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しばしば見逃される坐骨神経痛の原因とは?

.22 2014 坐骨神経痛 comment(21) trackback(0)
原因診断の困難な坐骨神経痛、その重要な原因でありながら、見逃されやすい椎間孔狭窄症の男性患者の術前・術後経過を紹介します。

患者 68歳 男性

 現病歴:数年前から時々、腰痛があったが、しばらく様子をみていると治っていた。今回は平成26年5月頃から腰痛と右下肢に痛みとしびれが発現し、改善しなくなった。
座位で、腰・右大腿外側・前面に痛みがあるが、下腿には痛みもしびれもなし。腰を伸ばす姿勢や立ったり座ったりの動作時、5分ほどの立位で上記した痛みが強くなる。左下肢に症状はなし。

神経学的所見として、知覚障害や筋力低下なし。ラセグー徴候陰性。
痛みの部位を示した身体図(赤:痛み、青:しびれ)
 右L5-S1 FS 術前身体図

レントゲン撮影、CT、MRI所見:
 軽度の側彎変形と右側のL5/S1に腰椎症性椎間孔狭窄を認める。
術前MRIとCT(右CTの赤矢印は骨棘を示す。左MRIの赤矢印は変形肥大した椎間関節を示す)
右L5-S1 FS 術前CT MRI

診断:腰椎症性椎間孔狭窄症 右L5/S1によるL5神経根性坐骨神経痛

手術:MD法による右L5/S1の椎間孔拡大術、右L5神経根除圧
手術時間:33分、出血量:5ml

術後1週間目の身体図(腰部や大腿部の痛みは消失し、臀部のみに軽い痛みを認めます)
右L5-S1 FS 術後1週間の身体図
術後MRIとCT(左は3次元CT画像で、右L5/S1に手術による小さな骨窓を認める)
右L5-S1 FS 術後CT MRI

術後9日目に退院されたが、術前の腰痛と右下肢の痛みは消失し、立位保持や動作時にも痛みの発現なし。
退院時の身体図(痛みもしびれもなし)
右L5-S1 FS 退院時の身体図
  
翌日離床開始。術後鎮痛剤の服用(-)、通院治療不要

コメント:腰椎症によるこの患者さんのような椎間孔狭窄症による腰痛や坐骨神経痛の方の受診が増えています。手術を受けたが症状の良くならなかった坐骨神経痛の患者さんの中にもこのような椎間孔狭窄症が潜んでいます。
私は、術前と術後1週間、退院時と、少なくとも3回は患者さん自身に痛みの部位と範囲を図示してもらうことにしています。この情報が診断に極めて重要です。さらに、術前から退院時までに痛みやしびれがどのように変化しているかを知ることは、手術の効果を評価する重要な指標とも考えています。

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関連記事

しゃぼん玉
佐藤先生。

動画頂けないのは残念ですが了解しました。
2014.11.08 12:32
drshujisato
14/11/03のしゃぼん玉さんへ

MD法の動画を公開できるようにしたいと思います。
編集を加えると、なかなか手間がかかるのですがね。
以前には、手術ビデオをコピーして希望する患者さんに渡していた時期もあるのですが、
現在は、BUSY過ぎて、対応できない状態です。
がっかりされるかも知れませんが、ご了解ください。

from SHUJI SATO
2014.11.07 23:20
-
このコメントは管理者の承認待ちです
2014.11.05 00:57
しゃぼん玉
佐藤先生。

お忙しい中ありがとうございます。
動画のアップ楽しみに待ちます。

先生は患者さんが自分の手術の映像を記念に欲しいと言われたら
コピーしてくれるのでしょうか?
全身麻酔で手術を受けてる間にどのような手術をされたのか
見てみたい(怖いもの見たさかもしれませんが)人もおられると思います。
私も頂けるものなら見てみたい派です。

2014.11.03 11:10
drshujisato
14/11/02のシャボン玉さんへ

今度、時間を見て、腰椎変性疾患の手術ビデオをアップしましょうかね。
私の手術ライブラリーには3000件以上のDVDやVHSなどの記録がありますが、
編集が大変で、数ばかりが増え続けています。

FROM SHUJI SATO
2014.11.02 23:21
drshujisato
14/11/01のTMさんへ  
   Re: 9月16日大阪から

ご期待に添えるよう全力を尽くします。

FROM SHUJI SATO
2014.11.02 22:16
しゃぼん玉
佐藤先生。

先生が過去の記事で手術の動画をアップされてますが
下記の3つを今見ました。

・神経根の腋窩に遊離した椎間板ヘルニア
・超外側型椎間板ヘルニア 右L3/4
・頚椎椎間板ヘルニア 左側C5/6

他にも先生の手術動画はありますか?
医者じゃないのでテクニックを学びたいというわけではありませんが、先生の手術をいろいろ見てみたいので一つのカテゴリにまとめて紹介してもらえると嬉しいです。

2014.11.02 10:06
-
このコメントは管理者の承認待ちです
2014.11.01 08:53
TM
昨日無事に母は入院しました。
病院の接遇、非常にいいですね。
私は職場に戻り金沢脳神経外科病院の話をスタッフにすると関心をもって聞いてくれます。
母は既往がありますが、どうかよろしくお願いします。
母も今度こそ痛みがなくなると期待しています。

2014.11.01 00:03
drshujisato
14/10/31のしゃぼん玉さんへ
       Re: タイトルなし

腰椎に原因のある腰や下肢の症状であれば、診断できる自信はあります。
複数の医師の目にとまらない問題というと、かなり限られてくると思います。
期待に応えられるよう頑張りましょう。

FROM SHUJI SATO
2014.10.31 23:29
drshujisato
14/10/31のけいこさんへ  
      Re: 迷い…

 聴き方にもよると思いますが、[・・・の可能性はありませんか?]と質問することは問題ないと思いますよ。
それでおかしな対応をする医師なら、やめた方がよいでしょう。

 まず、貴方の診断がどうなのか、それによって治療方針が決まりますので、他の医師の診断が正しいかどうか
わからない現状においては、貴方の治療に関する提案は困難ですね。

from SHUJI SATO
2014.10.31 23:18
しゃぼん玉
脊椎疾患の難しさは自分の体験(いろんな病院で診てもらって)で痛感してます。

先生の診察を楽しみにしてます。
「これでやっと原因がわかる」、「やっと治してもらえる」という期待の気持ちと、「もし先生でもわからなかったらどうしよう」という不安もあります。

いろんな病院をまわって駄目だった経験があるのでどうしても不安もな気持ちもあります。

寒くなってきてるので診察日まで体調を崩さないように気をつけます。
よろしくお願いします。

2014.10.31 21:21
けいこ
患者側から…脊柱専門医である主治医さんに「椎間孔狭窄症」の話題出すのは.やっぱり…おかしな話ですよね(汗)?先生のブログ文を読んで.もしかしたら…と。背骨の亜脱臼音(パキパキ音)治まらないし.椎間孔狭窄症もあったりして(汗)なんて思ったりします。セレコックスも効き目がいまいちだし…1日2回の指示だし.痺れ×痛み×間欠坡歩もあるし…私生活にかなりの影響出てますし。根本的治療は「今でしょう!」と.思いますが…うん…先生なら.椎間板症×脊柱管狭窄症で.鎮痛剤も効果ない患者さんにたいして治療.どう提案しますか?参考までにお聞かせ下さると嬉しいです。
2014.10.31 08:11
-
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2014.10.30 09:21
drshujisato
14/10/29のけいこさんへ

医師同士の反目は、患者さんにとって困りますよね。
しかし、医師が反目し合うことは希ならずあり、困った問題と私も思います。
医師同士が応酬しあうのならまだしもですが、間に患者を挟んでやりあうのは
頂けないと思います。
患者さんとしては、本当に困りますよね。

FROM SHUJI SATO
2014.10.29 23:50
けいこ
ありがとうございます。座骨神経痛と…もう1つ病気の可能性もありか。画像とトンカチ検査で.脊柱管狭窄を見つける事と.もう1つの病気を見つけるの.どっち難しいです?それと…どんなに腕が良くても.悪化した病気の手術の成功と.軽いうち(後遺症残さない)の手術も.受け入れる整形外科医こそ求められてるのでは?と。あと…地元の整形で主治医が未発見の狭窄症。脊柱専門医さんが発見してくれましたが→脊柱専門医さんが郵送してた指導書を.地元の整形の.主治医さんに無視されたのがショックでした(地元は脊柱専門医てない)で.それを脊柱専門医さん(今の主治医さん)に説明したら「それはないでしょうと!」と。お医者さん同士のトラブルに巻き込まれた患者が.1番困っているる現実。解決法ってないのでしょうか…
2014.10.29 20:06
-
このコメントは管理者の承認待ちです
2014.10.28 14:29
drshujisato
手術治療のタイミングについては、医師によって判断が様々なのが現状ですね。
この問題ついては、以前にもブログで説明しましたが、患者さんの生活の質を重視する立場で手術治療を判断する医師はまだまだ少ないですね。そのため、問診の際に、患者さんの生活の質や障害程度を聞き取る医師が少ないのであろうと思います。患者さんの側からは、生活の質が一番の問題になっているのですがね。患者さんと医師の間では問題意識に大きなズレがあると思いますよ。

from SHUJI SATO
2014.10.27 18:53
けいこ
脊柱管狭窄症と診断されて7ヶ月経過しました。投薬もロキソニン→ノイロトピン→現在はセレコックス。間欠坡歩は意外と酷くなって.炎症がなかなか引かないため.服用してますが「痛み止めも対処療法だし.7ヶ月か…複雑な気持ち」。痛み我慢してるため鬱気味になり.心療内科のお薬を服用始めました。脊柱専門医さんって.意外と寝たきり程の重症者以外は興味ない?とか。痛みを感じるのも個人差あるけど…歩く時の激痛とか.日常生活を見てもらえたら.きっと分かるハズ。あとは…患者とのコミニュケーション力の問題か…。
2014.10.25 23:41
drshujisato
14/10/24の中本さんへ

 始めまして。ブログ読んで頂き、ありがとう。
私はこの身体図を一番大事にしています。
この身体図を見ると、患者さんの問題がかなり絞り込めます。
症状の全体像を把握する方法として、身体図は大変有効です。
人の記憶はあてにならないものですので、この身体図があると、患者さんの症状の
推移が一目瞭然になります。
これからも宜しくお願いしますね。

FROM SHUJI SATO
2014.10.24 23:56
中本
佐藤先生はじめまして
腰部脊柱菅狭窄症と言われてから、この病気について勉強しなくてはと思い、いつもこのブログを拝見させて頂いています。

この痛みを表す身体図いいですね♪
いつも受信日に、どこが痛いとか痺れるとか説明するんですが、たとえば腰から臀部の間が左右痛い、左太もも外側半分、右太もも裏側下半分とか、こんな感じで言うのですが、中々口では言い表すのが難しくて…毎回困惑してしまいます。
だから、こういう身体図があればいいのになぁ~と思いました。

これからもブログを楽しみにしています♪
2014.10.24 10:55

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