腰部脊柱管狭窄症の80歳代の患者さんが18mmの皮膚切開によるMD手術を無事に終え、退院する。この方は高齢だから、付きあっていくしかないと主治医や周囲から言われ、諦められない気持ちとやむなしという気持ちで接骨院通いをしていた。そんな折、高齢者の腰椎でも手術をしてもらえるという口コミ情報でこの患者さんは私を受診した。
話を聞くと、数メートル歩くと下肢に痛みが出て、歩けなくなる。両足の痛みを伴うしびれとこわばり、冷感に悩まされていると言う。いくら年寄りだからと言われても、つらいものはつらい。このまま歩けなくなり、家族に世話をかけると思うとつらい。自分の身体の不都合と家族に与える負担の両面から悩んでおられた。
画像検査では、多椎間に狭窄性変化はあるが、症状の原因はL4/5の狭窄症と判断できた。狭窄症の程度はかなり進んでいる。この患者さんの余生はどれほどか、推測はできないが、次第に歩けなくなり、戸外で生きている日々のささやかな楽しみさえを持つことが許されなくなると思うと、何とかしてあげなくてはと私の外科医魂が奮い立つ。
このままでは、生きている値がないという患者さんの気持ちに押され、手術に踏み切った。術後、歩行障害は解消し、痛みやしびれも半分以下に減ったと喜ぶ。術後まだ1ヵ月くらいだから、これから半年くらいにはもっと痛みやしびれは弱くなっていくでしょうと私が話すと、笑顔が返ってきた。
私の腰椎手術の患者の3割強は70から90歳代です。高齢者の痛みのない、自立した生活の回復と維持こそが、最小侵襲手術に取り組んできた私の最大の目標と言ってよいでしょう。今までの脊椎外科は高齢者を手術治療の対象から除外せざるを得なかった。どう診断し、どのような手術をしたら、良い成績が得られ、合併症をなくすことができるのか。これらの問題は殆どが未解決のまま現在に至っている。その突破口を開くための戦いが脊椎外科医の戦場にある。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。応援クリックお願いいたします。
- 関連記事
-
trackbackURL:https://spine.drshujisato.com/tb.php/202-2f60138c