手のしびれの原因が頚椎にあるとdoctorから診断を受け、頚椎の前方固定術(既に説明済み)や椎弓形成術(頚椎の後ろの骨を広げて脊髄の圧迫を取り除く手術)を受けたが、術後も症状が良くならないと訴え、受診される中年女性がいます。症状は、親指、人差し指、中指、薬指がしびれる。小指はしびれない。良く話を聞くと、過去に朝目覚めると手のしびれがあり、手を振っている内にとれ、日中にしびれはなかった。しかし、次第に手のしびれが日中でも起こるようになり、持続するようになった。また、車のハンドルを握っている時や何か物を握っている時にしびれが強くなり、握っていることが出来なくなった。そのうち、物を指でつまむことがしにくくなった。指先の感覚がわからなくなり、ボタンの付け外しがしにくくなった。このような訴えを問診(doctorが病気の診断のため、具体的に患者に質問し答えてもらうこと)で聞き出すと、もう診断は明らかです。中年以後の女性に多い主根管症候群です。確認のため、患者さんの手を取り、手のひら側に手関節を20~30秒しばらく曲げていると、親指や人差し指、中指などにしびれが強くなる。これはファーレン徴候と言って、手根管症候群で誘発される特徴的なサインです。さらに、手関節の内側で真ん中あたりの前腕側をハンマーで軽くたたくと、手のひらに電気が走るようなしびれの感覚が誘発される。これはチネル徴候といって、主根管症候群を含む末梢神経の靱帯などによる強い圧迫がある時に誘発される。これらのサインが陽性と確認されると、主根管症候群の疑いは濃厚になり、確定診断は正中神経の伝導速度の測定で行う。この検査では、正中神経の運動神経と知覚神経の両方の伝導速度を調べ、障害のあることを確認する。主根管症候群は手の腱鞘炎を繰り返えすうちに、正中神経を覆っている靱帯が厚く固くなって、この靱帯が神経を圧迫してしびれを起こす。しびれは正確には親指、人差し指、中指と薬指の親指側半分に起こるのが特徴です。進行すると、親指の付け根にある母指球筋(親指の付け根の膨らんだ筋肉)の萎縮が起こります。そのため、指で物をつまみにくくなるのです。このような症状を持った中年女性がたまたま頚椎にヘルニアや狭窄症などの所見があると、それらが原因と判断されて頚椎の手術が行われてしまうのです。勿論、それらの手術で患者の症状は良くなるはずがありません。主根管症候群ならば、手のひらの手関節付近に15mm位の小さな切開を加え、厚く固くなった靱帯を切開し、正中神経の圧迫をとると、症状は改善します。局所麻酔による10分間の手術です。一般の方々に知っておいていただきたいことは、手のしびれは脳からでも、頚椎からでも、神経が頚椎から出た後-腕神経叢と呼ばれる部位でも、肘でも、今回説明の手関節部でも起こるのです。しびれや痛みを治療するdoctorは脳や脊髄、神経根、末梢神経などの病気を熟知していることが必要なのです。

↑ 腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んで
いただきたいと思っております。
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