腰椎変性疾患に対する優れた手術法とそれをこなす技術を持っていても、手術が失敗に終わることは少なくない。その原因で最も多いのが医師の診断力不足である。
昔から、見立てが良いのが名医の条件とされてきた。患者の病気が正しく診断できれば、選択すべき良薬が決まり、その薬効で患者の病気は治るからである。しかし、見立ての悪い医師は誤った診断を行い、見当違いの薬を処方してしまうことになり、その結果として患者の病気は良くならないどころか、悪化してしまうことになる。
上記のことは内科医に対して言われてきたことであるが、同じことが外科医にも言えるのである。特に腰椎変性疾患は診断自体が難しい領域である。患者の症状の原因を的確に自信をもって診断することは至難の業なのである。そのため、患者の症状の真の原因である腰椎病変をMRIなどで診断できずに、誤った部位に手術が行われる悲劇が繰り返されている。執刀した外科医はそれを手術の失敗と言わず、その原因を患者の側に求める風潮が強くなっている。寒々とした悲しい現実である。
他の施設で手術を受け、良くならないために私を受診される患者はこのブログでいつも書くように多い。最近、L4/5の腰椎椎間板ヘルニアでPELDを受けたが、症状の改善は得られず、次第に悪化している患者が術後1年を過ぎて私を受診した。執刀医は自らの診断と手術の誤りに気づいていないのである。この患者では、ヘルニアを摘出してもL5神経根の症状は良くならない脊柱管外側狭窄を認めた。この狭窄が術前のMRIと比べても術後そのまま残存している。これこそがこの患者の下肢痛の原因なのである。手術でやらなければならないことは、L4/5の脊柱管外側部でL5神経根を除圧することである。このような見立ての悪さから、failed back surgery(失敗した腰椎手術)が発生することは今までも繰り返し述べてきた。最新の手術法を駆使できるから名医ではない。的確な診断力が技術力にともなってこそ名医といえるのである。
繰り返し強調するが、手術法の選択の前に重要なことは正確な診断であることを肝に銘じて欲しい。良薬であっても、見立てが悪ければ毒にもなる。新しい手術法であるMDでも、MEDでも、PELDでも、それらの手術方法が患者の症状を良くするわけではない。症状の原因になっている神経根とその圧迫部位を正確に診断して、それを的確に除圧することによってしか症状の改善は得られないのである。手術方法は単なる手段でしかないことを一般の方々に知って欲しい。手術法が優先される考え方は危険なことも知って欲しいのである。
NPO法人日本医師事務作業補助研究会主催の「配置管理者セミナー in 大阪」のご案内
日時: 2013年2月2日(土) 13:30~16:50
場所: 新大阪丸ビル別館 (新大阪駅東口より徒歩2分)
詳細は 配置管理者セミナー in 大阪 プログラム (申込受付開始は11月1日~)
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
思っております。応援クリックお願いいたします。

- 関連記事
-
trackbackURL:https://spine.drshujisato.com/tb.php/242-853c9c4d