腰椎の最小侵襲手術が次第に普及し始めているが、従来の手術法を行う脊椎外科医からは最小侵襲手術は手術時間が長くなり、麻酔時間も長くなることから手術全体として見るなら低侵襲とは言えないという指摘がある。確かに、切開がいくら小さいからと言っても、通常手術の何倍も時間がかかるなら、低侵襲とは言えない。最小侵襲手術は極めて狭い術野で手術顕微鏡や内視鏡を用いた手術のため、高度の技術が必要である。この技術を習得するのに時間がかかり、手術に慣れるまでの間はどうしても時間がかかるのは致し方ない。しかし、手術に慣れ、さらに熟練すると手術に要する時間は短縮されていく。どこまで短縮されるかは、術者によって異なる。私の場合だと、1カ所(1椎間)の腰ヘルニアだと超外側型ヘルニアを含めて平均45分、腰部脊柱管狭窄症だと1時間、mini-PLIFやmini-TLIFなどの腰椎固定術では約3時間である。このように腰椎の最小侵襲手術は手術操作に無駄がない手術であるからこそ、慣れた術者では通常の手術よりも短い時間で行う事ができるのである。手術時間が短いことは、手術創が外気に触れる時間が短いことから感染症を合併しにくくなる。私の2000例を超える腰椎の最小侵襲手術で感染症の合併は皆無である。
さらに、腰の手術は腹ばいで行われ、手術時間が長いと静脈に血栓ができ、肺梗塞など致命的な合併症が起こることもあるが、私は経験していない。最小侵襲手術は単に手術時間が短いだけでなく、出血量も極端に少なく済む。例えば、腰ヘルニアや狭窄症では10ml位、腰椎固定術でも100ml前後である。当然のことながら、輸血は不要である。さらに術後の傷の痛みも少なく、鎮痛剤の使用も極わめて少ない。腰ヘルニアや狭窄症では、術後80%位が鎮痛剤は不要であり、腰椎固定術でも60%が不要である。腰椎固定術で術後使われることの多い麻薬はまったく不要である。このように最小侵襲手術は患者と外科医の双方にとって極めて魅力に富む手術ではあるが、術者の技術力が物を言う手術である。

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