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腰部脊柱管狭窄症の手術にボルト固定は必要か?

.29 2012 腰部脊柱管狭窄症 comment(6) trackback(1)
 私への相談に多いものの一つとして、腰部脊柱管狭窄症と診断され、主治医は俗にボルトと呼ばれるペディクル・スクリュー固定が必要と言ったが、どうなのかというものがある。
 腰部脊柱管狭窄症とは大きく分けると、生まれつき脊柱管が狭い先天的要因の関与するものと加齢変化に伴う腰椎症によるものがある。前者は発育性の腰部脊柱管狭窄症と呼ばれている。
 いずれのタイプでも、加齢に伴い脊柱管が狭くなり、その中で神経が圧迫されて腰痛や下肢の痛み、しびれ、間欠性跛行が生じることに変わりない。
 手術治療はいずれのタイプも神経除圧と言って、脊柱管の後方から、神経の圧迫を除去するものだ。その時に神経の圧迫を除去することと併せて何故、ボルト固定が必要とされるのか。
 私はいずれのタイプの狭窄症にもボルト固定は原則行わないし、不要と考えている。その理由は、神経除圧のための必要最小限の骨の除去と骨の安定性を損なわない骨の削り方を行う限り、固定は不要です。勿論、神経除圧のみで患者の症状は良くなるのです。
 それなら、何故にボルト固定が必要なのか。その理由をあげると、

神経の圧迫を取り除くための骨の削りが不十分だと、術後症状は改善しない。一方、骨を削り過ぎすると、神経の圧迫は除去され、症状は改善するものの、手術によって弱くなった骨に、後日、すべり症が発現し、症状が再発することがある。

ボルト固定の効果は、一つ目は、神経の除圧が不十分でも、ボルト固定で腰椎の動きを止めることによって、痛みは消失する。二つ目は、骨の削り過ぎで、将来発生する可能性のある腰椎すべり症をボルト固定で防止する。

多くは、この二つの理由で狭窄症の手術でボルト固定が行われています。さらに、もう一つの理由は、狭窄症は1箇所以上に連続して発現することが多いため、複数の腰椎をボルト固定することで安定した状態をより長く維持したいという外科医の思いもあるのです。

しかし、固定術で固定された骨は安定的に良い状態を維持するが、固定された骨と固定されていない骨のつなぎ目で新たに狭窄症やヘルニアの起こることが稀ではない。
 
従って、私は狭窄症の手術においては、過不足無い骨の削りで、神経の圧迫をきちっと除去し、削り過ぎにより骨を弱めないことが肝要と考えている。しかし、それでも、術後に腰椎のすべり症が発生することは皆無ではない。その時には、改めてボルト固定術を追加・施行することが望ましい。

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drshujisato
椎間孔狭窄ですべりを伴っているのであれば、固定術の併用が一般的には必要と思います。
除圧のみでは、効果あ長続きしないと思われます。運動などを考えているのであれば、なあさら
除圧のみでは、だめのように思います。
固定術は低侵襲固定術が良いと思いますが、これは医師次第のことですので、
担当医とよく相談されることです。
手術による、つらい痛みが腰部に残ることがありますのでね。
骨の固定が完成すれば、通常は半年以上たつと、運動を再開できると思いますが、これには
個人差があります。
上述したことは、あくまでもすべり症を伴う椎間孔狭窄症の場合ということです。すべりがなければ
椎間孔拡大術でまずは対処すべきと思います。


2014.06.01 20:54
加藤 俊貴
初めまして宜しくお願いいたします。昨年1月に交通事故で追突され、その後数ヵ月後から、腰と坐骨神経(臀部)の痛みが時々強く出るようになりましたが、そのころは、首や肩の痛みが強かったため、かかりつけの整形外科の先生も、腰はたいした事がないと放置されました。その後も時々痛みが強くなりましたが、診断はされませんでした。その後交通事故の症状固定になるころから、激痛が出て歩けなくなることが出たため、再度MRIの診断を依頼しましたが、はっきりとした診断はされませんでした。今年の2月にインターネットで調べた整形外科の先生に診察をしていただいたところ、第5脊椎の脊椎間孔狭窄症で少しすべりがあるため、固定術が必要との診断でした。ただ温存療法で出来るだけがんばれたら、そのほうがいいとのことでした。昨日近くの病院でMRIの診察を受け、同じ症状の診断を受けましたが、少し薬で様子を見ようとのことでした。手術のタイミングとデメリットを教えていただきたく、宜しくお願いいたします。長くなり申し訳ありません。やはり固定術が必要でしょうか。スポーツをしていたので、出来なくなるのは、とても苦痛です。また、仕事に復帰できるまではどれくらいの期間がかかるでしょうか。
年齢56歳、男、です。
2014.06.01 00:09
drshujisato
55歳、女性でボルトを用いた腰椎固定術を受けられたのですね。
固定が完成すれば、通常の生活や仕事に復帰できると思いますが、と言っても、患者個々で腰椎の状態が異なりますので、どんな負荷をかけても大丈夫というわけではありません。仕事の内容からは、腰にかなり負担がかかると思いますので、とちからというと同じ仕事への復帰は避けられた方が良いのではないかと思います。長い目でみての話ですが。腰椎固定が完成し、強固になるのは、年齢や性にもよりますが、貴方の場合ですと、半年以上はみた方が良いと思います。
2014.03.08 23:16
ちかこ
二月に腰椎2~3番のヘルニアの診断でボルトによる固定固定手術を行いました。もうすぐ1ヶ月になります。先生は無理をなければ職場復帰も大丈夫と話していますが・私は重度心身障害者の施設に勤務しています。平均30kの利用者、車椅子からベット、床から車椅子への移送、床から、埋め込み式のトイレへの移動、着替え、食事介助の全てが全介助の状態です、このままこの職場で仕事を続ける事は自信がありません。年齢も55歳で今更新しい職を探すのも大変ですが、今後の事を考え悩んでいます。
職を変わるべきでしょうか?
今ネットで検索してずうずうしいとは思いながらメールしてみました。
2014.03.05 09:16
drshujisato
さくらさんへ
 私のブログを読んでいたただいてありがとう。貴女のような脊椎の病気に悩む方々の役に立ちたいとブログを書いていますので、相談も結構ですよ。さて、分離すべり症に椎間板ヘルニアということですが、たぶん、L5/S1でしょうか。結論を先に言いますよ。私なら手術を勧めます。私は腰痛だけでも、その方の職業や生活に大きな支障になっているなら、手術をする立場を取っています。分離すべり症は、症状の悪化が始まった方では、更に悪化していくのが普通です。腰への負担が大きい程、進行は早くなります。手術治療は外科医によって、様々です。大きく切開し、輸血が必要な固定方法が一般的ですが、私が行っている最小侵襲手術による固定法は小切開で輸血なしで行います。手術翌日からトイレ歩行できますし、2~4週間で退院ができます。仕事復帰は職種しだいですが、余程、腰に負担をかける仕事でなければ早期復帰も可能です。手術法によって術後経過は随分違います。固定術にはいろいろなやり方がありますので、他にセカンドオピニオンを求めて、判断することが良いと思いますよ。
2012.07.08 14:21
サクラ
先生が勤務されておられる病院は関東でしょうか?関西でしょうか?先生の脊椎外科医の戦場を読ませて頂いていると先生にセカンドオピニオンを受けたいと思えてきました。私はヘルニアに腰椎分離に滑り症があります。最近臀部や大腿部の痛みが頻回になってきましたので、先日病院にいくと手術の適応ですといわれました。腰椎分離滑り症の場合の術式は自己骨を移植しボルドで固定するといわれました。私は助産師をしていますが半年間仕事はできないといわれました。半年間仕事ができないのは致命的です。それをきき歩行不可になるまで様子をみようと心に決めましたが、帰り際にその先生は、このままでは筋力が弱ってくるだろうし神経の回復がといわれました。一旦滑り症になってしまうと段々進行してくるものでしょうか?自分の中ではこの一年で段々悪化しているように思いますが、どうしてもオペには踏み切れません。臀部や大腿部に痛みがきている場合、先生ならすぐにオペを進められるのでしょうか?ご多忙の中、こんなメールをしてしまい大変申し訳ありません。本当なら先生の脊椎外科医の戦場を読んでのコメントを書く場であると思うのですが。整形の手術は長時間ですので先生はかなり大変だとお察し致しますが。ご無理なさらないで下さいね。これからも脊椎外科医の戦場を読ませて頂きます。楽しみにしています。
2012.07.08 13:11

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2012.06.30 14:32 まとめwoネタ速neo