(7)椎間板ヘルニアによる痛みの経時的変化
椎間板ヘルニアは急に腰痛などの痛みを起こす疾患として知られています。しかし、急にといっても突然と言うほど速やかではありません。腰にぎくっとした違和感を自覚してから、数時間以上経て腰痛や臀部痛などが発現し増強します。これは椎間板が靱帯を破り、そこに炎症が進むことで発現する痛みだからです。すなわちタイムラグがあります。
もし、靱帯のみの炎症であるなら、腰痛のみで、いわゆるぎっくり腰となります。一方、靱帯を破り脱出したヘルニアが神経根にまで影響を及ぼすと神経根嚢炎となり、臀部や鼠径部、下肢へと痛みが広がります。
炎症は、それを持続させる原因となる腰に負荷を加える仕事や運動を行わない限り、発症後1週間を過ぎる頃から軽減するので、これと連動して痛みは軽減します。さらに、ヘルニアの多くはマクロファージと呼ばれる白血球によって吸収され縮小・消失するので、通常、痛みは発症後1ヵ月頃には消失します。しかし、ヘルニアが消失しない場合には、痛みは慢性化します。慢性化とは3ヵ月以上痛みが続く状態です。
激痛でないにせよ、痛みが慢性化する患者では、私は手術を勧めます。なぜなら、痛みをもった生活は腰をかばう姿勢をとるため、腰の側彎変形や別のヘルニアを起こすことがあり、さらに腰椎症性変化を増強し脊柱管や椎間孔の狭窄病変を進めるからです。しかし、なによりも慢性痛を避けたいのは、慢性痛は患者を鬱(うつ)にし、生活の質の低下を招くからです。
次は(8)椎間板ヘルニアによる神経症状の進み方、について説明します。
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