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腰痛と鬱(うつ)の絡み合い

.25 2012 腰椎椎間板ヘルニア comment(0) trackback(0)
昨今、慢性腰痛はストレスが原因として多いとされ、その対策が強調されています。痛みは時間軸から、急性腰痛と慢性腰痛に分けられます。腰椎椎間板ヘルニアは急性腰痛で始まり、慢性腰痛へと移行することが多い。この慢性化にストレスが精神的要因として関与するという考え方に私も異論はありません。しかし、椎間板ヘルニア発症後の慢性腰痛=ストレス、椎間板ヘルニアは慢性腰痛の原因ではないと言い切ることはできないと私は考えています。

 腰椎椎間板ヘルニアはMRIで描出、診断できますが、無症状のヘルニアが偶然発見されることが多いことは既に良く知られています。このことがヘルニアの病的意味づけやその扱いを困難にしています。しかし、このことを以て、椎間板ヘルニアが腰痛の原因ではないとは言えないのです。

腰椎椎間板ヘルニアは、物を持ち上げるなどの特定の動作やくしゃみなどをきっかけに発症することが多いですが、明らかな出来事なしに発症することもあります。例えば、夜就眠する時には痛みはなかったにも関わらず、朝、腰痛で起きられないということもあるのです。

腰痛が起こって最初の約2週間は急性炎症期と言って、痛みの強い、動きなどで痛みが増強しやすい時期ですので、治療では安静が必要と今まで説明してきた通りです。この時期に運動療法を行うのは誤りで、痛みを悪くするだけです。安静が基本です。2週間を過ぎ、炎症が消退し、動くことの苦痛が軽減されてきたなら、その頃から、少しづつ無理なく運動を開始することが必要です。

急性期の痛みが慢性化せず順調に消失する方と、痛みの程度は急性期程ではないにせよ持続し、慢性化する方がいるのです。後者の場合には、ヘルニアによる腰痛の外、神経根の圧迫症状、すなわち、坐骨神経痛など臀部から大腿部の痛みや下腿・足の痛み、しびれを伴っていることが多く見られます。

このように、腰椎椎間板ヘルニアでは、炎症が終息して収まる痛みと炎症が治まっても、あるいは燻(くすぶ)りながら持続する痛みがあるのです。この急性期から長く続く痛みが患者を不安にさせ、生活の支障などと絡んで、精神面では鬱状態を招くのです。もちろん、鬱状態になりやすい性格的な傾向はあるにせよ、正常な日常生活がいつまで経っても回復しない悩み、痛みをこらえながらの就労、薬物治療などの無効は患者の不安、ストレスを増大していきます。痛みに対する周囲の無理解、担当医の曖昧な態度などが患者のストレスを倍増することもあります。

このように痛みとストレスが慢性化する過程で、脳レベルでは痛みを抑制する神経系統の機能不全を引き起こし、精神的な要因の関与が強い慢性腰痛へと移行していくことは十分に推測、理解できることです。

慢性腰痛の治療薬として、抗鬱薬や痛みの抑制系を賦活する薬剤、抗不安薬、精神安定剤、時に抗てんかん薬が用いられるのは、上記した理由に基づきます。

痛みが長引き、神経障害性痛みと精神的要因の痛みが複雑に絡み合うと、痛みの負のスパイラルが引き起こされます。この悪循環を断ち切るために、ヘルニアに対する外科的治療の介入時期を見極めることが重要と私は考えています。

このブログで繰り返し述べてきましたが、椎間板ヘルニアの多くは未だ、診断さえ適切に行われていない現状があります。症状の原因であるヘルニアがMRIに描出されているにもかかわらず、それを診断できなかったり、MRIの撮影の仕方が不十分でヘルニアを描出できなかったりが多く見られます。また、長々と無効な保存治療を続け、患者を不安に陥れてしまうことも少なくありません。このような椎間板ヘルニアの臨床レベルにおいて、慢性腰痛の原因として精神的ストレスのみが強調されるのは間違いと思うのです。
急性腰痛の元々の原因を正確に診断し、適切に治療することで痛みの慢性化を回避できるのではと私は考えるのです。


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