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腰椎変性すべり症の固定術後も腰痛と下肢のしびれが残り、10ヵ月後に再手術を行った患者

.05 2012 腰椎変性辷り症 comment(0) trackback(0)
 患者は79歳女性。初診時の症状は、3年来の腰痛と下肢痛で歩行障害が進んでいた。病院や鍼灸院を通院していたが、次第に悪化するため、私を受診した。
 症状からは左L5神経根の症状であり、L4/5に変性辷り症があり、骨の不安定な動きがあった。MRIでは、L4/5の脊柱管狭窄を認めた。その他の部位に問題はないと判断した。

 L4/5の変性辷り症と脊柱管狭窄と診断して手術を行った。手術は、L4/5の神経除圧とペディクルスクリュー固定と椎体間固定(最小侵襲TLIF)を施行した。退院時には、歩行はしやすくなったが、まだ、腰痛と下肢のしびれが残存していた。その原因を明らかにできなかったため、外来で経過をみることにした。

術後3ヵ月、そして6ヵ月のフォローでも、腰痛と左下肢のしびれは続き、再び、歩行障害もでてきた。念のため、整形外科で股関節をチェックしてもらった。股関節疾患でも坐骨神経痛に類似した痛みを出す患者がいるからである。しかし、股関節には問題なしとの報告を受けた。

再び、腰椎疾患の可能性について検討し直した。症状は左L5神経根症であることに間違いないと結論した。L4/5の固定は完成しており、この部位で症状が発現することはまずあり得ない。残る可能性はL5神経根がL4/5以外で障害を受け得る部位、すなわち、L5/Sの椎間孔か椎間孔外である。CTとMRIでは、L5/Sの椎間孔と椎間孔外は狭くなってはいるが、患者の症状を説明するにはその程度は軽いと思われた。

もし、原因があるとするなら、L5/Sの椎間孔内・外の狭窄以外には考えられないという最終判断を下した。患者と家族は手術を希望された。手術は左外側に18mmの切開を加え、直径18 mm、長さ50mmのチューブ状開創器と手術顕微鏡を用いて行った。

手術所見は左l5神経根がL5/Sの椎間孔出口で予想以上に圧迫され、神経根周囲には瘢痕組織という硬い組織が形成されていた。これほどの圧迫があるとは、術前の画像検査では予測出来なかった。手術時間は50分、出血量は5mlであった。術後、患者は下肢の痛み・しびれが著しく軽減していた。術前に仰臥位で下肢を伸ばして、寝ていることができなかったが、それは解消していた。

この患者が私に残した教訓は、患者の訴えに謙虚に耳を傾け、その時に答えがだせないのなら、定期的に経過をみる姿勢を持つこと。患者と医師の信頼関係なくしては、時間をかけて正しい結論に到達することなどできないのである。医師が誠意をもって、患者に向き合わなければ、患者はその医師を諦め、去って行くであろう。その結果、医師は真実を知ることができないまま、同じ過ちを繰り返していくであろう。医師として、進歩・向上は望めないのである。


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