦がすことが多くなった。
5) 財布や物品を盗まれたという。
6) 薬の管理ができなくなった。(飲み忘れ、余計に飲むなど)
7) 一度に二つのことが覚えられなくなった(台所からソースと醤油を持ってこられないなど)
8) 物の名前がでてこなくなった(あれ、これ、それなどと言う)
9) 時間や場所の感覚が不確かになった。
10) 慣れているところで通に迷った。
11) テレビドラマの筋が理解できない。
12) 買い物でお釣りなどの計算に間違いが多くなった。
13)家電製品(テレビのリモコンなど)が使えなくなった。
14) 趣味や日課で出来なくなった。
15) 簡単な家事もできなくなった。
16) 気分が沈む、落ち込む、ふさぎ込むようになった。
17) 悲哀感、寂しさを訴えるようになった。
18) 自責感や死にたいなどと訴えるようになった。
19) 落ち着かず動き回る時とぼんやりしている時がある。
20) 気分が不安定で、急にそわそわしたり、イライラしたり、怒りっぽくなったりする。
21) 幻覚がある。
22) 夜間に不眠で、日中ぼんやりしている。
認知症の患者では、家族のチェック項目が多いのに対して、患者本人のチェック項目は少ないのが普通です。これは、病識欠如といって自分自身に起こっている病的現象に対する自覚の欠如を表しています。16)~20)は認知症や鬱病などでみられる気分障害をチェックする項目です。鬱病の患者とアルツハイマー型認知症の患者の鑑別が必要になることが少なくありません。なぜなら、鬱病の患者はもの忘れや認知機能の低下を示すことが多く、アルツハイマー型認知症の患者は早期には鬱症状を訴えることが少なくないからです。鬱病の患者では抗鬱剤の治療で症状は改善しますが、アルツハイマー型認知症の患者では認知症治療薬が効果を示します。
問診表チェックに続いて、長谷川式認知症診断テストを行います。このテストは簡易的なテストとして良く用いられていますので、詳細は割愛します。
最後にMRI検査によって、脳萎縮の分布や程度、脳梗塞や脳腫瘍、水頭症の有無などをチェックします。同時に海馬傍回の萎縮の有無や程度を評価するVSRADを行います。VSRADはアルツハイマー型認知症早期に出現する海馬傍回の萎縮の程度を半定量的に表示する方法です。
以上、アルツハイマー型認知症は問診と長谷川式テスト、MRI、VSRADなどの結果を総合して判定します。認知症判定で重要なことは、長谷川式テストでほぼ満点近くでも、MRIやVSRADでアルツハイマー型認知症の疑いの強い海馬傍回を含む脳萎縮の存在を認める場合には、半年後に再検して、認知機能のさらなる低下がないか再検査することです。その疑いを持たせる経過の場合にはできるだけ早く薬物治療を開始し、定期的に経過を追跡することが重要です。未だ、臨床的にはアルツハイマー型認知症初期を確実に診断する単一の検査法はありませんので、認知症の疑いのある患者では半年ごとに検査を繰り返すことが必要です。
次回は、認知症の発症にどんな要因が関係するかについて説明します。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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