一般の方向けの雑誌などでは、坐骨神経痛の原因について様々なことが言われていますが、
私の経験からは、腫瘍と感染性疾患を除外すると、腰椎変性疾患が原因の殆どを占めています。
梨状筋症候群を疑わなければならない患者は希であり、仙腸関節症は皆無です。
腰椎変性疾患とは椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎(変性・分離)すべり症、腰椎症、腰椎側彎症などであり、坐骨神経痛の原因となる腰椎レベルはL4/5とL5/S1です。しかし、例外が存在します。腰椎には奇形(亜型)があり、普通は5個の腰椎が人によって6個であったり、4個であったりするため、腰椎と神経根のレベルが一致しないことがあります。さらに神経根にも亜型があるため、同様に一致しないことがあります。
しかし、大部分の患者さんで、坐骨神経痛はL4/5とL5/S1の椎間レベルで起こると考えてよいでしょう。
その理由は、坐骨神経は一部L4神経根の要素を含みますが、殆どはL5神経根とS1以下の神経根から成り立っています。
坐骨神経痛に関係する神経根は、L5神経根とS1 神経根であり、L5神経根はL4/5とL5/S1、一方S1神経根はL5/S1で障害されるからです。
従って、坐骨神経痛はL5神経根性坐骨神経痛とS1神経根性坐骨神経痛に分けられます。
L5神経根性坐骨神経痛はL4/5の脊柱管外側部とL5/S1の椎間孔と椎間孔外のヘルニアや狭窄病変で起こります。他方、S1神経根性坐骨神経痛はL5/S1の脊柱管外側部のヘルニアや狭窄病変で起こります。
坐骨神経痛の診断でしばしば間違いが起こるのは、L5/S1の椎間孔と椎間孔外の診断が困難だからです。これらの部位の診断法を熟知していないと、坐骨神経痛は原因不明とされたり、誤診されたりすることが起こります。
急性発症の坐骨神経痛や、腰を前に屈めたり伸ばしたりすることで、痛みが増強したり、あるいは軽減したりする坐骨神経痛では、腰椎変性疾患が坐骨神経痛の原因と考えて診断を進めることが重要です。、
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