腰椎椎間板ヘルニアの手術治療の説明の中で、いずれまた再発する可能性が高いから、手術は勧められないと医師から言われ、手術治療を躊躇する患者が多いようだ。
再発ヘルニアによる手術の頻度は術者によって3~8%というところでしょうか。これは再発して手術が必要になり、それを行った患者という意味ですから、手術までは必要のなかった軽い再発例を含めると実際の再発例はもっと存在すると考えて良いでしょう。
再発はなぜ起こるのか? 勿論、椎間板組織が術後も骨と骨の間のスペースに残っているから出てくるわけです。初回手術で椎間板組織を残すことなく全部摘出し尽くすことなどできはしません。だから、再発はあり得るのです。確かに、再発のしやすそうな脆くなった椎間板の患者がいます。患者によっては、二度、稀には三度と再発を繰り返すことがあります。だからといって、手術は諦めてくださいでは、脊椎外科医とは言えないでしょう。
繰り返し言って来たことですが、初回ヘルニア手術は一部を除いては一般に容易であり、経験の積んだ外科医なら、まず問題なく治せるでしょう。しかし、再発となると話は変わるのです。再発手術は強い癒着が神経の周囲に進んでおり、多くは瘢痕性組織ができているので、神経の同定は困難になり、ヘルニアの摘出も難しく、ヘルニアを摘出しても症状の改善の得られない患者もでてくるのです。このような再発ヘルニアのやっかいな問題が外科医を萎縮させてしまうのです。再発ヘルニアを多く手がけ、成績を出していなければ、自信を持って手術に立ち向かうことはできないのです。手術で良くできない、最悪の場合、却って症状を悪くしてしまうことを恐れるからです。
このように外科医が再発手術に消極的になってしまうのでは、患者は救われません。
私は、再発を前提にして手術を行っています。私の椎間板ヘルニアの再発手術率は3%前後ですが、やはり、再発はあるわけです。後始末は自分でやらなければなりません。私は自分以外の再発手術も進んで行っています。
私は、患者にこう説明しています。ヘルニアの手術は車のタイヤのパンクの修理に似ている。一度、パンクを修理しても、タイヤのゴムが経年的に劣化し、またパンクすることがあり得る。そうしたら、また修理して走らせばいい。腰ヘルニアも同じことです。大事なことは繰り返し修理できること、つまり、再発ヘルニアを摘出し、通常の生活に繰り返し戻してあげることが外科医の腕の見せ所というわけです。
再発するから手術しても無駄の言葉の奥には、再発ヘルニアには勝てない、再発したら手がつけられないという再発手術の経験不足からくるところの弱気が潜んでいる。しっかりした技術力を磨き上げれば、再発ヘルニアなど恐れるに足りずということになる。私は、再発でも固定術は基本的に行わない。MD法で再発ヘルニアを摘出することを原則としている。MD法は患者にとって術後苦痛がないと言って良いから、患者はヘルニアが再発しても手術に対する恐れや抵抗感が殆どないように見受けられる。なぜなら、手術の痛みよりも、ヘルニアの痛みの方が圧倒的に強いからに外ならない。
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