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腰椎手術の名医とは?

.15 2013 腰椎椎間板ヘルニア comment(4) trackback(0)
腰椎変性疾患に対する優れた手術法とそれをこなす技術を持っていても、手術が失敗に終わることは少なくない。その原因で最も多いのが医師の診断力不足である。

昔から、見立てが良いのが名医の条件とされてきた。患者の病気が正しく診断できれば、選択すべき良薬が決まり、その薬効で患者の病気は治るからである。しかし、見立ての悪い医師は誤った診断を行い、見当違いの薬を処方してしまうことになり、その結果として患者の病気は良くならないどころか、悪化してしまうことになる。

上記のことは内科医に対して言われてきたことであるが、同じことが外科医にも言えるのである。特に腰椎変性疾患は診断自体が難しい領域である。患者の症状の原因を的確に自信をもって診断することは至難の業なのである。そのため、患者の症状の真の原因である腰椎病変をMRIなどで診断できずに、誤った部位に手術が行われる悲劇が繰り返されている。執刀した外科医はそれを手術の失敗と言わず、その原因を患者の側に求める風潮が強くなっている。寒々とした悲しい現実である。

 他の施設で手術を受け、良くならないために私を受診される患者はこのブログでいつも書くように多い。最近、L4/5の腰椎椎間板ヘルニアでPELDを受けたが、症状の改善は得られず、次第に悪化している患者が術後1年を過ぎて私を受診した。執刀医は自らの診断と手術の誤りに気づいていないのである。この患者では、ヘルニアを摘出してもL5神経根の症状は良くならない脊柱管外側狭窄を認めた。この狭窄が術前のMRIと比べても術後そのまま残存している。これこそがこの患者の下肢痛の原因なのである。手術でやらなければならないことは、L4/5の脊柱管外側部でL5神経根を除圧することである。このような見立ての悪さから、failed back surgery(失敗した腰椎手術)が発生することは今までも繰り返し述べてきた。最新の手術法を駆使できるから名医ではない。的確な診断力が技術力にともなってこそ名医といえるのである。

 繰り返し強調するが、手術法の選択の前に重要なことは正確な診断であることを肝に銘じて欲しい。良薬であっても、見立てが悪ければ毒にもなる。新しい手術法であるMDでも、MEDでも、PELDでも、それらの手術方法が患者の症状を良くするわけではない。症状の原因になっている神経根とその圧迫部位を正確に診断して、それを的確に除圧することによってしか症状の改善は得られないのである。手術方法は単なる手段でしかないことを一般の方々に知って欲しい。手術法が優先される考え方は危険なことも知って欲しいのである。

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drshujisato
17/07/20の小山さんへ

腰椎椎間板ヘルニアの手術適応およびその時期についてですが、学会の方針は自然回復する可能性のある患者に手術治療のリスクを負わせるべきでないという考え方が根本にあります。それだけ、手術成績が安定していないからです。
私は、患者さんの症状程度によっては学会の方針通りにはしておりません。下肢の筋力低下がある場合は、早期手術の適応があります。
あなたの神経学的異常所見とMRIを見ていないので、正確性に欠ける回答になりますが、学会のガイドラインはあくまでも一般論であり、最終的には個々の患者さんの症状や重症度に応じて決定されるべきです。

FROM SHUJI SATO
2015.07.21 23:08
小山
48歳 男 初めてメールします。よろしくお願いいたします。

質問;椎間板ヘルニアによる座骨神経痛の症状で3週間寝たきりの状態です。このまま保存的治療で起き上がれるようになるのかとても心配です。このまま寝たきり状態が続くのであれば、なるべく早く手術を受け、早期に社会復帰したいと思いますが、学会ガイドラインでは3カ月の保存的治療後に手術の是非を判断すると聞きました。今現在の私の病状と発症後3週間という段階で手術の是非を判断するのは早すぎるのでしょうか。

補足説明;そもそもギックリ腰を幾度も経験しています。昨年は3回発症し、近所の鍼灸マッサージに通っていました。3週間前に中腰作業をした後、お尻から爪先にかけて激痛が走り立ち上がれなくなりました。近所の整形外科医でMRI検査の結果、椎間板ヘルニアと診断されました(MRI画像を見させてもらいましたが、L※※などの部位の表記はわかりません)。現在まで、服薬(ロキソニン)、静脈注射(ザルソロイチン、計6回)、仙骨ブロック注射(計1回)を受けましたが、左側のお尻、太もも、ふくらはぎ、足の裏、爪先の痛み、しびれ が激しく、布団から立ち上がっても3分と持ちません。トイレに起きる、通院のために自家用車の助手席に乗り込む以外は寝たきりの生活が続いています。3週間経過し、発症後1日〜2日の間の痛みに比べれば、現在の痛みそのものは和らいできていますが、寝たきり状態から抜け出せず、体重も3キロ落ちました。学会ガイドラインでは3カ月の保存的措置の後のやむを得ない措置として手術を選択すると聞きました。主治医も「当面は薬、注射と牽引などのリハビリ」とおしゃっています。しかし、このままの状態では自分も家族もまいっていまいそうで心配です。
2015.07.20 11:03
drshujisato
腰部脊柱管狭窄症の手術を内視鏡で受けているそうですが、腰椎の何番の狭窄症で手術を受けられたのでしょうか?
圧迫骨折は第1腰椎とのことですが、MRIでヘルニアの所見が出ているのは何番の腰椎でしょうか?
現在の症状からは、ヘルニアが疑われますが、圧迫骨折による症状もあるのかも知れません。
狭窄症の術後の状態がどうなっているのか、ヘルニアと圧迫骨折の状態はどうであるかによって、今後の治療法が異なると思います。書いていただいた情報からは、原因診断を行うことは難しいです。
治療に関しては、実際に治療を受けてみて、効果を感じられない治療であるのなら、続ける意味はないと思います。もちろん、治療期間を考慮する必要はありますが。
現在の治療を続けていて、今後、症状がよくなるかは腰椎の病気次第です。貴方の症状の適切な原因分析が必要と感じられます。
2014.05.21 18:59
-
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2014.05.19 15:09

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