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医師から治しようがないと言われ、歩けなくなってから私の手術を受けに来られた後期高齢者の女性

.14 2014 腰椎変性辷り症 comment(22) trackback(0)
70代後半の女性が遠く県外から私の脊椎専門外来を受診されました。
症状は、5年以上の経過をもつ腰痛と左下肢の痛みと間欠性跛行であり、3~5mの歩行が限界です。排尿障害もあります。腰を伸ばした姿勢を維持できない、座位や右下に寝ると痛みは軽減し、移動には車椅子が必要な状態でした。

神経症状として、左に強い両側の足関節の背屈力の低下と左下肢に強い痛みとしびれを認めました。

腰椎レントゲン撮影前後像
 YH 77 F XP AP
腰椎レントゲン撮影側面像
YH 77 F XP LN
所見:腰椎症性変化が高度であり、椎間板は潰れ、側彎変形も認める。L3/4には変性すべり症もあります。

腰椎MRI矢状断像
YH 77 F MRI S

腰椎MRI冠状断像
YH 77 F MRI C
所見:L3/4のすべり症のところで、高度の脊柱管狭窄を認め、その他、多椎間で狭窄性変化と椎間板ヘルニアを認めます。
さらに、L4/5では左に強い両側の椎間孔狭窄を認め、その他の椎間にも側彎変形による椎間孔狭窄があります。

この患者さんの症状の原因は、(1)L4/5の脊柱管狭窄と(2)L4/5の左の椎間孔狭窄、(3)L3/4の変性すべり症と脊柱管狭窄であり、これらによる馬尾症候と左L5とL4神経根症と診断しました。その他の部位にもそれなりの狭窄病変と椎間板ヘルニアがありますが、神経症状には関係していないと判断しました。L3/4にすべり症がありますが、不安定性は軽いことと年齢を考えて、まずは神経除圧術のみを行うことにいたしました。

手術所見
YH 77 F OPF
図の右ではL4/5の手術所見のみが書かれています。左の骨の図は、左側から両側の神経除圧を行ったことを表しています(片側からの両側除圧です)。

手術はL4/5の正中に18mmの皮膚切開を加え、左からチューブレトレクターを骨まで挿入し、手術顕微鏡下に骨を削り、厚くなった黄色靭帯を切除し、両側のL5神経根と左の椎間孔拡大術を行い、左L4神経根を除圧しました。いずれの神経根も脊柱管内や椎間孔内で強く絞扼されていました。
さらに、すべり症のあるL3/4では、正中に同じく18mmの切開を加えて、左からチューブレトレクターを骨まで挿入して、両側で厚くなった黄色靭帯を切除し、強く絞扼された硬膜管(馬尾)の除圧をおこないました。

手術時間は2時間20分、出血量は15mlです。

術後経過は順調で、腰痛と左下肢の痛みは消失し、歩行訓練を開始しています。長い経過で、術前に神経症状が進んでいたので、症状改善には時間を要すると思いますが、術前に患者さんが一番望んでおられた痛みのない、歩行のできる体に戻る可能性が高くなってきました。リハビリにも元気が湧くことと思います。なによりも笑顔が患者さんの心の中の明るさを良く表していると思います。

術後の画像は、一般の方々が見てもわからないと思いますので、割愛しました。

この患者さんが私ども外科医に教えてくれることは、どんなに骨が変形していても、狭窄症やヘルニアが多発していても、
患者さんを長く苦しめている神経を圧迫・絞扼している部位が特定でき、そこにおける神経除圧が的確になされるなら、腰痛や神経症状は改善が期待できるということです。

私は、このような高齢者の腰椎疾患を治して、痛みのない生活の質の改善を図ることが、高齢化社会を迎える我が国の脊椎外科医にとって重要な使命になるであろう考えています。、

ネバーギブアップ、諦めてはだめです。良くなる可能性がある限りは。

腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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けいこ
患者とって.医師選びは本当に.難しい問題と感じてます。特に今回の「椎間板症」を持ってしまった事で.実感しました。来週水曜日に.今の主治医さん(専門医登録ない)じゃなくて…「整形外科専門医」さんを受診決めました。今の主治医さん&専門医さんの日だと.不味いので。その専門医さんのみの日に。骨折より「椎間板症」はややこしいですね。
2014.07.05 09:03
drshujisato
医師選びは皆さんが頭を痛めている問題のようです。
自分の症状の原因を的確に診断してくれ、適切な治療を考えてくれ、きちっと説明してくれる医師が
理想だと思います。
担当医がそのような医師であればいいですね。
2014.07.04 21:09
けいこ
コルセットを洗濯するため.半日外して&半日細いコルセットして過ごしてみました。その結果は…「痛くてコルセットしないと歩くの辛い.細いコルセット意味ない」でした。病院から出るコルセットは.原則「手洗い」なので…洗濯ネットに入れて.濯ぎ×脱水をすませて.もう着用しています。整形外科は2人の先生で…私の主治医さん×整形外科専門医さんです。整形外科専門医さんに変える事は.悪い事ではないですよね?「もしかしたら .違うアドレスと治療に関して教えてくれるかも」と。かれこれ1ヶ月経過してしまいましたが.先生変えてみるのも.選択肢にあっても良いかな?と。
2014.07.03 21:53
drshujisato
「痛みの原因は背骨が三本下がっており、そこが神経に当たってるからとの事でした。なので、そのうち二本『4,5番』を上げて止める手術をしないといけないと言われました。」

 医師から受けられた上記の診断と手術法について、理解に苦しんでいます。背骨が三本下がっているという意味が分からず、また4番と5番を上げて止める手術という意味もわかりません。そのため、残念ですが、コメントできません。悪しからず。
2014.07.03 20:48
大塚祥子
6月29日に父の事で相談させてもらいました。有難うございました。あれから、県内の病院で診てもらい、脊椎管狭窄症もありますが、痛みの原因は背骨が三本下がっており、そこが神経に当たってるからとの事でした。なので、そのうち二本『4,5番』を上げて止める手術をしないといけないと言われました。個人病院なので、手術は、三か月待ちだという事です。父も、ショックを受けておりましたが、何よりも、三か月も痛みに耐えなければならない事が一番不安です。リリカと言う薬は頂きましたが、三か月間もの間、激痛に襲われないかが心配です。皆さん、この位待たれるのは普通なのでしょうか?マックスの時は痛がり方が、見てても尋常じゃないので、可哀そうです。
2014.07.02 18:43
けいこ
やっぱり.そうなんですね~コルセットをしてても…台所作業(中腰)してると.辛くなるので(>_<)となります。何気に「左足親指が痛い」と.感じて「今の保存治療で大丈夫なのかな…?」と。尾骨も違和感感じるし.今の主治医さんを信頼してない訳ではないのですが(苦笑)。前回受診時に「僕だって中腰したら痛いよ」と。あの…主人公は私なんですけど―(ToT)(心の叫び)。
2014.07.01 09:10
drshujisato
左足の親指へ痛みが走るようですが、腰椎5番の神経根の症状と思います。腰椎にその原因があると思いますよ。
主治医に伝えることは必要ですが、その情報を診断・治療にどのように利用できるか、それは医師次第です。
信頼できる専門医に診てもらうことが必要ですよ。
2014.06.30 22:29
けいこ
左足の親指まで痛み走る様になりました…冷湿布で様子見中ですが。これも.主治医さんに伝えた方良いですよね?原因はやっぱり…腰からでしょうか?参考までに先生の考えを。
2014.06.30 10:03
けいこ
どんな質問でも…分かりやすく可能な範囲内でのアドバイス…。先生のブログに参加して正解でした!「やっぱり専門医さんだけある」と。今までは…一方的に(ノ-o-)ノ ┫的なのばかりでした。自分に合う主治医を探すのは.本当に大変な事ですよね。将来性考えて.若いうちに本格的治療を開始してくれる先生とvsあくまで保存治療を強調する先生。痛み度は変わりないため.日常生活に支障出てますし.将来性考えた先生選びたいです。いつか自分が結婚して.子供出来た時&出産する時に.どう影響が出てどう対応するべきか?そう言う事まで考慮して下さる先生が.1番と考えてます。
2014.06.30 09:20
drshujisato
症状からは腰椎に原因があると思われます。原因が特定できれば、小切開で高い安全性の手術で現在の症状をよくできる可能性があると思います。ブログ相談室でお断りしているように、医師の紹介はしておりませんので
ご承知ください。
2014.06.29 23:57
大塚祥子
78歳の父親が、4月から、右足の痛みと痺れに苦しんでおり、一日一日を、やっと、やり過ごしてるような状態です。体重も5キロ痩せてしまいました。手術に、怖がっており、私も悩んでいます。九州内で、坐骨神経痛、狭窄症、すべり症の、ご紹介いただける先生は、いらっしゃいませでしょうか。
2014.06.29 19:46
drshujisato
仙骨部に嚢胞があるとのこと、多分、くも膜のう胞と思います。
これは先天的なもので、それ自体が病的な意味を持つことは殆どないと言ってよいです。
くも膜のう胞の程度は個人によって随分違いがあり、かなり大きなものもあります。
腰椎ブロックによって、万が一、嚢胞内に薬物を注入することがあったりすると、困るので
ブロックは避けた方が良いと言われたのでしょう。
腰椎麻酔に関しては、通常は問題ないと思いますが、医師には伝えておいた方がよいと思います。

2014.06.29 19:03
かれん
こんばんは。
ブログ拝見させて頂いてます。
質問ですが、以前MRI で仙骨部に嚢胞があると診断を受けましたが、腰椎麻酔を受ける事は可能でしょうか? このような場合、通常はブロック注射は避けると言われました。幸い座骨神経痛等の症状はありませんが、今後腰椎麻酔を受ける事になった場合は、医師に状況を伝えるべきでしょうか?腰椎麻酔とブロック注射は関係がありますか?
2014.06.28 22:23
けいこ
パキパキ音が何故なるのか?を.今の主治医さんに聞いたら「体質かもね…」的な回答でした。明らかにパキパキ音は.腰痛始まってから.発生してます。自分にしか聞こえないのかな…とか.自分の体なのでなるべく.治療に参加してます。変化があれば申告しますよ~先日も外出先で.左側の腰痛→臀部から下と…痛みが強く走り.帰宅してから半日以上痛みが…いじけてしまいたいくらい(-.-;)。3ヶ月労災通院してから.脊柱専門医さんいる病院に行こうかと。だって「痛み感じるのも×辛いのも.患者である自分だけですから」手指の骨折も経験してますし.椎間板は建物で言えば基礎ですよね?多少.時間かかってもいい…だから.基礎をしっかり治療してくれる.脊柱専門医さんを探します。
2014.06.26 23:10
drshujisato
Q:
  傷んだ椎間板を取り.骨盤の骨を移植する治療があると.インターネットで見聞きしましたが.腰痛が残る場合に  適応されますか?

A: 腰痛のみに対して、固定術を行うことは少ないですが、あるとすれば、分離症や腰椎が不安定のために腰痛が改善しない患者さんでしょうか。腰椎の病気によっては、あり得ますが、椎間板症といわれるものでは、私は行うことはありませんね。
2014.06.26 09:31
けいこ
お忙しい中.回答コメントありがとうございます。パキパキ音は…そう言う原因から.発生するんですね~本当に勉強になります 。元に戻らないと言われても.患者にしてみれば「じゃあ…一生涯コルセット&痛み止め&湿布」続けるの?治すために通院してるのに。脊柱専門医さん受診するとしたら.紹介状必要になりますよね?検査データ貰う事出来るのでしょうか…?。同じ検査を受けないで転院したいです。どれだけ経過したら.治療考え治す事になるんでしょうかね~ 。傷んだ椎間板を取り.骨盤の骨を移植する治療があると.インターネットで見聞きしましたが.腰痛が残る場合に適応されますか?
2014.06.23 22:28
drshujisato
椎間板が狭くなっているが、腰痛のない人はいくらでもいます。椎間板がつぶれて狭くなっている=腰痛ではありません。椎間板がつぶれると、椎間関節という関節に無理がかかり、関節の緩みや亜脱臼が生じることがあります。関節が緩み、擦れ合う音がぱきぱきとした音として自覚されているのではと思います。
椎間板がつぶれると、ヘルニアや椎間孔狭窄などを通じて、腰痛や下肢痛を出すことが多いと私は考えています。
歳をとると、椎間板は潰れていく傾向にありますが、それ自体が貴方の症状を出しているわけではないと思います。腰椎はやはり、専門医の診断と治療を受けることをお勧めします。整形外科も専門化が進み、脊椎に関しては脊椎専門医が今では常識です。
2014.06.23 21:39
けいこ
仙腸関節について.分かりやすい解説をありがとうございました。私の主治医さんは…脊柱専門医さんではないです。インターネットで調べましたが.載ってなかったんですよね。「脊柱専門医さんではないですが.整形外科医さんだから大丈夫」と。母の脊柱菅狭窄症発覚も.地元の総合病院整形外科に1年通院して.座骨神経痛→筋肉痛と…結局は.知り合いのツテで脊柱専門医のいる病院に.飛び込みましたが。総合病院の整形外科の専門は「下肢専門医・一般整形」でした。要は「レントゲンやMRI検査で.脊柱に異常認める場合.専門医さんじゃないと駄目!?」と.思ったんです。正式な病名が分かった時「1年も我慢した母の精神力にびっくり・やっぱり専門医さんなんだ…」と。私も.今の主治医さんで完治しなければ.母の主治医さんに診てもらおうと思ってます。
2014.06.21 22:20
けいこ
19日MRI検査受けて来ました。主治医さんからは「椎間板症だね」「減った椎間板は元に戻らないよ」「就寝時以外はコルセット着用」「中腰しない」「急性時だから.痛みは数ヶ月かかる」→以上でした。後ろ側の椎間板がスリ減ってるのは.理解出来たんですが…元に戻らない=痛み止めでごまかすしかないって事かな…と。背骨がパキパキ音がするのは.椎間板が減ってるから「バランス悪くてパキパキ音するって事」ですよね?痛み我慢してるうちに.何でパキパキ音するの?と。コルセットで歩けるうちに.ブロック注射でもしてくれたら…1週間でも良いから痛み忘れたいな。昔は足首の捻挫した時.個人の整形外科では血管注射してくれましたが…。飲み薬はキツイし胃荒らすから~と。あとは2週間後受診ですけど.減った椎間板の補助をする.何かを埋め込む簡単な手術ってないもんかな(-_-;)と。
2014.06.21 20:56
佐藤
ありがとうございます。

勉強になりました。
2014.06.16 19:35
drshujisato
質問1: 腰椎不安定というのはMRIで診断できるのでしょうか?
それともレントゲンで可能でしょうか?

回答:腰椎に不安定性があるかどうかを診断するには、レントゲン撮影で屈曲位と伸展位の動体撮影が必要です。MRIでは、すべり症とそれに伴う脊柱管狭窄症は診断できますが、不安定性があるかまではわかりません。
MRIで、すべり症がなくても、貴方が診断を受けたように、レントゲンの動体撮影で腰椎に不安定性があることがわかります。私は、脊髄造影検査を行いませんが、この検査でも屈曲位や伸展位などで撮影を行います。すると。脊柱管の狭窄状態と共に不安定性も診断できます。その点では、脊髄造影検査は有用です。しかし、造影剤を使う検査ですので、副作用があり得ることから、私は行っていません。MRIでは狭窄症がわかり、レントゲンの動体撮影では不安定性が診断できるからです。

腰椎の検査で、MRIしか行わない医師は脊椎専門医ではないと言って良いでしょう。レントゲンの動体撮影は腰痛診断に必須です。もう少し詳しく言いますと、私は、始めての患者さんでは、レントゲン撮影6方向の指示を出します。6方向とは、前後像、側面伸展・屈曲・中立位、左右の斜位を言います。これらとMRIをあわせることで、腰椎の病気のことがよくわかるんですよ。

腰椎不安定症は、前屈姿勢の時に明らかになります。従って、貴方が言われるように
「前屈姿勢によるレントゲンが不安定症の診断に関係してるような気がします。」はその通りです。
また、貴方が言われる、「腰痛の原因を特定するためには直立姿勢のレントゲン+前屈姿勢のレントゲン+MRIが必要なのかと思ってます。」は正解です。

質問2: 今回の先生のブログの画像を見ると前屈姿勢のレントゲンが無いように思いますが、それでも不安定症の有無がわかるんですね。

回答:ブログの患者さんでは、レントゲン撮影を6方向で検討しています。ブログには載せませんでしたが、不安定性の評価はしているんですよ。腰椎の不安定性については、貴方の理解していることが正しいと思ってください。
2014.06.15 22:16
-
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2014.06.15 09:04

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