腰椎椎間板ヘルニアによる慢性的な腰痛に悩む患者さんは実に多いというのが私の経験からの印象です。慢性的とは腰痛が3ヵ月以上続くものを指しますが、半年以上あるいは1年以上も腰痛を繰り返す患者さんがおられます。
腰痛のみのヘルニアの場合には、保存治療が選択されるのが普通ですが、半年以上も繰り返す、あるいは持続する腰痛に対する治療方針として、私は手術治療を選択することがあります。
どんな腰痛に手術を行うかというと、半年以上、腰痛が持続し、痛みが増強するため長く座っていられない、腰を屈めての作業が痛みのために困難である、せきやくしゃみで強い痛みが誘発される、仕事を続けることに大きな支障がある、痛みのために気分が塞ぎがちになる。このような腰痛を持ち続ける患者さんは人生に悲観的な態度を取るようになります。
生活の質を重視した腰椎椎間板ヘルニアに対する治療方針として、手術治療は極めて効果が高いと私は確信しています。
手術治療が必要になった椎間板ヘルニアに共通している特徴は、椎間板脱出の防波堤として機能している線維輪という名の靱帯が部分的に破れ、脆くなった椎間板組織が弱くなった靱帯を押し伸ばし、火山のように盛り上がった状態にあることです。このような椎間板では椎間板への加重によって腰痛が起こります。つまり、椎間板への加重が、脱出しているヘルニアを更に押し出そうとして、靱帯が過度に伸展緊張することによって腰痛が引き起こされるのです。
このような椎間板では、MD手術によりヘルニアと共に変性して傷んだ椎間板組織を摘出することで椎間板内の減圧が図られ、除痛効果が得られます。長く座っていても、車のシートに座っていても、動作・歩行などによっても腰痛が起こらなくなります。
従って、腰痛のみのヘルニアでも条件によっては手術治療を考慮すべきというのが私の考えです。
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