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胸腰椎圧迫骨折に腰部脊柱管狭窄症を持った80代女性の執念

.18 2011 腰部脊柱管狭窄症 comment(0) trackback(0)
昨年の夏、腰痛と両下肢のしびれ、間欠性跛行で受診された80代女性。脊柱管狭窄はあるものの強い骨粗そう症のため胸椎11番から腰椎5番まで全部の骨に圧迫骨折が見られた。
高齢者の腰椎手術に積極的な私だが、さすがに躊躇した。狭窄症の手術で歩行状態が仮に改善しても、腰痛が治る見込みは低いと判断したからである。患者を紹介していただいたかかりつけ医に丁重に保存治療をお願いした。約1年後、再びかかりつけ医の紹介状を持参して受診された。腰痛は軽減したが、両下肢のしびれが強くなり、立位保持も歩行もますます困難になってきたとの悲痛な訴えであった。MRI検査所見は前回と概ね同じ。狭窄症の手術で立っていること歩くことはしやすくなるかも知れないが、下肢のしびれがどこまで良くなるか保証はできないことを告げ、家族と相談していただいた。もう一度、歩きたいとの患者の希望に押されて、家族は同意し、手術は決まった。腰椎4番と5番との間の高度の狭窄症である。超高齢者であることから、手術時間を短く、出血量を少なく、術中の補液を少なく、術後翌日から離床開始を目標に手術に臨んだ。麻酔医も超ベテランであり、安心して手術ができる。私のMD法により15mmの切開でチューブレトレクターと手術顕微鏡を用いて、右側から両側の腰椎の5番の神経根と馬尾神経の除圧を行った。手術は右側で少し骨を削り、神経を強く圧迫する肥厚した黄色靭帯を両側できれいに切除するもので、予定通りに終了した。手術所要時間は50分、出血量は15mlであった。翌日から離床開始し、リハビリも行った。術後1ヵ月、退院時に私の前に立つ患者の腰は伸びており、安全のため杖を持っているが患者が切実に希望した歩ける患者の姿がそこにあった。下肢のしびれは大腿部はとれ、膝から先に残っていた。時間をかければ、まだしびれは改善するであろう。表情は歩けるようになった患者が等しく示す何とも言えない幸福な笑顔であった。私は、貴女の執念の勝利だねと声をかけた。いつでもこのような良い結果に恵まれるわけではないが、患者本人も家族もそしてdoctorも最初から良くなること、良くすることを諦めていたなら救われないままに残りの人生を終えていたことであろう。


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