私も脊椎手術を始めた頃には、脊髄や神経根が骨の中に見えてくると、胸が高鳴り、緊張感が一気に高まったものです。なぜなら、脳や脊髄、馬尾、神経根を手術で傷めると悲惨な結果が患者に生じることを脳神経外科医は誰よりも良く知るからです。
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症は腰椎の中に存在する馬尾や神経根を圧迫して下肢の痛みやしびれ、歩行障害を生じます。その圧迫程度が増すに従って、これらの症状は次第に悪化へ向かうのです。この症状悪化を食い止め、神経の機能回復を図ることが手術の目的です。一方、神経の圧迫を除去する操作自体に神経組織を傷害する危険が潜みます。しかし、神経を傷害することを恐れて、神経に十分に近づけず、除圧が不十分に終わるなら症状の改善は得られません。
神経組織の除圧を的確に行う技術の善し悪しこそが手術結果を大きく左右するのです。
私は、ヘルニアや狭窄症の手術の多くは1時間以内に終わらせます。これは神経を意識しても、神経に近づくことや神経に接して除圧操作を行うことに恐れを感じなくなったからです。手術顕微鏡下では、高速回転ドリルを用いて、神経を圧迫する骨を削ります。この時にドリルを持つ手がぶれると当然のことながら、神経を傷つける恐れがあります。そのような高いリスクの中でも、冷静に淡々と危険な操作を行えることは、長きに渡る経験の積み重ねの賜と思います。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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