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腰椎椎間板ヘルニアに固定術は必要か? 何故、固定術が行われるのか?

.07 2012 腰椎椎間板ヘルニア comment(15) trackback(0)
最近、腰椎椎間板ヘルニアの術後、症状改善不良のため固定術を勧められているがどうしたらいいか、固定術を受けたが術前とは違った痛みに悩まされているなどの相談が寄せられています。このような悩みをお持ちの方は実際にはかなり多いのではと思われますので、説明いたします。

 先ず、椎間板ヘルニアや再発椎間板ヘルニアの手術には固定術は原則、不要です。原則といったのは、例えば、ヘルニア以外にすべり症や腰椎の不安定性のある方では、それらがヘルニアを起こした原因である可能性が高いことと、ヘルニアを摘出して下肢の症状が良くなっても腰痛が続いたり、ヘルニアが再発したり、すべり症が進行したりがありますので、この場合には私もヘルニア摘出術に固定術を同時に行います。しかし、 すべり症や不安定腰椎を伴わないヘルニアには固定術は基本的に不要というのが私の経験に基づく見解です。

では、なぜ固定術が行われているかを説明しましょう。手術でヘルニアを摘出したにも関わらず、坐骨神経痛などの症状の改善が得られない場合が起こり得ます。その一番の原因はヘルニアの摘出はなされたが、神経根への影響が完全に取り切れていない場合です。それにはヘルニアの摘出が不完全の場合、腰椎症や脊柱管狭窄症などを合併していて、これらによる神経根への影響が除去されていない場合などがあります。以前にも書きましたが、神経根に癒着があってもそれのみで痛みが残ることはありません。また、椎間板腔が狭くなっているから症状が良くならないこともありません。

すなわち、ヘルニアで術後も神経根症状の改善が不良な場合、下肢の痛みが残存する場合には、ヘルニアによる神経根の圧迫・絞扼という病的状態が手術によって解消されていないことが最も疑われるのです。

それならば、再手術をして神経根の除圧をきちっと行えば良いわけですが、神経根除圧は神経根を扱い慣れているベテランの脊椎外科医を除くと、一般には再手術で神経根を傷めないか、果たして良くできるかという再手術の不確定さに躊躇する医師が多いと思います。

そこで、脊椎外科の歴史の中で、伝統的に行われてきたのが固定術です。この手術は脊椎外科医がうつ最後の手、伝家の宝刀のように扱われてきました。では、なぜ、ヘルニアに対して固定術が有効なのか。ヘルニアの摘出が不完全に終わると、ヘルニアによる神経根の圧迫状態が残ります。そこに腰椎の動きが神経根の圧迫刺激を増すため、痛みが持続し、神経根の障害が進みます。その腰椎の動きを固定術で止めてしまうと、ヘルニアの圧迫状態が残っても、神経根の刺激による過敏状態が取れていき、痛みが出にくくなるのです。しかし、神経根の圧迫状態は残りますので、しびれや感覚障害の改善は進まないことがあります。とにかく、患者のつらい痛みをとることが固定術の役割として行われてきたのです。それは、現在においても伝家の宝刀として用いられているのです。

固定術は神経根の痛みを制する良い方法ではあるのですが、従来の固定術は大きく切開し、筋肉を広く剥離し、固定を行いますので、筋肉や靱帯のダメージが強く残ります。そのため、患者によってはつらく不快な腰痛を残すことになります。固定術で、下肢の痛みはよくなったが、術前にはなかった腰痛が発現したという話が多いのはそのためです。

腰椎椎間板ヘルニアで、術後、速やかに痛みが解消に向かう手術を行うことは、必ずしも容易なことではないのです。そのために、色々な問題が起こり、色々な原因が取りざたされ、患者は迷路に追い込まれてしまう現実があります。

ヘルニアを含め、すべての腰椎変性疾患の手術結果は、まさに脊椎外科医の診断力と技術力にかかっているのです。 


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drshujisato
15/08/16の鈴木さんへ

何か問題が起こったか、残っているように思われます。
まず、原因の正確な診断が必用です。
セカンドオピニオンを求められたらよいと思います。

FROM SHUJI SATO


2015.08.17 22:45
鈴木
本当に何度もすみません。今日歩いていて、自覚がなくひどい尿漏れがありました。本当に少しずつですが、痛みは減ってきていますが、術前はなかった左足の痛みと痺れはかわらず、リリカでしのいでいます。術前にはなかった尿漏れがあり、足の痺れといい尿漏れといい手術前と手術後が皆さんと逆のようですが、そういうこともありますか?尿漏れが筋肉を鍛えていけば治るものでしょうか?排尿障害が私はなかったので心配しております。遠方でも予約なしでも先生にはみていただけるのでしょうか?
2015.08.16 20:03
drshujisato
15/08/05の鈴木さんへ

症状に精神的な面の関与が疑われたため、向精神薬が処方されたのでしょう。トリプタノールは慢性痛に有効とされていますので、
薬剤選択においては、間違いないと思いますが、あなたの痛みを出しつづける原因がまだ残っているように思います。
精神的な痛みはあなたの症状の主因ではなく、必ず原因が腰椎に残っていると私は考えています。
原因の正確な診断が治療の成否を決めることを知っておいてください。
それではお大事に。

FROM SHUJI SATO
2015.08.09 23:17
鈴木
御丁寧に速い回答をありがとうございます。私のヘルニアは後ろに二箇所大きくでており、左や右には出ていなかったため、足には痛みも痺れもありませんでした。術後に左足内側から足さきに痛みがでたので、ゲージが神経にあたっているのではないかと思ったのですが、それはないのですね?ありがとうございます。それから筋肉か薄くボルトを稀に痛みで抜く方がいると聞きましたが、それが原因かもしれません。私も筋肉がペラペラだそうで、自分で触ってもボルトは全てわかりますし、嫌な痛みがあります。腰部の深部の痛みは術前から変わってない気がしますが、筋肉の痛みかもしれません。除圧が、きちんとされるの意味がわかりませんが、麻酔科に回されて、麻酔科の先生は二箇所も固定してあり、後ろは何もないから精神的な痛みだと言われました。ブロック注射をしましたが、2時間で痛みがもどりました。昨日からトリプタノールという向精神薬を飲み始めました。精神薬は昔デパスを切るのに大変苦労したので、飲みたくなかったのですが、リリカと置き換えていくという指示です。
間違っていませんか?
2015.08.05 16:19
drshujisato
15/08/04の鈴木さんへ  Re: 教えてください。

固定術後に徐々に痛みが軽くなっていく場合は、そのまま経過をみるので宜しいですが、
神経根の圧迫によって症状の改善が進まない場合には、神経根の再除圧術が必要になることがあります。
これらの判定はメールでは無理ですので、私の外来受診を検討してください。
ケージが神経に触れているから痛みがでるわけではありません。それなりの条件が重ならないと問題は起こりません。
不安が大変強いと思いますが、悲観することなく希望をもって乗り切ることを考えて下さい。
私にできることなら、力になりたいと思います。
それでは頑張って下さい。

FROM SHUJI SATO
2015.08.04 18:54
鈴木
コメントに対するご回答をありがとうございました。
三カ月して、ダメなら再検討もしないといけないとありましたが、どのような治療法がありますか?もしもCT画像でみえるようにゲージが少し神経よりにでており、除圧してあっても神経に触れているのであれば治す方法がありますか?手術の後悔と痛みとで死んでしまうかもしれないと弱気になっています。先生のところへ行ったらみていただけますか?
先生の病院はどこですか?たくさんの患者さんが先生を頼りにしていると思いますのにあつかましくすみません。でもまだやらなければならないことがたくさんあります。どうか助けてください。
2015.08.04 17:34
drshujisato
15/07/31の鈴木さんへ  Re: 固定術

まず、手術法について固定術が必要であったかの疑問が残ります。しかし、済んでしまったことですので、今これを問題にしても
仕方ありませんね。
術後の腰痛は、通常の切開法で筋肉を大きく剥離して、三つの骨を固定したのであれば、組織損傷による痛がまだ続いている可能性があります。創部痛だけの問題であれば、時間とともに軽減していく可能性があります。
しかし、あなたの場合は、術後に下肢の症状が発現していますので、手術によって何らかの神経障害が発生した可能性があります。
そうであるなら、その原因を明らかにして、処置法があるかを検討することが必要です。
通常は、固定術の問題はMRIやCTをとっても明らかにできないことが殆どです。固定術後の神経の問題は、金属の影響のため、画像では明らかにできないからです。
ボルとが骨の中にある限りは、神経に影響することは通常はありませんのでご心配なく。
やせているとボルとの頭が皮膚の直下にくるため、痛みを出しやすいことはあります。しかし、手術の結果が悪くなりやすいことはありませのでご安心ください。
手術後まだ日が浅いので、もうしばらく経過を見て(術後約3ヵ月間)、それでも下肢の症状が改善しない場合には再検討が必要と思います。
それではお大事に。

FROM SHUJI SATO

2015.08.03 14:37
鈴木
佐藤先生
固定術の手術前からこのページを読んでいたものです。
今年7月13日に固定術をしました。
ヘルニアはL345の後ろに二つ大きくでていましたが、足には全く症状がなく、腰部の奥が痛いという状態でした。昨年レーザーをしましたが、変わらず、リリカとボルタレンを一錠夜寝る前に飲めば、仕事も生活もできる状態でしたが、リリカが切れると痛くて耐えられない状態になり、初めて、椎間板がすり減っていて、前側が狭くなって不安定なので、手術すれば良くなると言われ、手術の2時間前まで迷って手術しました。手術は2椎間でした。一つだと上にもヘルニアが後ろに出ているので、又手術しないといけなくなるからついでにやっておいた方がよいと言われたからです。初めからあった腰部の痛みは倍増し、左足に痛みと痺れが起きています。痛みは手術日からずっとあり、もうこの痛みから逃れたいと死も考え出す始末です。担当の先生は綺麗に手術してくださり、術後3週間なのに、傷はとてもきれいです。手術は成功ですが、痛みの原因がわからず、MRIを撮ってもボルトはきれいに入っているとのこと。あまり痛いので、今日CTを撮ってもらいましたが、大丈夫ということでした。ですが、CT画像で入れた骨が後ろに少し出ているようにみえたので、ネット画像でみる固定術の画像と比べると。これが後ろの神経を押してないかと尋ねると、CT画像を縦にみてるから大丈夫と言われまして、もしこれが原因なら足の内側腿から痛くなるよと私の左足を触ってくれたのですが、まさにそこが痺れて痛いのです。1秒も痛くないことがなく、痛みに疲れてきています。日にち薬だと思いますが、同じ手術をした方は痛みはないと言っています。痛みは氷をずっと握ったままのような痛みで、誰かに助けてほしいです。今リリカを1日に4回飲んでいますが、痛みが10あるうちのご5くらいがずっとあります。
筋肉が薄くペラペラだったと執刀医の先生が言っていました。自分で触れてもかなりボルトが出ているので、痛みの原因が固定術の際に入れた骨が神経を押しているのではないか?筋肉が薄過ぎてボルトが適応できない体質ではないかいろいろと考えています。まだ日にちが浅く治ってくるのでしょうか?私達患者は手術が上手くいかなかったとしてもいいです。痛みさえとれたらそれでいいです。どんなことが考えられますか?
2015.07.31 17:01
陸翼
2度に渡る質問の回答、ありがとうございました。
簡潔かつ丁寧でわかりやすかったです。

装具が有効とのことなので、病院に行ったら聞いてみたいと思います。

また質問があったら、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
2012.10.14 19:39
drshujisato
質問1:手術で腱移行というモノがあるそうですが、これは固定術による麻痺でも効果があったケースはあったのでしょうか?
 
  回答:下垂足に対する手術のことですね。私にはこの手術の経験がないので残念ですが、適切なコメントで     きません。

質問2:また、装具なるモノがあるそうですが、つければいくらか違うのでしょうか?

  回答:下垂足では、鶏歩となりますので、装具で対応することが良いと思います。本院でもそのように対応     しています。

質問3:固定した骨で神経を圧迫する場合ってあるのでしょうか?それによる下垂足の麻痺はないのでしょうか?

  回答:その可能性はまずないと思いますね。神経根の固定術による障害には幾つかの可能性がありますが、
     何が原因であったかは、推測の域をでないと思います。

術後3年が経過していますので、おっしゃる通り、下垂足を前提にこれからの人生に前向きになっていただきたいと思います。
頑張ってください。

2012.10.13 18:16
陸翼
>佐藤先生
お返事、ありがとうございます。わかりやすい回答、感謝します。すいませんが、もう3つお願いします。

1、手術で腱移行というモノがあるそうですが、これは固定術による麻痺でも効果があったケースはあったのでしょうか?

2、また、装具なるモノがあるそうですが、つければいくらか違うのでしょうか?

3、固定した骨で神経を圧迫する場合ってあるのでしょうか?それによる下垂足の麻痺はないのでしょうか?

よろしくお願いします。


>手術失敗経験者さん
3年目になるので、いずれにせよきっちりしたいと思います。
ありがとうございました。
2012.10.13 00:25
手術失敗経験者
陸翼さん
お気の毒です。私も失敗の経験者です。手術した医師は今の症状について何と説明しているのですか?多分原因不明なのでは?よくあるケースです。佐藤先生が言うようにL5神経症状で麻痺で時間の経過があり、回復は難しいかもしれません。痛み痺れはまだ神経が生きてますから治癒する可能性は高いのですが、何故もっと早く処置出来なかったと悔やまれます。後遺障害が思い場合は医療過誤のケースが考えられますが?いずれにして原因だけははっきりしておいた方がいいと思います。
2012.10.08 16:53
drshujisato
手術後の下垂足ですが、手術中にL5神経根に障害がおきたためです。
L4/5の手術では、ヘルニアにせよ、狭窄症にせよ、すべり症にせよ、下垂足が起こり得ます。
不完全な麻痺なら、ある程度の改善が期待できますが、障害の程度が強いと
回復不良になります。術後3ヵ月で回復の目途が立ちますが、貴方の場合、既に3年経過してい
ますので、麻痺は固定していると受け止めて下さい。下腿筋の萎縮も進み、下腿が細くなって
いると思います。現状維持のためのリハビリと思い、歩行訓練などは続けて下さい。
メチコバールは神経系のビタミン剤ですが、時期的に見て効果はありませんので、中止してよいです。
これからは運動が薬と思って、現状維持につとめて下さい。
2012.10.08 10:07
陸翼
すいません、今、HPの左手に質問相談室という個別のページがあったみたいなのに、間違えてこちらにコメントしてしまいました。申し訳ございません。この質問も相談室に書き込んだ方がよろしいでしょうか?

よろしくお願いします。
2012.10.08 03:37
陸翼
はじめまして。前々からこちらを見させて頂いてます。
お聞きしたいことがあり、はじめてコメントさせて頂きました。

自分は約3年前に固定術(L4/L5)を行っているのですが、術後から右足下垂足に麻痺がおこっています。

最初の2~3か月は多少の改善が見られましたが、半年近くから、まったく改善が見されません。
メチコバールを定期的にもらっていますが、もう3年近くも経ちます。この下垂足麻痺の回復はもはや絶望的なのでしょうか?

よろしくお願いします。
2012.10.08 03:25

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