脊椎外科医なら、ヘルニアや狭窄症、すべり症などの腰椎変性疾患は手術で治せる病気であることは理解している。これは当然のことであり、だからこそ脊椎外科を専門にしているのである。一方、治せる病気であるという認識とともに治すことの困難な症例が多いことも経験上知っている。私の所にこられる患者には、他の医療機関で原因不明、治療困難、高齢過ぎる、手術を受けたが好くならないなどの訴えが多い。
原因不明の腰痛、下肢痛の原因は脊柱管内には問題なく、椎間孔内や椎間孔外のヘルニアや狭窄症の方が多い。これらの病変の診断は脊椎専門医においても困難であり、診断の盲点になり続けている。これらの診断にはMRIの横断像と冠状断像が必須である。そして、読影力がなければ診断できないのである。
治療困難と言われる患者には、狭窄症と椎間板ヘルニアが合併していたり、側彎症、すべり症が合併していたりする複雑な病態を示す者が多い。これらも、神経除圧単独やこれに固定術を組み合わせることで治療は可能になる。しかし、これらの複雑な病態を示す患者では、症状の原因が腰椎のどこにあるのかの診断自体がついていないことが多いように思われる。そのため、手術戦略がたてられないのでる。
高齢過ぎるは、大変多い手術拒否理由になっている。手術はまだ早いと言われた患者が、長い保存療法の末に、今度は手術をするには歳を取りすぎたと言われるのである。これでは患者は救われない。低侵襲手術は高齢者の腰椎手術を可能にし、その内容は今までは不可能といわれていた領域にも及ぶようになっている。私の腰椎手術の30数%は70~90歳の年齢世代であり、安全な手術手技が確立されている。
手術を受けたが好くならない理由は、以前にこのブログで紹介済みである。要は、診断の誤りか手術の不完全さが原因である。これらの患者では、適切な再手術で症状の改善をはかれることを私は多くの症例で証明してきた。
腰椎変性疾患の治療法は、実に枚挙にいとまがない程、世間にあふれている。初期の頃は悪さを加えない治療であれば、それなりに効果が現れたように感じられるため、その治療法の信者が増えるようだ。しかし、腰椎変性疾患は悪化、改善を繰り返しながら、加齢と共に悪化するのが特徴である。すなわち、初期には効果を示した治療が次第に効果を失っていくのである。腰痛や坐骨神経痛の初期では、保存治療が効果を示すことがあっても、腰椎変性疾患によって神経障害が進み、下肢の痛みやしびれ、歩行障害が増強した患者では、原因治療、すなわち神経を圧迫・絞扼している腰椎の原因を手術的に取り除き、必要があれば固定術を加えることが必要になる。
腰椎変性疾患は、本質的には外科的疾患である。初期には手術は必要でないが、進行し、生活に支障を来す段階では、早めに根治させることが必要と私は考えている。長く、慢性化させることで、治療はより困難になり、症状の改善率も低下していくからである。
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