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いくら年寄りだからと言って痛みや歩けない生活には付きあえない

.05 2012 腰部脊柱管狭窄症 comment(12) trackback(0)
腰部脊柱管狭窄症の80歳代の患者さんが18mmの皮膚切開によるMD手術を無事に終え、退院する。この方は高齢だから、付きあっていくしかないと主治医や周囲から言われ、諦められない気持ちとやむなしという気持ちで接骨院通いをしていた。そんな折、高齢者の腰椎でも手術をしてもらえるという口コミ情報でこの患者さんは私を受診した。

話を聞くと、数メートル歩くと下肢に痛みが出て、歩けなくなる。両足の痛みを伴うしびれとこわばり、冷感に悩まされていると言う。いくら年寄りだからと言われても、つらいものはつらい。このまま歩けなくなり、家族に世話をかけると思うとつらい。自分の身体の不都合と家族に与える負担の両面から悩んでおられた。

画像検査では、多椎間に狭窄性変化はあるが、症状の原因はL4/5の狭窄症と判断できた。狭窄症の程度はかなり進んでいる。この患者さんの余生はどれほどか、推測はできないが、次第に歩けなくなり、戸外で生きている日々のささやかな楽しみさえを持つことが許されなくなると思うと、何とかしてあげなくてはと私の外科医魂が奮い立つ。

このままでは、生きている値がないという患者さんの気持ちに押され、手術に踏み切った。術後、歩行障害は解消し、痛みやしびれも半分以下に減ったと喜ぶ。術後まだ1ヵ月くらいだから、これから半年くらいにはもっと痛みやしびれは弱くなっていくでしょうと私が話すと、笑顔が返ってきた。

私の腰椎手術の患者の3割強は70から90歳代です。高齢者の痛みのない、自立した生活の回復と維持こそが、最小侵襲手術に取り組んできた私の最大の目標と言ってよいでしょう。今までの脊椎外科は高齢者を手術治療の対象から除外せざるを得なかった。どう診断し、どのような手術をしたら、良い成績が得られ、合併症をなくすことができるのか。これらの問題は殆どが未解決のまま現在に至っている。その突破口を開くための戦いが脊椎外科医の戦場にある。



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drshujisato
ありがとうございます。
医療は患者のために存在しています。医師やコメディカルのために存在しているわけではありません。当たり前の医療を実現するためには、国民と医師が強い信頼感と連帯感で結ばれねばなりません。医師は国民の税金で医師になっていることを忘れてはなりません。医学部に入る努力はしても、医師になるために多くの国民の税金が投入されています。私立医大でも同様です。日本の医療制度はまさに国民の税金で成り立っていると言ってよいでしょう。米国のようにハイリスク、ハイリターンの合理性を追求した医療制度もありますが、日本が求めてきた医療はヒューマンリレーションに基づく全人的医療であったはずです。国民も多くの医師が多大な困難に直面しながらも患者のために戦い続けていることを忘れてはなりません、医師も国民も医療のあるべき姿をただ言葉の上だけではなく、その本質を問いなおし、実践すべき時にきていると思われてなりません。、
2012.10.08 23:03
drshujisato
お心遣いありがとうございます。
私がブログ相談室をやり始めた理由は、脊椎疾患に関しては何が現在の常識なのかが余りにも不明なため、治療にまつわるどんな結果も医師のいいなりに受け入れざるを得ないという患者の現状があり、それに風穴を開け、患者のために可能な限り適切な治療がおこなわれるようにと願うようになったからです。脊椎疾患の診断と治療の難しさは身にしみて痛い程に解る年齢に達した今、患者と医師の間のコミュニケーションがよりスムースにいくよう、患者側に理論武装が必要と判断したのです。そのお役に立てるなら、ブログ相談室を開催した意義があります。ですので、直接医師に言いにくいと言うことでも結構ですので、私との間でリハーサルのつもりで、どんな質問でも結構ですので、寄せていただければと思っています。多くの方々の目線の高さでこのブログ相談室を運用していきましょう。
2012.10.08 22:37
70歳男性
脊柱管狭窄症患者さんのコントに対し意見です。
確かに今は何でも簡単で欲しいものが手に入るコンビニエンスな社会になりましが医療の世界も同じに考えて簡単に手術する患者と医者がいるのかもしれませんね、日本人は自己責任の考えが薄いのかもしれません。外国にいけば当然の事なのですが、ですから手術に失敗したのは患者側にも多いに責任はあるのです。気になるのはそうした失敗を簡単に佐藤先生に聞く姿勢です。何故とことん主治医または他の医者にぶつかっていかないのか?自己責任を最後まで果たしていないのでは?責任を果たして、その上でお願いするなら分かるのですが、先生は決して便利屋、コンビニエンスではない事を肝に命じられる事をお願いします。老人の苦言として聞いて頂ければ幸いです。先生は宝なのですから!
2012.10.08 21:06
脊柱管狭窄症患者
人は誰でも未来を想像できます。その想像力が現在の産物です。皆んなで未来の脊椎疾患の理想な治療現場を想像すればそれは現実のものになり得ます。自分の将来、子供、孫と続く将来の姿......?想像力を活かし、出来る事をする時期に来ています。それと先生のブログをどう活かすかも我われの責務です。先生は大変な手術の合間に質問等には真剣に答えています。他の先生は診断に於いても答えられない?のに、それも無償で、今の世の中便利ばかり追求している風潮があり、簡単に考えていませんか?今は医師は少なく医者はいますが、ですから簡単に手術しない事です。医者も自信なければ手術しないで欲しいものです。手術するなら結果に責任を持って下さい。ブログでお分かりのように先生は戦場以外でも学会でMD手術の成果を機会ある毎に発表してますが他の医者は現状維持です。何故ならばその技術を習得する技術が無いか人の物は受け入れたくないと云うつまらなプライドがあるからかもしれません。従来型、現状維持型の医者が如何に多いかの証拠です。ですから我われは賢くならねばなりません。為政者は国民をコントロールする方法はただ無知にすればいいだけです。ですから皆さんチョットだけ考えて下さい。手術すべきか否か、自分の体です、この医者に任していいのか?
2012.10.08 20:38
drshujisato
ご指摘の通りと思います。診断が不確実、手術も不確実な中で発生している脊椎手術失敗の
犠牲者である患者に、よくならない責任を転嫁する脊椎外科の風潮に脊椎外科医で
ある私自身が義憤を感じます。責任放棄、責任転嫁、いつからこんな病根が医療界に
はびこったのでしょうか。脊椎外科医自身が自らの診断力や技術力の未達さを問わずして、
誰が問えるでしょうか。この難問を解き続ける先に医師の本懐が見えてくるのだと思います。
国民が望むより確実で、より苦痛の少ない治療へと進化させていく責任が医師にあるはずです。
ピンポイント手術である最小侵襲手術はそのような理念に基づいた手術法です。
2012.10.07 22:52
drshujisato
 心強い励ましの言葉ありがとうございます。
私はこの10年以上、毎年、日本脳神経外科学会総会や日本脊髄外科学会でMD法を中心にした最小侵襲手術の成果を発表してきました。シンポジストとしての発表もそれなりに行ってきました。しかし、最小侵襲手術の学会内での大きなうねりにはなりませんでした。最小侵襲手術は最少派のまま月日が過ぎることに忸怩たる思いでおりました。そんな折り、中東でツイッター革命ともよばれる市民の手による無血革命が起こりました。私は国民に脊椎外科の現状を変えるべく立ち上がって欲しいという思いでブログを開始しました。国民が脊椎外科にどんな治療を求めるのか、その要望を声を大にして叫んで頂きたい。それが脊椎外科の現状を変えるエネルギーになると信じます。そして、その運動に呼応する志の高い脊椎外科医が必ずや姿を現し、一大勢力になり、国民が希望する治療が全国で受けられる日が必ず来ると信じています。私は今月開催される日本脳神経外科学会総会で最小侵襲腰椎固定術について発表します。老兵なりの戦いをこれからも続けていく覚悟でおりますので、応援をお願い致します。
2012.10.07 22:22
Easton
青年医師よ大志を抱け!正に今の日本には必要な言葉かもしれません。先生は北海道出身ですが、何故か北海道には優秀な人格者の医師が多いのは土地柄なのかもしれません。そう云う医師が少なくとも県に一人か二人いれば不公平感は少し解消されるのですが、日本脊髄外科学会が本腰を入れて活動すれば可能性はあると思います。脊椎疾患の専門医が不足して現実を重く見る必要があります。もし個人的には学会に出席できれば訴えたいくらいです。記憶にありますが湾岸戦争で戦争のありかたが一変しました。ピンポイントでミサイルを発射し敵を破壊する攻撃のあり方です。脊椎疾患の医療も先端技術(MRI,CT.MD,MED手術)により、飛躍的に疾患の改善に寄与して来ました。しかしその道具に偏った治療で自己満足する医師を作り上げたのも事実です。いくらピンポイントで攻撃しても敵がいなければ何もなりません。敵、脊椎疾患は形をいろいろ変え潜んでいます。この真の敵を見つけるのが昨今難しくなり、攻撃側の医師が手を焼いている感じがします。道具よりも大切な物を忘れています。医師の本懐、志しは?
2012.10.07 17:27
脊椎管狭窄症患者
患者の為に人生をかける、正に先生の真骨頂です。若い医師の見本です。先生の元で修行する医師はいないのですか?志しがあり骨のある医師はいないのか?医師と云う仕事に誇りを持ち真剣勝負する医師はいないのか??疑問だらけで寂しくなります。先生は門戸を開きMD手術の研修医を募集してますが、あまりの応募が多く募集を締切るなら納得ですが、一人の力は限界があります。世の中決して公平ではなく、幸運だけもありません。先生の治療(手術)を受けられ改善した2,000人以上の方々にお願いします。皆様は幸運な方々です。その幸運を自分だけの物にせず多くの人に経験を伝え、今の脊椎疾患の現状を訴えて下さい。先生にも戦場以外(学会、大学.....)でも別の働きをお願いします。補給部隊、応援部隊が必要です。まだまだ老兵には去られては困ります。
2012.10.07 16:38
drshujisato
本当にその通りです。若い脊椎外科医が古い殻を破り、新しい脊椎外科の時代を開いていって欲しいと切望しています。
2012.10.06 22:54
drshujisato
木村さんのお母さんのように無念の内に人生を終わることのないよう、高齢者の腰椎手術の確立に残る人生を捧げる所存です。高齢者には多くの時間が残されておりません。できるだけ速やかに手術をしてやりたいのですが、手術待ちの患者さんが多く、ままならない状況に胸が痛みます。高齢者の腰椎手術に長けた若い脊椎外科医の育成がこれからの大きな課題ですが、これもままならぬ状況があり、戦場の老兵の悩みになっています。
2012.10.06 22:33
70歳 男性
全国に切ない思いの高齢者が何人いるでしょうか?長生きして良かったと思う社会が本当の成熟した社会、国なのですが、ため息がでます。佐藤先生みたいな医師がいる事は確かに希望ですが、永遠にいる訳ではありません。そう思うとまた腰が痛くなります。不自由な体は誰も嫌ですから。
2012.10.06 15:55
木村
あれほど手術を望んでいて叶えられなく、84歳で逝った亡母が生きていたら、佐藤先生を受診させていたのにと思うと切ないです。
2012.10.06 00:57

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