Q:
痛みの認知は末梢神経の痛み受容器に発痛物質が感作して、生ずると知りました。
つまり例として、足先が痛いのであれば、その部分の末梢神経の痛み受容器が、痛み原因物質を認知し脳へ電気信号として痛みを伝え脳が痛みを認識する。
では、腰椎部の神経が炎症をうけるとなぜ、下肢の痛みとなるのでしょう?腰椎部の神経の炎症が、下肢の痛み受容器をかってに感作させるのでしょうか?そんなことは理論的にないと思うのですがいかがでしょうか?
試してガテンの内容がこの通りであれば、納得してしまいます。
ヘルニアによる下肢の痛み痺れが、上記の理論に会わないと考えますがどうでしょうか?
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
A:
私達の身体は痛みをどのような仕組みで感じるのか。皮膚に加えられた痛み刺激は、基本的には貴方が勉強されたように、末梢神経を介して脊髄に伝えられ、そこから、さらに脳に伝達されて痛みを感じるのです。
その逆に脳や脊髄の病気が手や足、顔などに痛みを出すこともあるんです。このメカニズムは色々と検討されてきたましたが、まだ完全には解明されていません。大ざっぱに言うと、痛みを起こす神経系統とそれ抑制する神経系統のバランスが崩れることによって起こると考えられています。例えば、脳出血の一つである視床出血には、その後遺症として視床痛という患者にとっては大変つらい痛みがあります。さらに、脊髄損傷を受けた患者が四肢や手足の不快な痛みに悩まされることも多いんです。これらの痛みは中枢性の痛みと呼ばれ、始めに触れた末梢性の痛みとは異なる仕組みで起こるのです。
それでは、腰の場合はどうでしょうか。腰の神経は末梢神経に属します。この神経がヘルニアなどで傷害を受けると、その神経が支配している皮膚の領域に痛みを感じます。例えば、腰椎4と5番の間のヘルニアでは5番の神経が障害され、皮膚の痛みは5番の神経が支配する領域、すなわち下腿外側や足背に起こります。これは神経の直接的傷害による痛み刺激が脳に伝わり、脳はその神経の支配領域に痛みとして感じるのです。実は、ここに痛みが精神的なものと混同されてしまう理由があるのです。
腰ヘルニアを除去したにも関わらず、患者は痛みを訴え続けると、医師はヘルニアを取ったのだから痛みは良くなっているはずだと考えます。それが良くならないのなら、痛みが患者の脳に記憶されてしまったためと理解するのです。確かに幻肢痛といって、下肢を失った患者が無いはずの足の指に激痛を訴えるという不思議な現象があります。このように脳に記憶された痛みに苦しむ患者はいるのです。
しかし、ヘルニアの手術後も痛みを訴え続ける患者の痛みが脳に記憶されてしまった痛みと即断すべきではないのです。手術で摘出されたヘルニアが本当に患者の痛みの原因であったのか、この疑問を持つに十分な程ヘルニアの診断はまだまだ不完全で困難なものが多いのです。私は精神的なものと見なされてきたヘルニア患者の再手術を行い、痛みを改善してきました。そのような誤った診断・手術によって、良くならなかった患者が医師によって精神的と見なされていることが少なくありません。そのような患者を一人でも少なくしたいというのが私の願いです。この痛みの問題は実に複雑で難しいですね。しかし、医師が患者の痛みを我が痛みとして、真剣に向き合うことから解決の糸口が見えてくると思います。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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