患者は60歳代の男性。
症状は、数年前から腰痛があり、2年前から右臀部から大腿部の痛みが発現するようになった。いわゆる、坐骨神経痛です。病院を受診し、腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬物治療が開始されたが、効果ないため中止し、接骨院で治療を受けていた。しかし、痛みの改善がなく、右足の背屈力が低下してきたため、当院を受診された。
神経機能検査では、右足関節の背屈力低下と母趾の伸展力の低下、下腿筋の萎縮の外、右L5神経根領域に知覚障害を認めた。
腰椎MRIでは、L4/5に軽い脊柱管狭窄所見と右側のL5/S1の椎間孔外に狭窄所見を認めた。
診断:先の病院ではL4/5の脊柱管狭窄症が原因と診断されていたが、この所見では症状を説明することは困難と判断した。その点、L5/S1の椎間孔外狭窄は患者の症状を説明するのに十分な狭窄程度と判断された。
手術は、MD法により、右外側から椎間孔の拡大術と椎間孔外でL5神経根の除圧を行った。手術所見は椎間孔出口から外にかけて神経根の絞扼は高度であり、瘢痕組織による強い癒着も認めた。この神経根を剥離し、神経根の可動性を回復した。
手術時間:70分、出血量:10ml
術後経過:術後2日で痛みは完全に消失し、しびれも感じなくなった。歩行障害も解消した。手術創部の痛みもなし。
教訓:この患者は腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬物治療、接骨院の治療を受けたが、症状は進行し続けた。MRIでは、L4/5に脊柱管狭窄症の所見を認めたが、患者の進んだL5神経根障害を説明できるほどの狭窄症ではなかった。その真の原因はL5/S1の椎間孔外に存在していた。このような誤診、治療無効例が少なくありません。
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