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診断が難しく、つらい生活を送っていた若い腰部脊柱管狭窄症の事例

.08 2013 腰部脊柱管狭窄症 comment(12) trackback(0)
最近、経験した30代の患者さんの事例を紹介します。
この患者さんは、腰椎椎間板ヘルニアの手術歴があります。1年前から腰痛と下肢痛があり、立位姿勢を保つことや歩行中に下肢の痛みが発現増強するため歩けなくなる状態がありました。歩いていると自然に腰が前に曲がってくると自覚していました。受診した病院では、手術するほどのヘルニアを含めて問題はないと説明されていました。しかし、症状は好転しないため私の外来を受診されました。

検査の結果、MRIではL4/5の脊柱管の外側狭窄を認め、軽く膨隆した椎間板と椎間関節(正確には上関節突起)間でL5神経根が拘扼されていました。その所見は右に強く、症状の強い側と一致していました。

生活上の支障が大きいため、16mmの皮膚切開とチューブレトレクターと手術顕微鏡を用いたMD法により、両側のL5神経根の除圧を行いました。手術時間は丁度1時間、出血量は5mlでした。

術後は、腰を伸ばして寝ていることができるようになり、立位保持や歩行障害が改善しています。まだ、神経性の下肢の痛みは残りますが、術後1週間ですので、これから回復が進むでしょう。患者さんには素敵な笑顔が戻ってきました。

この患者さんでは、MRIを一見したところでは、脊柱管は狭くなく、むしろ広いと言って良いのですが、L5神経根が脊柱管外側部で拘扼を受けやすい走行をしていました。この神経根の走行は先天的なものであり、加齢により脊柱管が狭くなることで容易に神経根が影響を受けることになるのです。このようなタイプの脊柱管狭窄症は若い人で見られることが多く、診断がなされず、つらい不自由な生活を強いられていることが多いと思います。

そこで、注意していただきたいことは、立位や歩行で腰痛や臀部・大腿・下腿の痛みやしびれが発現・増強し、腰を前に曲げたり座ったりすると改善する方では、MRI所見で脊柱管狭窄はないと言われても、必ずその種の問題がありますので、それを診断してもらえる専門医を探し求めて下さい。諦めないことです。

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drshujisato
15/05/13のななさんへ  Re: 首.上腕の痛み、手の動かしにくさについて。

長い経過の中で、両上肢の痛みやしびれや手の使いにくさが進んでおり、足にもしびれが発現していることから
脊髄・神経根の圧迫が解消しない状態で、脊髄・神経根症状が徐々に進行しているのだろうと思います。
保存治療の効果は期待できないのではないでしょうか。
私の経験からいうと、手術を考えた方がよい段階にきているのではないかと思われます。
これはあくまでも参考意見としてください。

それではお大事に。

FROM SHUJI SATO

2015.05.13 23:36
-
このコメントは管理者の承認待ちです
2015.05.13 20:51
drshujisato
申し訳ありませんが、病院や医師の紹介はしておりませんのでご了承下さい。
2013.11.26 22:44
drshujisato
脊柱管狭窄と椎間孔狭窄は異なるものです。例えば、L4/5の脊柱管狭窄ではL5神経根、L4/5の椎間孔狭窄ではL4神経根が障害を受けます。L5神経根は障害を受けうる部位が3カ所あるのです。それはL4/5の脊柱管外側部とL5/S1の椎間孔部、さらにL5/S1の椎間孔外でも障害を受ける場合があります。このように、一番難しい診断がL5神経根症の原因と部位の診断なのです。このL5神経根は坐骨神経になる神経ですので、坐骨神経痛の原因として最も多くを占めています。
2013.11.26 22:41
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このコメントは管理者の承認待ちです
2013.11.26 11:34
佐藤先生、お忙しいなかお返事ありがとうございました。
すぐにでも先生に診ていただきたいのですが、北海道にすんでいるので簡単にはいけませんが、一日でもはやく受診できるようがんばってみます。ありがとうございました。
2013.11.26 10:17
佐藤先生
質問お願いします。「L4/5の脊柱管の外側狭窄を認め」とブログ内にありますが、L4/5椎間孔狭窄とはまた違う病態でしょうか?  
L4/5椎間孔狭窄はL4神経の障害を受け、L5/S1椎間孔狭窄はL5神経の障害を受けるという理解でよろしいでしょうか?

神経の走行の理解に難儀します。
机上の学問だけでは理解不十分ですので、先生に教えて頂きたくメッセージしました。 失礼しました、
2013.11.26 01:57
drshujisato
腰椎すべり症に対する腰椎固定術後の下肢症状の悪化は、すべり矯正による神経根障害が考えられます。腰椎4番と5番の矯正では、多くの場合、腰椎5番の神経根障害が発生します。症状は臀部から大腿外側、下腿外側、足背の痛み、しびれであり、足関節の背屈力低下を伴う事も少なくありません。冷感も強いことが多いです。この場合、腰椎5番の神経根の除圧術で症状の改善が得られるかは、直接診察させていただき、画像検査で検討することが必要です。私の外来受診は勿論引き受けますので、受診ご希望の場合には、本院の医療秘書室で診察予約をお願いします。
2013.11.25 23:59
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最近腰に違和感を感じておりました。症状によっていろいろな病気があることを知りました。大変勉強になります。
2013.11.25 21:59
はじめまして、先生のブログを拝見いたしまして母のことでご相談にのっていただきたくコメントさせていただきました。
母は67才です。昨年12月、第4腰椎すべり症の固定術および狭窄症1ヶ所の矯正術を受けました。手術は成功しましたが、右下肢から足指まで痺れ痛みこわばり硬直ひきつりがひどく一年経ちましたが若干軽くなった程度でペインクリック、鍼灸を続けました。日々辛い毎日を送ってます。今後改善の期待はあるでしょうか?原因もわからずつらいと言っていますので、どうしたらいいのでしょうか?先生に診ていただきたいのですが、可能でしょうか?
2013.11.25 14:04
drshujisato
信頼できる医師が見つかり良かったですね。
私は、腰痛や下肢痛やしびれの原因不明や手術で改善ない場合には、診断と手術のいずれかに誤りがあると考えてきました。そして、再手術でそれを実証してきました。貴方の言われる通り、正しい診断か否か、それが問題なのです。正しい診断ができる医師は腕も立つというのが私の印象です。

佐藤秀次
2013.11.11 23:47
佐藤
いつも楽しみにしてます。

地元で期待できる医師をやっとみつけました。
知り合いの繋がりで地元の大病院で3回もヘルニア手術して
それでも全く改善しなかった方が隣県の病院を紹介されて手術をしたそうです。(4回目の手術になります)
すると、嘘のように治ったそうです。

この話を聞いた時に、先生がブログに書いてる通りだと思いました。
「正しい診断」です。
おそらく、最初の3回は診断の段階で見落としがあったのではないかと素人ながら思いました。
そして、正しく診断できる医師の手術(4回目)で原因となっていた部分を手術できたので治ったのだと思ってます。
今回は診断がいかに大切かを感じました。



2013.11.11 15:59

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