今回手術を行ったのは71歳女性。
2010年7月に両下肢のしびれと痛み、立位や歩行が困難になり受診された。MRIではL4/5に進んだ脊柱管狭窄症を認め、手術予定とした。
しかし、手術予定日までの間に下肢の症状は改善し、日常生活に支障がなくなったため
手術を中止。
ところが、2012年12月頃から再び、両下肢のしびれと痛みが発現するようになり、前回よりも程度は強くなった。プロレナールやリリカが処方されたが効果なく、立位・歩行障害も進行し始めた。
再検したMRIでは、脊柱管狭窄の程度は強くなっていた。そのため、再度手術を予定した。
2013年8月の手術までの間、下肢の痛みやしびれは持続し、歩行障害も続いた。
手術は、MD法により正中右側から直径16mmのチューブレトレクターを挿入し、手術顕微鏡下に両側のL5神経根と馬尾神経を除圧した。両側L5神経根の拘扼は高度であった。
手術所用時間は50分、出血量は10mlであった。手術時間が短いのが私の手術の特徴の一つであり、そのような手術法へと改良を進めた。
麻酔から覚めた後の患者さんの言葉は、「痛みもしびれも感じません。嘘のようです。」
骨としての問題である脊柱管狭窄が進んでいても、拘扼されている神経が良好な回復性を残している患者さんでは、神経除圧によって下肢の症状は速やかに解消することがある。この患者さんの症状の解消の仕方はこのことを示している。
通常、神経の障害が進んでいる患者さんでは、術後すぐには立位や歩行はしやすくなるが、下肢のしびれや痛みが軽減するには時間を要するのが普通です。
いつも書くように、手術治療のタイミングは症状の術後回復に大きく関係する。といっても、早すぎる必要はない。そのタイミングを見極める目が脊椎外科医に必要です。
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