脳神経外科病院で腰の手術をしていると聞き、意外と驚く人が多い。それは、脳神経外科が治療するのは頭かせいぜい頚椎までと思っている人が多いからである。日本では、主に整形外科医が腰椎の手術を行ってきた歴史がある。しかし、欧米では、脳神経外科医が腰の手術を行ってきた。それでは、脳神経外科医と整形外科医が行う腰ヘルニアの手術のどこに違いがあるのであろうか。先ず、歴史的に見ると、整形外科医はラブ法と呼ばれる肉眼によるヘルニア摘出術を行い、脳神経外科医は手術顕微鏡を用いたマイクロラブ法と呼ばれる方法でヘルニア摘出を行ってきた。両者を比較すると、肉眼手術のラブ法よりも手術顕微鏡を用いたマイクロラブ法の方が繊細で傷つきやすい神経を安全に扱うことができ、ヘルニア摘出も正確になることは明かである。しかし、近年になり、整形外科医による内視鏡を用いた最小侵襲手術であるMED(microendscopic discetomy)手術が行われるようになり、腰椎ヘルニア手術の新時代が到来した。そして、少し後れて、脳神経外科医は私の行っている手術顕微鏡を用いたMD(microscopic discectomy)手術に着手した。腰ヘルニア手術の歴史的な大まかな流れは以上のようだが、脳神経外科と整形外科の根本的な違いは、脳神経外科は脳や脊髄、末梢神経を扱う専門科であり、整形外科は骨や軟骨、関節の専門科である。それでは、腰ヘルニアという病気を見てみると、坐骨神経痛や下肢のしびれ、麻痺などは腰の骨の中を通る神経が出す症状であり、その神経の症状を出す原因が腰の骨と骨の間にある椎間板と呼ばれる軟骨なのである。このように脳神経外科医は神経を圧迫している椎間板ヘルニアを摘出することによって、患者の下肢の痛みやしびれを治すのである。勿論、整形外科医による腰ヘルニア手術の目的も同じである。ただし、脊髄や神経を専門に扱う脳神経外科医は患者の下肢の痛みやしびれがどの神経の障害によるのか、腰椎のどこのヘルニアによるのかの診断にこだわりが強い。私のピンポイントによる最小侵襲手術の原点は神経の圧迫点をとことん突き詰めることへのこだわりから誕生したのである。全国的に見て、脳神経外科医が腰ヘルニア手術を行っている専門施設は整形外科と比べて圧倒的に少ないのが現状であることを最後に付け加えたい。
↑ 腰痛・坐骨神経痛で悩むより多くの方に読んで
いただきたいと思っております。
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