70歳代の女性が、左坐骨神経痛を訴え受診された。2年来の症状で、その間、二、三の病院を受診したが、原因は不明のまま経過していた。接骨院などにも通ったが、一向に症状は改善せず、次第に悪化の傾向を示していた。
症状からは、明らかに左L5神経根の症状である。下肢を伸展した仰臥位で寝ることや左下の側臥位で寝ることは痛みが増強してできなくなる。右下の側臥位で寝ることが多い。長く座っていても痛みが増す。歩くことにはそう問題はないが、同様の痛み・しびれが発現する傾向があった。
MRIでは、脊柱管内には病的所見は殆どなく、L5/Sの左椎間孔内に狭窄性病変が疑われた。症状からは左L5神経根障害による根性坐骨神経痛であり、その原因としては、L5/S1の椎間孔狭窄病変以外には考えられないことから、その手術に踏み切った。
切開17mmのチューブ状開創器と手術顕微鏡を用いて、椎間孔の拡大術を行った。手術所見はMRIから予想された以上の神経根の圧迫が見られた。神経周囲にはかって椎間板ヘルニアを起こし、それが吸収消失した後に残った線維性組織によると思われる強い癒着が存在していた。椎間孔を拡大し、神経の圧迫を除去した。手術時間は1時間15分、出血量は5mlであった。
麻酔が覚めると、左下肢の痛みは著しく軽減されており、術前に保つことのできなかった仰臥位をとっていることが出来るようになった。しびれは足にまだ残っている。
この患者が私に残した教訓は、MRI画像などの検査は診断において絶対的なものではなく、手術をして始めてわかることがあるということです。そのためにも、神経症状の詳細な吟味と神経根の障害が起き得る部位を知って、原因部位を突きとめることが必要になります。、
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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