長い腰痛癧と両下肢の痛みとしびれを持ち、歩行が困難になってきた80歳の女性患者が受診されました。
検査の結果、L5の両側分離症でL5/S1にすべり症を伴っていました。
MRIでは、予想通りにL5/S1の両側で椎間孔狭窄が進行しており、右側で狭窄は強く、下肢の症状が左に強いことと
一致した所見でした。
身体的には、高血圧や糖尿病などがあり、決して良好といえる状態にはありませんでした。
痛みをとり、歩けるようになりたいとのご本人の希望が強いために、手術することを決めました。
問題はどのような手術法をとるかです。
理想的には、私の行っている最小侵襲の神経除圧術とTLIFという椎体間固定とペディクルスクリュー固定術ですが、
患者さんは、高齢であり、骨粗そう症も年齢相応に見られ、身体的条件は余りよくないことから、
固定術は行わず、MD法による両側の椎間孔でL5神経根の除圧術のみを行うことを決定しました。
術後にはコルセット装着など、後療法をきちっと守ってもらうことを指導いたしました。
手術は、両側の筋間アプローチ(多裂筋と最長筋の間からのアプローチ)をとることにし、腰の真ん中から左右40mmに
20mm弱の皮膚切開を加え、直径18mm、長さ60mmのチューブレトレクターと手術顕微鏡を用いた,MD法により
両側のL5神経根を椎間孔内から外にかけて除圧しました。内側では、脊柱管までとしました。
手術所見はMRI画像で予想されたとおり、右側でL5神経根の圧迫は強く、瘢痕性組織と強く癒着していました。
両側でL5神経根が充分に除圧されたことを確認し、閉創しました。私はMD法では創部にドレーンは留置しません。
手術時間は1時間35分、出血量は10mlでした。
患者さんは、翌日から離床開始し、簡単なリハビリを開始しました。足にまだしびれ感は残りますが、痛みはなくなり、
歩行も順調に改善に向かっています。
この患者さんの今後の問題は、すべり部の不安定な骨の状態は軽いですが、両側分離症があり、固定術を行っていませんので、手術部位での再発が起こらないかです。後療法をきちんと行ってもらい、良くなったことを過信せず、無理をかけ過ぎないよう生活してもらうことを指導するつもりです。
手術は、患者さんの年齢、持病、その他の身体条件を十分に踏まえて、どのような方法を採るかを決めることが必要です。医師は手術の安全と効果には充分に配慮できても、患者さんの退院後生活まではコントロールできませんので、患者となられた方は医師の指導を軽視することなく、その後は自己責任の部分が大きいと覚悟して、生活の質を維持して頂きたいと望みます。
腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んでいただきたいと
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