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腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の術後症状回復の良し悪しを決めるのは?

.21 2013 腰椎椎間板ヘルニア comment(15) trackback(0)
下に示した図は腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の術後に症状がどのように変化していくかを表しています。

神経障害がある患者は赤線、神経障害がない患者は青線で示してあります。
縦軸は症状の程度の目安であり、横軸は術後日数を示します。
手術~術後2日間は神経の除圧効果による症状改善期、術後2~7日間は手術後に起こる炎症期で痛みが強くなる時期(その程度は個々で異なります)、術後7~14日間は炎症消退期で術後強くなった痛みが再び引いていく時期、術後14日から6ヵ月は神経障害の回復期に当たります。

術前神経障害のない患者(青線)は神経根の圧迫・拘扼のみによる症状のため、症状は手術翌日までに著しい改善を示します。激痛を含め下肢の症状が殆ど消失することが普通に見られます。しかし、術後2日目頃から7日目頃までは炎症による痛みが発現・増強しますが、それも2週間までには消失していきます。すなわち、術前に神経障害の進んでない患者では症状の消失が良好に得られます。

一方、神経障害が進んでいる患者(赤線)では、術後2日間は神経除圧により症状改善が得られますが、神経障害による症状は残ります。つまり、除圧効果による症状改善は不十分となります。具体的には下肢の痛みは軽減するものの、痛みやしびれは残存します。これらの残存症状は術後2~7日の炎症期に再び増強します。そして、7日以降は炎症が終息するに合わせて症状の改善が得られます。しかし、神経障害による下肢の痛みやしびれが本格的に回復を迎えるのは術後14日頃からであり、時間をかけながら、少しずつ改善は進みますが、しびれなどが消失するには6ヵ月以上かかることも少なくありません。患者によっては、しびれが残ることもあります。

これらのことが示すのは術前の神経障害がどこまで進んでいたかによって、術後の症状回復は大きく異なることです。どんなに良い手術が行われても、神経障害が進んでしまった患者では、術後の症状回復にはより長い時間が必要となり、かつ不完全に終わることが少なくありません。
手術を行うタイミングが重要であることを知って頂きたい。

術後経過図

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drshujisato
17/04/22 あじこさんへ   Re: 本が届きました

 本を購入して頂き、ありがとうございます。活用していただければ幸いです。
ご質問の件ですが、このブログを通じた情報のみで、いくら専門とはいえ、私が診療の中に立ち入ることは適切ではないと思いますので治療中の病院にお問い合わせ下さい。
それではお大事に。

from SHUJI SATO
2017.04.23 23:15
あじこ
丁寧に質問に答えていただきありがとうございました!
本が届いたので、一通り読んでみました。
手術を終えてからだけど、さらに理解を深めるために読んでよかったな、と思います。
手術をめちゃくちゃびびっていたあの頃のわたしに読んでもらえてたら、と思わなくはないけど、これはこれでよかったと思います。

さて、今日で術後9日目、夜中〜朝方は痛いけど、それ以外の時間はじっとしてたら痛みがない時間もでてきて、炎症がひいてきているのかな?と思っています。
ここで一つ悩んでいることがありまして、予定だと5/1に初めての術後検診だったのですが、痛みがでたことから早めに診てもらおうと、明日新幹線で2時間半ほどの移動をしようか、と思っておりました。
術後すぐにその時間の移動をしたときは痛みが少しあるくらいだったので、移動をしましたし、こまめに身体を動かしながら移動することができましたが、現在ちょっと痛みがひいてきているかも?の状態で移動をして、月曜に病院に行くべきなのか悩んでいます。
痛みがでてきたときは痛いから早く診て欲しいと思っていましたが、今はその移動に耐えられるかも不安があるし、退院後4日目から安静にして身体を動かしてもいないし、また痛みがましたらという怖さがあり、やっぱりもう1週間待ってもいいのではないかと、どうしたものか悩んでいます。

とても小さなことですが、佐藤先生のお答えをいただき参考にできたらな、と思いました。
2017.04.22 16:08
drshujisato
17/04/20のあじこさんへ   Re: 読んでみます

質問にお答えします。

退院後のリハビリについては、一般に手術患者さんでは慎重に進めるべきと思います。
先ずはウオーキングを中心に自分の腰の状態や体調に合わせて歩行スピードや歩行距離を調整するのがよいでしょう。
始めから腰の伸展や屈曲、回旋などの積極的な運動は控えて、これらは徐々に行っていく方が安全と思います。
運動はやっただけ良くなるわけではなく、急ぎ過ぎず無理なく継続できるメニューが必要です。

入浴の件ですが、術後1週間までは身体を洗う程度にとどめ、ゆっくりと湯船につかり温まるのは
術後1週間をすぎてからの方がよいでしょう。1週間以内に身体を温めると炎症を強め、痛みが増強する恐れがあるからです。

以上、参考になれば幸いです。
本を読んで頂けるとのことありがとうございます。お役に立てれば幸いです。

from SHUJI SATO



2017.04.20 22:16
あじこ
ご返信ありがとうございます。
他の記事や他の方のコメントと返信なども読ませていただき、さらに理解を深めております。
また、本も注文しました。届くのが楽しみです。

手術を受けた病院から離れた場所にて静養しているため、すぐに病院に行けないこともあり、そしてやはり痛みが増し、不安が募る毎日ですが、予定よりも早い来週早々に術後の検診を受けに行くことにもしました。
グラフのように今日あたりをピークに少しでも痛みがひいていてくれるといいです。

退院後はリハビリのストレッチをやるといいと指導を受けましたが、そちらも無理せずやらない方がいいのでしょうか?また、一番風呂であれば、お風呂も浸かって大丈夫と説明を受けましたが、炎症期はお風呂で温まるということも避けたほうがよろしいのでしょうか?

再度のコメントと質問、失礼致します。
29歳女性L4/5 あじこ
2017.04.20 05:44
drshujisato
17/04/18のあじこさんへ  Re: PELD術後5日目

私の記事で安心できたのでしたら良かったです。
私が書いた本「腰椎手術はこわくない」に皆さんが疑問に感じる腰ヘルニアの謎について書いてありますので
参考にしてください。
それではお大事に。

from SHUJI SATO
2017.04.18 23:47
あじこ
術後の痛みに悩んでいました。
ほぼ寝たきりの状態になってしまい、ついに手術を決心。13日朝一手術をして、その日の夜にはまったく痛みがなく歩けたのに、術後2日目の夜あたりからだんだん元の痛みが出始め、術後5日目の今朝、とても痛くて術後の経過について調べたところここにたどり着きました。

いままでの流れがまさにこの表通り!と思い、だんだんと痛みがひいてくれることを願っています。
痛みが強くなってくるとつい不安に苛まれがちですが、まだ術後5日目。気負いせずその時をゆっくり待ちたいと思いました。

ありがとうございました。
2017.04.18 05:31
drshujisato
14/12/04のセレちゃんへ

 腰部脊柱管狭窄症の術後の再発とすると、再発が早すぎると思います。あなたの年齢はいくつですか?
症状はどんな症状でしたが、最初の術前症状は?
そして、現在はどのような症状ですか?具体的に症状を書いてみてください。
脊柱管狭窄症なのか、違うのか、それが重要なポイントです。
さらに、何番の腰椎にどんな手術を受けたか、わかれば教えてください。
肉芽腫組織だけで、再発が起こるか、私は疑問に感じますね。

FROM SHUJI SATO
2014.12.04 21:31
セレちゃん
腰部脊柱管狭窄症1回目の手術を受け8カ月に再発
肉芽で狭窄2回目の手術で2カ月で痛み再発 また 肉芽が出来たら と 思うと怖くて3度目の手術は 受けたくありませんどうしたら 良いでしょうか?
佐藤先生よいアドバイスお願いします。
2014.12.04 16:32
pchan
佐藤先生、お返事、アドバイスありがとうございます。先生がおっしゃったことをしっかり受け止め、焦らず冷静に、大きく構えて経過をみたいと思います!このブログを見つけて読んでとても勉強になりますし、この腰と付き合って行く覚悟のようなものができました。先生のアドバイスが無ければ、私は主治医も自分さえも信じることが出来ないどうしようもない患者になっていたと思います。感謝いたします。主治医は先生のおっしゃる通り、信頼出来る腕の確かな医師だと思います。断られることの多いと聞く再発ヘルニアの手術をして頂いて、こうして座ることなどができるようになりました。感謝の気持ちを忘れないでいたいと思います。脊椎外科医は毎日のように神経が隣り合わせの危険が伴う脊椎の難しい手術をされていますが、医師じゃない私には考えられない、並大抵でない精神力をお持ちのことと思います。すごいです。佐藤先生、かなりご多忙と思いますが、どうぞご自愛ください。ありがとうございました。
2013.11.22 00:35
drshujisato
再発腰ヘルニアに対してPED法を受けた術後の相談ですね。再発ヘルニアの手術は技術的にはより高度の技術が必要であり、それをPEDでやったのですから、腕に自信のある医師であったろうと思います。術後座ったり、歩いたりが出来るようになっているのでしたら、神経根の影響は概ね取り除かれていると思われます。術後まだ、1週間くらいということですので、下肢の痛みやしびれは術後直ぐには強くなることもありますので、このまま経過をみるのでよいと思いますよ。まだ、腰部にも痛みは出やすい時期だと思います。
冷静にこれからの経過をみてください。

2013.11.21 00:18
pchan
佐藤秀次先生、はじめまして。私は20代女性です。先生のブログはとても丁寧で分かりやすく、患者に対する熱意が伝わって来ますし、こんなに熱心なお医者さんがいるのかと、素晴らしいと思いながら読ませて頂いています。そのような先生に私も診て頂きたかったです。。今まさに患っていて、精神的に辛い状況です。よろしければ一言アドバイス頂きたく、ここに来ました。私は10代でL5S1の腰椎椎間板ヘルニアを患い、実家近くの病院にて顕微鏡下LOVE法の手術を受けました。術後経過も良く、それから4年間は疲労が溜まった時に不調になるくらいで、もう完治したと思っていました。しかし、今年の9月半ばに見に覚えのある違和感から激しい左の座骨神経痛に変わり、座位,立位,歩行が少しの間でも難しくなりました。現住所近くの病院でMRIを撮ったところ、嫌な予感は的中し、同じ箇所の再発と診断されました。そして先日、PED法にて再発ヘルニアの手術を受けました。術後数時間で起きて術前は痛くて困難だった座ることが出来、歩行もできるようになりました。しかし、足の痺れは術前より強く感じ、左腰から臀部太腿にかけての痛みもまだある状態です。先生の術後経過の表の通り、手術後まだ1週間だからと考えるべきなのでしょうか。それにしても腰に関しては寝返りを打つ時などは激痛でこれからの学生生活のこともあり不安です。主治医は術後の説明は重症で難しかったけど大丈夫とのことでした。なかなか口足らずな方で、、一方、私は心配性ですし、正直言うと信頼関係が結べていない気がします。術後も私の様に少しは良くなったものの、痛さが残る方はいらっしゃるのでしょうか。ご多忙のところをすみませんが、アドバイス頂けると嬉しく思います。よろしくお願いします。
2013.11.20 12:46
drshujisato
13/09/27のGさんへ

 ありがとうございます。私は術前に術後の取り得る経過として説明しています。椎間板ヘルニアでは、ヘルニア摘出直後には痛みが激減するにも関わらず、2~3日後から再び痛みが発現するため、患者によってはヘルニアの再発を心配される方がおります。予め説明しておくと、その時期を冷静に受けとめられますよね。不安は痛みを強くしますので、不安を解消することは大事なことです。旅行のスケジュール表のような感覚で術後のことが患者さんにわかりやすくなればいいなと思い作りました。作った甲斐ががありました(笑)。

佐藤秀次
2013.09.29 20:46
この表は本当に助かります。回復の流れがとてもわかりやすいです。


私は頸椎の椎間孔拡大術の術後10日目を迎えています。症状出現期間はここ2年で通算10か月でした。症状が進むことが怖くて早めに踏み切ったつもりでしたが、曲線と照らし合わすと、そうでもなかったのかな・・・と。



それから、実は、6日目あたりから創部が熱を持ちヒリヒリし、2割ぐらいだった痛みが強まり、不安でたまりませんでした。(創部周辺のみ術前の8割の痛み)


病院で相談したら、ステロイドの点滴をして頂いたのですが、こういう時に用いられるのですね。自分だけ特別悪いのかな、と心配になっていました。


当たり前ですが、術後の腫脹や熱感、痛みについて、主治医とこまめに相談し、手を打ってもらうことが大切なのですね。



2013.09.27 21:41
drshujisato
佐藤さんへ

 おっしゃる通りです。「様子を見ましょう」は脊椎外科医のみならず医師の常套文句になっています。確かに様子を見ることが必要な場合多いです。しかし、その場合には医師がいつまで様子を見るのか、その結果、次にどのような治療法を持っているのか、これが重要です。様子をみる期間と具体的な対応策をもたず、ただ、「様子を見ましょう」は、「どうにもできない」、「わからない」と同義の言葉と受けとめられてしまうでしょう。「様子を見ましょう」の犠牲になる脊椎患者は実に多いのが実情です。外科医が患者に手術で残す後遺症もありますが、保存治療を行う医師が患者に残す後遺症の方が遙かに多いと私は思います。保存治療の最中に足が麻痺して下垂足になり、手術をしても治らない患者は昔も今も発生しています。
患者が賢くなることが必要です。

佐藤秀次

「様子を見る」は
2013.09.23 00:01
佐藤
いつも興味深く読ませて頂いてます。

神経の障害が酷く進む前に手術をしたほうが予後も良いということですね。
であれば、多くの医師が患者に説明される手術をするかしないかの判断では遅すぎると思いました。

@膀胱直腸障害ないので様子を見ましょう
@麻痺がないので様子を見ましょう
@歩けないわけではないので様子をみましょう

上記の症状では患者に我慢をするよう説明して
もっともっと酷くなってから手術を決断することになります。
すると、後遺症の残る可能性が高い状態で手術をすることになりますね。

患者 「先生、やっぱり痛いです」
医師 「手術は成功してます、様子を見ましょう」

私の周りにもこういう話をたくさん聞きます。
手術前にも何年も様子を見ましょうと言われて
手術後も様子を見ましょうと言われます。
様子を見ましょう・・・様子を見ましょう・・・ずっと言われ続けます。
手術するかどうか適切な判断ができる医師がたくさん増えて欲しいです。
遅すぎる手術にならないように・・・。
2013.09.22 09:25

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